相手への敬意を表す敬語も、使い方を間違えると、相手に不快感を与えることがあります。日本語として不適切なバイト敬語や、同世代でしか通じない若者言葉は、意識的になおしていきましょう。
バイト敬語とは、敬語に不慣れなアルバイト店員のために、店側がマニュアルとして用意した接客言葉のことです。もともとはファミリーレストランやコンビニエンスストアなどで使われていましたが、現在は年齢を問わず、広く一般に浸透して、日本語として不適切な言い方までもが定着しつつあります。
×👩「ご注文のほうは、以上でよろしかったでしょうか?」
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「注文は、以上でよろしいでしょうか?」が正しい敬語です。わざわざ「~のほう」とぼかす必要はありません。「よろしかった」と過去形を用いるのも間違いです。
×👩「こちら、コーヒーになります」
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「~になります」は、AからBにものごとが変化するときに用いる表現です。お客様に料理や商品を提供するときは、「~でございます」「~をおもちいたしました」などと言いましょう。
×👩「1,000円からお預かりします」
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「1,000円をお預かりして、そこから代金を頂戴いたします」という意味でしょうが、日本語として不適切。「1,000円、お預かりいたします」が正しい言い方です。
若者特有の言葉づかいとしてもっとも代表的なのが、はっきりとした物言いを避けた「ぼかし言葉」です。
「わたしはそう思います」と言うべきところを、「わたし的にはそう思います」などとぼかして表現する言い回しは、相手と距離を置いて、責任を回避しているような印象を与えるので注意しましょう。
また、「タクる(タクシーに乗る)」「お茶する(喫茶店などに入る)」など、名詞に「る」をつけた若者言葉も、世代によって認知度に差があるので、ビジネスシーンや改まった場では使わないようにしたいものです。
×👨「わたし的には賛成です」
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「わたしは賛成です」と言うべきところを、「わたし的」とぼかすのは、自分という存在をあいまいにしているような印象を与えます。
×👨「映画とかご覧になりますか?」
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意味もなく無意識につけ加えてしまう、「とか」という表現もたびたび耳にします。「映画をご覧になりますか?」と言いましょう。
ふだんの生活で耳にすることが多いため、口癖のようになって知らず知らずのうちに使ってしまいがちな言葉があります。「超~」「マジ」「ヤバい」「~ってゆうか」などといった、俗っぽい、くだけた言い回しです。友だち同士で使うのは問題がなくても、ビジネスシーンや改まった場では、軽薄な印象を与えるので注意しましょう。
クッション言葉とは、用件を話し始める前に述べる短いフレーズのこと。クッション言葉をじょうずに使えば、相手の関心や気持ちを引き寄せて、お願いごとや言いづらいことを切り出しやすくなります。
👩「失礼ですが、お名前をお聞かせいただけますか?」
👩「誠に申し訳ございませんが、お約束のない方のお取り次ぎはいたしかねます」
💡クッション言葉を使うことで、全体の言い回しが丁寧でソフトな印象になります。
💭何かをお願いするとき/質問をするとき/提案するとき
◆お忙しいところ、恐れ入りますが…
◆お手数をおかけしますが…
◆ご面倒をおかけしますが…
◆失礼ですが…
◆さしつかえなければ…
◆よろしければ…
◆つかぬことをおうかがいしますが…
💭言いにくいことを伝えたいとき/おわびをするとき/断るとき
◆まことに申しわけございませんが…
◆まことに恐縮ではございますが…
◆ご迷惑かとは存じますが…
◆ご不便をおかけしますが…
◆せっかくではございますが…
◆あいにくではございますが…
◆残念ではございますが…
◆わたくしの思い違いかもしれませんが…
「恐れ入りますが…」と「さしつかえなければ…」
何かをお願いするときのクッション言葉は、相手に断る余地をどれくらい与えるかによって、言い方が変わってきます。依頼にある程度の強制力をふくむ場合は「恐れ入りますが…」、相手が断ってもよい場合は「さしつかえなければ…」が適当です。
💭「恐れ入りますが、至急ご調査いただけませんでしょうか?」
💭「さしつかえなければ、ご用件をお聞かせ願えますでしょうか?」
このように、ビジネスシーンにふさわしく、正しい言葉遣いを覚えることは社会人のマナーです。次回は、ふだん使っている言葉を少しだけ丁寧に言い換える方法を解説します。
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出典 『とっさに使える 敬語手帳』
本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
アイキャッチイラスト Shutterstock.com
産業能率短期大学、専修大学卒業。総合商社の常務付秘書、専門学校の秘書科講師を経て、平成3年にクロスポイントを設立。産業能率大学では、敬語をはじめとしたビジネスマナー、秘書検定、サービス検定を担当。また、企業の秘書研修、管理職の作法等を中心に研修講師として活躍。
秘書検定準1級面接試験委員、ビジネス実務マナー検定試験委員、サービス接遇検定運営委員を経て、実務技能検定協会 評議員、秘書・サービス教育学会監事を歴任。