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2023.04.26

中小企業の事務職ってどんな仕事?【総務・労務・経理】について知っておこう!

 企業を陰から支える事務の仕事。その業務内容は多岐にわたり、会社のお金にまつわるものから、社員や仕事場の管理まで広い範囲にわたります。とくに、小さな会社であればこのすべてを数人でこなすことになるので、はじめて取り組む方は何から手をつければいいか見当がつかないかもしれません。

 

 そこで今回は、『2022-2023年版 図解わかる 総務・労務・経理から、総務部や経理に新しく配属された方や、事務職に就いてみたい方にむけて、事務の基本である、「総務」「労務」「経理」3つの仕事でまず知っておきたい点について解説していきます。

総務・労務・経理は会社の土台を支える仕事

 会社の経営資源は、ひと口にヒト・モノ・カネといわれます。簡単に言うと、ヒトを活かすのが「労務」の仕事で、モノを活かすのが「総務」の仕事、カネを活かすのが「経理」の仕事です。

 総務の仕事として、働きやすい職場を提供しなければ社員は十分な力が発揮できませんし、労務の仕事として、給与計算や社会保険事務を行わなかったら、社員は安心して働くことができませんよね。また、経理の仕事として代金の請求や支払いがされなかったら、会社も成り立ちません。このように、総務・労務・経理の仕事は、会社を土台のところで支えている仕事なのです。

 それでは、個別にどのような業務があるのか見ていきましょう。

総務の仕事はどんなもの?

総務の仕事は多種多様

 総務の仕事は多岐にわたりますが、とくに庶務関連の仕事は多彩です。庶務というのは、営業や製造といった特別な区分ができない、さまざまな仕事のことで、大きな会社では庶務課などの部署を設けていることもあります。

 維持管理は総務の代表的な仕事のひとつです。ボールペン1本から会社の建物までさまざまなモノの管理だけでなく、法律で保存や管理方法が細かく定められているもの(重要な文書やマイナンバーなど)も、総務の仕事として管理しています。

 また、大きな会社で総務の分掌規程(※会社の部署や担当者の仕事の範囲や権限、責任などを明文化し、それぞれの仕事の分担と役割を明らかにする規程)
などがつくられていると、総務の職務としてたいてい「他の部署に属せざる事項」といった意味の文言が書かれています。そのため、総務の仕事は会社にとって必要不可欠の「何でも屋」といえるのです。

総務の主な仕事

🔹社員が働く環境を整備する

■会社設備の導入・管理

■事務用品やOA機器の購入・管理

■携帯電話など社用機器の導入・管理

■文書の整理・ファイリングなど

 

🔹社外に対して会社の窓口になる

■来客や電話の応対

■年賀状や暑中見舞いの制作・発送

■お中元やお歳暮の贈答

■社外の慶弔事項への対応 

■案内状や礼状などの社外文書の作成・発送

など

 

🔹その他、他の担当者ができない・やらない仕事

■社員旅行など社内イベントの企画・実施

■広報担当者がいない場合の取材対応

■法務の担当者がいない場合の契約書の作成、および経営者のサポート など

労務の仕事はどんなもの?

入社前から退職後まで社員の手続きに関わる

 労務の仕事はヒトに関するものなので、大きな会社では「人事」という部署名にしていることもあります。労務は採用から退職まで、社員のすべての手続きに関わります。入社以前、求人の段階から、退職後の雇用保険(失業手当など)まで関わるのが労務の仕事です。また、社員の在職中は、その勤怠管理が労務の仕事になります。勤怠管理とは、タイムカードなどで社員の始業・終業の時間を記録し、時間外労働や休日出勤、有給休暇の取得状況などを把握することです。

給与計算と社会保険事務が大きな比重を占める

 勤怠管理で得られた時間外労働のデータなどから、社員の給与計算を行います。給与計算を経理の仕事とする会社もありますが、時間外労働の割増賃金や、社会保険料の計算に深く関係することから、基本的には労務の仕事です。

 

