2022.02.22

イチジクの甘さの決め手は「ハチ」にあった!? 植物たちの「生き残り大作戦」をのぞいてみよう!【植物たちの生き残り大作戦】

 「植物」ときくと、どんな姿をイメージしますか?木や草花だけでなく、スーパーで売っている大根やキャベツも、花屋でみる生花やサボテンも、みんな植物です。公園や道ばた、近くの山、遠くはなれた外国の砂漠(さばく)やジャングル……。地球上には、さまざまなすがたかたちの植物たちが暮らしています。

 

 そんな植物たちは、自分が生きている場所から動きません。たいていは、地面に根をはっているので動けないのです。わたしたち動物は、「動いて」食べものを手に入れ、エネルギーを得ていますが、植物たちは「動かず」に、「光をエネルギーにかえて(光合成)」生きるという作戦を選びました。それはなんと今から32億年も前のことです。そこから長い長い時間をかけて、植物たちはそれぞれの進化を果たしました。

 

 今回は、大好評の『おもしろ図鑑 植物たちの生き残り大作戦』から、植物の進化の歴史と、進化の歴史の中で植物が生き残るために身につけた、ユニークな能力をご紹介します!

植物ってどこから生まれたの?

 32億年前、はじめて光合成をしてエネルギーと酸素をつくった生物は、小さな小さな藍藻(らんそう=シアノバクテリア)でした。そして20億年前には最初の植物が誕生します。植物たちは、地球の環境変化に合わせて、さまざまな形で進化していきました。まんがでその進化の道すじを見ていきましょう。

植物たちの生き残り大作戦

 このように、植物たちは生き残るためにいろいろな進化をしてきました。まんがにあったように、動物や虫たちと仲よくして利用したり、逆に遠ざけたり、食べてしまったり…。ほかの生物を意識した進化をとげた植物もたくさんいます。成功して長く生き残っている種類もあれば、ちょっと失敗してほろんでしまった種類も…。

 

 ここからは、わたしたちがふだん食べている植物の「実」に注目して、植物たちのユニークな進化についてご紹介します。ふだんよく食べるあの食べものにこんな秘密があったの!?とおどろくと同時に、植物たちの生き残るための作戦のおもしろさがわかるはず。それでは見ていきましょう。

みんな大好きコーラの味は、植物からできていた!?

 あの世界的に有名な炭酸飲料、その味のレシピは、会社の極秘資料として金庫に入っているそうです。その商品名の「コカコーラ」は、「コカ」と「コーラ」という、2つの植物の名前からつけられています。

 

 コカは、南アメリカ原産の背の低い木。コカの葉からはコカインという麻薬が作られ、今では世界中で麻薬植物として取りしまられています。コカコーラが誕生した120年前には、コカの葉の使用を禁止する法律はなかったのですが、麻薬として広がったので、コカの葉の風味を生かしつつコカイン成分を抜くことに成功したのだとか。

 

 コーラは、西アフリカの熱帯雨林に自生するアオイ科の植物。実はコーラナッツとよばれ、味はとても渋いのですが、コーヒーやお茶と同じ、カフェインがふくまれているので、かじると気分がよくなり、空腹も忘れるんです。

 

 世界中で愛されるコカコーラの味は、コカとコーラというちょっと変わった植物の組み合わせが関係していました。このように、進化の結果身につけた成分が人間に利用されることもあるのですね。

おいしいイチジクの秘密は、小さなハチにある!?

 つぎは虫のちからを借りる植物の例をご紹介しましょう。

 

 わたしたちが良く食べるイチジクは漢字で「無花果」、花のない実ということです。むかしの人は、花が咲かないのに実ができると考えたんですね。

 

 でも、実を割ってよく見ると、果実のように見える部分は、花のかたまり。甘くておいしい果肉は花で、「小果(しょうか)」と「花托(かたく)」という部分なんです。

 

 イチジクには、雄(おす)の木と雌(めす)の木があって、その花粉を運んで受粉を助けるのは、「イチジクコバチ」という2mmほどの小さなハチ。小さな穴からイチジクの中に入って、受粉を助け、自身も産卵をします。

 

 「もしかしてイチジクコバチ入りの実を食べてたの!?」と心配する人もいるかもしれません。しかし、いま日本で栽培されているのは、ハチが花粉を運ばなくても実がなるように改良された品種。だから雌の木だけで実が収穫できるんです。

 

 ざんねんなおしらせ。日本のイチジクコバチを必要としない品種よりも、むかしながらのイチジクコバチが入ってしまう品種の方が、ずっと甘くておいしかったんだって!ちょっと食べてみたかったかも。

「ゴーヤー」は甘くなったころが食べごろです!?

 ゴーヤーは、沖縄の野菜ですが、いまでは全国で食べられるようになりました。でも、小学生のきらいな野菜ベスト10入り。これまではピーマンと1位の座を争ってきましたが、ここのところはずっと第1位!

 

 ところが、大人になると、なぜか苦いビールやコーヒーがおいしく感じるように、ゴーヤーもおいしく感じるようになるらしいのです。大人は奥が深いんですね。そんな苦いゴーヤーですが、沖縄の厳しい夏の暑さにはピッタリの食材。その苦みで気分がシャキッとするんですよ。

 

 青いときはとても苦いゴーヤーの実も、熟してくると苦みが消えて甘くなることは知っていますか?。赤くなったゴーヤーの種のまわりは果物のような甘みがあります。

 

 

 そして、黄色く熟した実は爆発!赤い種をはじきます。すると鳥や小動物がこの種を食べて、遠くまで運んでくれるというわけです。ゴーヤーの実にしたら、苦い時期は「まだ食べちゃダメ!」という味で、甘くなって種が熟したときが食べごろというメッセージなんですね。

植物たちの「生き残り大作戦」をもっとのぞいてみよう!

 今回ご紹介した植物は、ほんの一部。ユニークな進化をとげた植物たちが、地球上には数えきれないほどくらしています。

 

 『おもしろ図鑑 植物たちの生き残り大作戦』では、今回とり上げた「実」に特徴のある植物以外にも、「葉」や「花」、「におい」などさまざまな進化のかたちを紹介しています。植物たちのことをもっと知ってみたい!という方はぜひ本書を読んでみてください!

出典『おもしろ図鑑 植物たちの生き残り大作戦』 

イラスト 竹内通雅、浅田弥彦(3Dキャラクター) 

写真 石倉ヒロユキ、小野寺瑞穂、佐野馨、まさだともこ、Fotolia

 本書は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/大森)

おもしろ図鑑 植物たちの生き残り大作戦
藤井義晴 著(プロフィールは下記参照)
植物は、動けないのが個性。でもその個性のおかげで、何かにくっついたり、風で飛ばしたり、においを放ったり、ありとあらゆるやり方で、生き残り作戦をくり広げています。例えば、虫に葉を食べられたキャベツがその虫を食べるハチを呼んだり、ライオンに踏んづけられて旅をしたり、絶対に葉を落とさないやつがいたり、みんなけっこうな作戦家。そんな植物たちの作戦を植物学もからめつつ紹介したら、思わず引き込まれる面白知識がいっぱいだった! 大人だって知らない植物たちの生き残り作戦を、写真、イラスト、マンガを交えて楽しく紹介。
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藤井義晴(フジイヨシハル)
東京農工大学大学院農学研究院 国際環境農学部門 国際生物生産資源学専攻
東京農工大学大学院・卓越教授  藤井 義晴
※卓越教授とは、大学などの高等教育機関において、各専門分野において特にすぐれた業績をあげ先導的な役割を果たしている教員に対して付与される一般の教授より上位の名誉的な称号。
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