医師が語る「からだに良いもの」それってホント? Q コラーゲンでお肌プルプル! これってほんと?
東京大学医学部付属病院 地域医療連携部 助教、循環器内科 医師
グルコサミン、カルシウム、βカロテン、EPA…、からだに必要な「成分」はさまざま。
ですが、健康によいから、とその成分だけを摂っても、それで健康になったり、病気が予防できたりするわけではありません。ここでは、知らないと損をする「正しい知識」や、さまざまな「食生活に関する臨床研究の結果から証明されてきた「本当にからだに良いもの」の一部を紹介します。
Q コラーゲンでお肌プルプル! これってほんと?
「コラーゲン」というと、女性は“お肌プルプル”をイメージするひとが多いようです。ここで問題です。プルプルですべすべ肌の赤ちゃんと、ゴワゴワの表面が特徴的なゾウさん。コラーゲンが多いのはどちらのほうだと思いますか?
答えは、赤ちゃん!ではなく、ゾウさんです。
コラーゲンはタンパク質の一種。皮膚、骨、軟骨、血管などに多く分布しています。ヒトでは全タンパク質の30%を占め、そのうち40%が皮膚に存在しているといわれています。
皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織の3層で構成されています。その中でも真皮にはコラーゲン繊維が密に分布していて、皮膚に強靭さや柔軟性を与えているのです。
牛革のような皮革製品は、このコラーゲン繊維の部分に防腐処理や柔軟加工を施したもの。カバンや革靴などになりますが、あまり美味しそうじゃないですね。
コラーゲンの分子は、ポリペプチドというアミノ酸の“鎖”3本が、らせんのように組み合わさった構造をしています。そして、このコラーゲン、靴の例でもおわかりのように、ヒトは胃や腸で、ほとんど消化できません。
では、私たちが美味しく食べている牛すじや鶏の軟骨、手羽先、豚足などのプルプルは何かというと、調理の熱によってコラーゲンが変性した「ゼラチン」なんです。ご家庭でもお料理のために箱入りのゼラチンがおいてあるかもしれません。
「コラーゲンを補充しなきゃ」と思われるなら、このゼラチンを摂ればよいことになります。「コラーゲン配合」と表記されている化粧品や補助食品があるでしょう? 原料として用いられているのはゼラチンで、牛や豚の皮膚、骨、魚などからつくられているんです。ちなみにゼラチンは胃や腸でさらに分解されて「アミノ酸」になります。タンパク質を構成するアミノ酸です。代表的なアミノ酸は、「味の素」の主成分であるグルタミン酸です。
では、ゼラチンやアミノ酸をたくさん食べれば、コラーゲンができて、お肌に集まってくれるのでしょうか? 残念ながら、その可能性はほぼありません。
アミノ酸はヒトのからだのあらゆる組織をつくる材料になっていて、都合よく優先的にコラーゲンになっていくわけではないのです。
でも、安心してください。もし万が一、コラーゲンがどんどんつくられてしまうようなら、あなたの肌は先ほどのゾウさんみたいになってしまうのです。
そういったことが起こらないことからも、「コラーゲン入り」でお肌がプルプルになることはあり得ないことがわかります。
A:コラーゲンでお肌プルプルは、うそ。
心臓カテーテルをはじめとする循環器内科の専門診療のほか、外来診療などで生活習慣病の予防や改善に携わる。また、大学病院では稀な地域医療連携部の専任医師として地域医療機関や介護・福祉施設との連携を推進している。軽妙な語り口が人気で、全国から講演の依頼多数。