前回(連載第2回)は、個人事業のさまざまな形態について解説してきました。今回は、実際に事業を行う上で大切な事柄について解説します。
個人事業主だけでなく、事業を営む者にとって、最も重要な仕事は、質の高い商品(製品やサービス)を用意して、売ることです。
質の高い商品とは、自分だけがよいと思ったものではなく、お客様にとって価値のあるものです。商品を作ったり、仕入れたりして、質の高い商品をお客様に提供できるように準備することは大切な仕事です。
質の高い商品が用意できたら、次にそれを売ります。
「売る」ためには、まず商品のよさを伝えなければなりません。店舗であれば、まずはお店に足を運んでもらうことです。その後、並べた商品からお客様の好みに合った商品を買ってもらいます。そのとき、さらにここにお店の雰囲気や従業員の接客といった付加価値が加わって、代金に見合ったクオリティかどうかが評価されます。フリーランスであれば、自分の実力や実績などをアピールして発注してもらうことです。
購入された商品が、お客様から高い評価を受けることができれば、リピーターとなって再び購入してもらえます。飲食店の繰り返しの来店はその代表でしょう。
これらが事業で一番大切な「質の高い商品を用意して売る」ということです。
事業には、上記以外にもいろいろな仕事があります。大きな組織では、それぞれの仕事はいくつかのチームで分担されますが、個人事業主は、事業にかかわるあらゆる仕事を一人でこなさなければなりません。会社であれば、経営者、製造部、購買部、企画開発部、営業部、マーケティング部、広報部、経理部、人事部、総務部などが担当する業務が、個人事業では、すべて自分の仕事になるのです。
事業の方向づけや年度計画といった経営者の仕事をはじめ、商品企画、仕入、営業、広告宣伝、サービス提供といった直接的な仕事はもちろんのこと、備品の調達、宅配便の発送、壊れたパソコンの修理、入金の確認のような間接的な仕事まで、個人事業主はすべて自分で行わなければなりません。アルバイトでも雇わない限り、誰かがやってくれることはないのです。個人事業を始めるならば、このことは覚悟しておかなければなりません。
個人事業を始めるときに、最初に行うべきことは、個人事業を始めたいと考えている自分の動機を掘り下げていくことです。
好きなことを仕事にしたいのか、好きな時間や場所で働きたいのか、自分のアイデアが通用するかを試してみたいのか、会社のしがらみや人間関係のなかで働くのがつらくなったのか、収入を増やしたいのか、家族や趣味の時間を増やしたいのか……など、いろいろな側面から掘り下げていくことが大事です。
もちろん、“動機が一つだけ”ということはありません。いろいろな理由が絡み合っているはずです。たとえば、「収入を増やしたいが、長時間、働きたくない」という点がぶつかったとしましょう。その場合、最低限どのくらいの収入にしたいのか、どのくらいの時間なら仕事に費やしてもいいのかなどを考え、バランスをとっていくのです。
また、掘り下げていく途中で、個人事業での開業ではなく、部署異動や転職という選択肢も出てくるかもしれないし、別の事業アイデアが出てくるかもしれません。いずれにしても、一度しっかりと自分と向き合った経験があれば、個人事業を始めてさまざまな壁に当たったときに、乗り越えることができるはずです。
個人事業の始め方は、大別すると「これまでの経験を活かす事業」「趣味の分野や興味のある事業」「まったく別の新しい事業」の3つに分けられるでしょう。
「これまでの経験を活かす事業」ならば、ある程度のスキルやノウハウがあり、得意な分野なので、開業のハードルは低くなります。
「趣味の分野や興味のある事業」の場合は、自分が関心をもっていることなので、調べていくことが楽しいため、どんどん知識がたまっていくことでしょう。
「まったく別の新しい事業」の場合は、挑戦です。チャレンジ精神が旺盛な人に向いています。なお、すでに事業のしくみができあがっているフランチャイズを活用するケースもここに含まれるでしょう。
次回は、「個人事業が狙うべき“すき間”とは?」について解説します。個人事業についてもっと知りたい方は👉こちら
出典 『図解わかる 個人事業の始め方 2023-2024年版』
本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
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