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2024.06.21
独立したいと思ったら知っておこう! 個人事業の始め方

【連載第4回】 個人事業が狙うべき“すき間”とは?

 前回(連載第3回)は、個人事業開業の心がまえについてお話しました。今回は、個人事業のねらい目について解説します。リサーチすべきことは? 事業の強みを知るためには? そのノウハウを知っておきましょう。

すき間こそ、個人事業が狙うべき

 世の中にまったく新しい商品や事業というものは、まずありません。もし、画期的なアイデアを思いついたとしても、似たようなものが必ずどこかには存在しています。つまり、たくさんのライバルがいるなかで、個人事業を始めるわけです。

 しかし、似たような商品や事業であっても、差別化ができれば個人事業として成り立ちます。たとえ、自分よりすぐれている商品があったとしても、すべてのお客様が満足する商品は存在しません。あるお客様には、あなたが提供する商品のほうがほしいということは必ずあるのです。

 大手企業と違い、個人事業は狭いニーズ、つまり“ すき間 ” を狙うべきだといわれています。大手企業の商品は、かかわる人が多いので、大きな売上を得るためにたくさんの人に買ってもらわなければなりませんが、個人事業はそこまで大きな売上は必要ありません。ある特定の人が求めるものを提供すればいいのです。これが“ すき間 ” です。個人事業はすき間商品を、特定の人に提供すれば成り立つのです。チラシのデザイナーならば、自分の得意分野、たとえば自転車だけのように、ターゲッ トを絞ることで、ほかのデザイナー(ライバル)と差別化 ができます。

 また、同じ商品でも提供する地域が異なるだけでも事業は成立します。チェーン店は、どこでも同じ商品を提供していますが、それぞれの地域でニーズがあるため、各地に出店しています。つまり“ すき間の地域” に商品を提供していると考えることができるのです。

ライバルをリサーチする

 “ すき間” を探し出すにはリサーチしかありません。インターネットで検索すれば、いろいろな事業を探し出せます。先ほどのチラシのデザイナーならば、チラシという大きなくくりだけでなく、自転車のチラシについて調べます。チラシの中でも自分の得意分野をつくることができれば、クライアントから求められます。

 カフェであれば、自分のアイデアに近い全国のカフェはもちろんのこと、お店を出したいと考えている地域の喫茶店も調べます。そのときに大切なのは、そのお店が繁盛している理由を見きわめることです。そして、参考にすべき部分を取り入れたり、逆にそのお店にない特徴を出すことで新し いお客を開拓する方法などを考えるのです。

 また、その分野の成長性を調べることも大切です。現在はニーズがあったとしても、将来的にニーズが減っていく場合は、注意が必要だからです。それでも “ すき間 ” を狙う個人事業の場合は、市場のニーズが減って大手が撤退したあとも、事業の成長性につながる可能性はあります。

 

 このようにリサーチしていくことで、あなたのアイデアにみがきがか かっていきます。あとは、そのアイデアを実現していくことができれば、事業は十分成立します。

相手に喜ばれる
商品やサービスを提供する
まわりの人の意見や感想に耳を傾ける

 個人事業を始める場合、提供する商品が相手に喜んでもらえるかどうかを考えることが大事です。

 お客様やクライアントはその商品に価値があると感じてくれるからこそ、 それに見合った対価を支払います。もしその商品の評価が相手の期待を下回ってしまったら、相手は二度と来店しませんし、自分のもとに発注や依頼をかけてくることはありません。

 これは業種にかかわらず、商売の大原則です。

 事業を始める人は、商品に自信をもち、うまくいくと確信しているもの です。もちろんその自信がなければ、事業の成功はあり得ませんが、じつはそこに落とし穴が隠れていることがあります。

 

 開業の準備を始める前に今一度、自分が提供する商品を客観的に見てください。そしてできれば、信頼のできる友人などに、感想を聞いてみてください。相手が事業の成功を応援してくれていれば、本当のことを言ってくれるはずです。たとえば飲食店の場合、味はよいけれども料理の彩りや盛りつけがよくない、メニューのバリエーションが少なすぎる、月に一度ならよいけど毎日食べるとしたら値段が高い──こうした率直な感想 は、アンケートのような市場調査では得られない、本物の声です。その声に真摯に耳を傾け、改善のヒントにすることができたなら、事業成功の確率はそれだけ高くなります。

ライバルとくらべたときの自分の強みを知る

 商品の価値を客観的に見定めるには、同業他社や地域の競合店の調査も大切です。開業後、お客様やクライアントが自分に価値を見いだしてくれるのは、他と比べたときに秀でている点があるからです。

 それは価格や品ぞろえかもしれないし、仕上がりの質や味かもしれないし、仕事のスピードかもしれません。店舗の場合は内装や雰囲気、接客、立地や駐車場の有無、営業日や営業時間などが評価されることもあるでしょう。

 もし開業の前に、こうした自分の強みを知ることができれば、事業計画や販売戦略を練るときなど、あらゆる点で優位に立つことができます。

 開業の前には、できるだけ同業他社や地域の人気店をリサーチし、自分が提供する製品やサービスと比較して、どうやったら彼らに太刀打ちできるのか、自分の強みを見極めておくことが大事になります。

 ここまで、独立を考えたときに知っておきたい個人事業についての基礎知識を解説してきました。まずはこれらを理解したうえで、次のステップに進みましょう。2023年10月から開始となったインボイス制度のしくみも含め、具体的な開業の方法については、本書に詳しく書いてありますので、ぜひご覧ください。

出典 『図解わかる 個人事業の始め方 2023-2024年版』

本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

 

イメージ写真 Shutterstock

図解わかる 個人事業の始め方 2023-2024年版
宇田川敏正 監修
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宇田川敏正(ウタガワトシマサ)
宇田川税理士事務所所長(東京都港区新橋)。税理士、AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)、登録政治資金監査人。大学卒業後、大手ゼネコン(総合建設業)に入社し、建築・土木の各工事現場の工事事務全般(経理・労務等)を担当。平成13年、税理士として独立開業。クライアントは、個人事業者から上場企業まで多岐に渡り、誰にでもわかりやすく、納得のいく税務・会計指導を行っている。平成24年11月、中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関に認定。

監修書に『経理の教科書1年生』『簿記の教科書1年生』『個人事業の教科書1年生』(すべて新星出版社)がある。
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