 社会保険に関する事務も、労務の仕事で大きな比重を占めます。健康保険や厚生年金保険の入社時の加入手続きから始まり、毎年の定時決定、給与額が変わった時の随時改定、さらに労働保険の年度更新などです。また、会社の就業規則も労務の仕事の範囲とされます。

労務の主な仕事

□社員の採用から退職までの手続きをする

■求人・採用試験面接などの採用業務

■入社にともなうさまざまな手続き

■社員の住所や扶養家族などの変更にともなうさまざまな手続き など

 

□社員の働き方のルールをつくって守る

■就業規則の見直し・社員への周知

■時間外労働や休日労働のルールの周知・順守

■三六協定の締結

■有給休暇・育児休業・介護休業の周知徹底 など

 

□給与計算や社会保険事務を行う
■社員の勤怠管理

■社員の所得税

■住民税の計算

■年末調整

■社会保険料の計算

■労働保険の年度更新 など

経理の仕事はどんなもの?

経理の1日はお金で始まり、お金で終わる

 経理の仕事というと、お金の計算と帳簿付けばかりしているイメージがありませんか?それは、経理の仕事のサイクルのせいかもしれません。経理の1日は、手提げ金庫の小口現金を金庫から取り出すことから始まり、終業前に残高を照合して金庫にしまうことで終わります。社員が支払った経費を、その都度精算している会社では、その間に現金精算も行います。1日のルーティンがはっきりしている業務ともいえます。

代金の請求と支払いは毎月のルーティン

 しかし、お金の管理だけが経理の仕事ではありません。会社が事業を進めていくうえで、売上代金の請求と仕入れ代金の支払いは基本中の基本です。売上代金の入金がなければ会社の事業はたち行かなくなってしまいますし、仕入れ代金を支払わなければ次の仕入れは断られてしまいますよね。この大切な仕事は、締め日に合わせて行うので、経理の毎月のルーティンになります。

決算は経理の最重要の仕事

 そして、年間のルーティンが決算税金の申告・納付です。決算は会社の事業年度(会計期間)終了後、2か月に及ぶ大仕事で、作業量も膨大なものになります。経理の担当者にとって最重要の仕事です。

経理の主な仕事

□会社の現金や預金の出納をする
■小口現金や預金の管理

■経費の精算

■固定資産の管理

■売掛金・買掛金の管理

■売上代金の請求

■仕入れ代金の支払い

■請求書・領収書の発行 など

 

□日々の記帳から決算まで経理処理をする
■日々の取引の仕訳

■会計ソフトへの入力

■月次試算表の作成

■月次試算表の作成

■精算表の作成

■決算書の作成 など

 

□会社が納める税金などを申告し納付する

■法人税・法人事業税・消費税の申告・納付

■固定資産税・自動車税などの納付 など

事務は縁の下の力持ち

 総務・労務・経理の担当者は、営業の担当者のように直接、売上げを上げたり、製造の担当者のように直接、製品をつくったりはしません。経営者のように、業務上の意思決定をして指示を出したりもしません。いわば、製造や営業、経営者などの後方支援が仕事です。

 

 しかし、総務・労務・経理の事務を担当していると、会社と事業に関するさまざまな情報が集まってきます。

 情報は、第4の経営資源といわれます。総務・労務・経理の担当者は、会社の経営資源=土台を支えているのです。

 

 実際に事務に配属された際はぜひ、『2022-2023年版 図解わかる 総務・労務・経理を手元に置いていただけると、心強い味方になりますよ。

出典:『「2022-2023年度版 図解わかる 総務・労務・経理』(本書は、とくに表記がない限り、2022年7月時点での情報を掲載しています)

 

※本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

写真画像 Shutterstock

図解わかる 小さな会社の総務・労務・経理 2022-2023年版
関根俊輔 監修(プロフィールは下記参照)
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関根俊輔(セキネシュンスケ)
税理士。
中央大学法学部法律学科卒。平成19年税理士登録、税理士法人ゼニックス・コンサルティング社員税理士。近年の高齢化に伴い「亡くなる前」の贈与や相続税の事前対策から、「亡くなった後」の遺産分割、二次相続に至るまで、財産の収益化・コンパクト化を重視した、遺族の暮らしの総合コンサルティングを提供している。
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