感染症はだれでもかかってしまう可能性があります。そのときの体の状態にもよるからです。しかし、感染源をなくすこと、感染経路を作らないこと、体の抵抗力を高めることで感染症にかかりにくくすることはできます。感染症を予防する方法をそれぞれ見てみましょう。
感染症は「①感染源(病原体)」「②感染経路」「③感受性」の3つの条件がそろうと感染します。この条件のうち、ひとつでも取りのぞくことができれば、感染を予防することができるのです。とくに、感染経路を作らないようにすることは、感染が広がっていくのをふせぐことにもつながります。感染症にかからないようにするために、自分ができることを知って、対策しましょう。
感染源をなくすには、消毒や除菌で、病原体をなくすことが大切です。感染した人、動物、虫や食べ物などが感染症の感染源です。温度や湿度を調整して、ウイルスが活動しにくい環境を作るなど、感染源となる病原体をふやさない、病原体に近づかないようにしましょう。感染源にふれないことが、一番の予防法です。
感染経路を作らないためには、病原体を持ちこまない、持ち出さない、広げないことが大切です。手についた病原体を石けんでしっかりあらい流して、体の中に入れないようにしましょう。また、うがいやマスクの着用、空気の入れ替えをこまめにする、タオルなどのものを一緒に使わない、人ごみに行かないようにすることなどでも感染経路を作らないようにすることができます。
感染症をの予防するには、自分の体を守ることだけでなく、自分が感染を広げないようにすることも大切です。まわりに抵抗力の弱い人がいる場合、とくに感染症をうつさないように気をつける必要があります。自分の抵抗力が高ければ、まわりの人に感染症をうつす危険を低くすることもできます。規則正しい生活を送ったり、予防接種をしたりして、病気にかかりにくい体を作ることも、感染症を広げないためにできることのひとつです。
人がせきやくしゃみをしたときに、しぶきがとどく範囲は、半径約2mといわれています。マスクをしていても、正しく装着できていないと、意味がありません。鼻と口を完全におおい、なるべくすき間をあけないように工夫しましょう。人と会話するときや、食事をするときなどは、距離が2mよりも近くなるので、注意しましょう。
①自分の顔のサイズにあったマスクをえらびましょう。
②鼻の上からあごまでしっかりとおおいます。
③鼻の部分にワイヤーが入っているものは、鼻にそって折り曲げましょう。
病原体が体に入ってしまっても、全員に症状が出るわけではありません。栄養や休養を十分にとり、体力や抵抗力を高めることで、感染症を予防できます。赤ちゃんやお年より、もともと病気を持っている人は、抵抗力が弱く、感染症にかかる可能性が高いです。また、ワクチンが開発されている感染症の場合は、予防接種を受けることで抵抗力を高めることもできます。
抵抗力を高める方法はいろいろありますが、大人と子どもで抵抗力を高める方法はちがいます。ここでは、児童生徒のみなさんが抵抗力を高める方法を紹介します。
①ぐっすりねて、体を休める⇒1日9時間程度のすい眠
②運動をする⇒1日60分以上
③栄養バランスのよい食事をとる⇒野菜もしっかりとる
④よく笑う⇒お友達と楽しく話す
⑤体を温める⇒40℃くらいのお風呂に10分以上つかる
⑥リラックスした時間をつくる⇒本を読むなど好きなことをする
自分でできることを実践して、抵抗力を高めていきましょう。
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出典 『子ども衛生学』
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
そのこたえは、みんな「衛生」に関係があります。
「衛生」とは、いのちや生活をまもるという意味です。わたしたちのまわりには、健康に悪影響を及ぼすいろいろなリスクがあります。インフルエンザなどの感染症はもちろん、身近な水、空気、食べ物の中にも、健康に悪い影響を及ぼすかもしれない要因があります。
自分やまわりの人をまもるために、それらについて知り、リスクをへらしていくことが大切なのです。
「衛生学」はとても幅広いですが、この本では、感染症予防の考え方、食べ物の安全など、子どもたちにとって身近な話題を扱っています。さらに、災害が起こったときに使える衛生学も紹介しています。監修は、公衆衛生看護学の第一人者、千葉大学大学院看護学研究科教授の宮﨑美砂子先生。子どもはもちろん、大人にも役立つ、一生使える衛生学の基本が身につく一冊です。
主な著書には、『最新 公衆衛生看護学(全3巻)』(編著、日本看護協会出版会)、『効果的な面接技術と事業展開から学ぶ保健指導』(編著、中央法規)、『公衆衛生看護学概論』(共著、メヂカルフレンド社)、『災害看護』(共著、南江堂)などがある。