親の介護や看病といった問題は、必ずしも親が年齢を重ねていきながら徐々にやってくるものではなく、ある日突然やってくることも多々あります。そしてこのことは、目下、育児に奮闘中のママ・パパにとっても他人事ではありません。
晩婚化・晩産化等を背景に、育児をしながら親の介護も同時に担う「ダブルケア」を行う人口は、平成28年の内閣府男女共同参画局による調査で約25万人もいます(女性約17万人、男性約8万人)。年代的には30歳~40歳代が8割と最も多く、この割合は育児のみを行う者とほぼ同様となっています。
どんな「もしも」が起こりうるのかは誰にも分からないからこそ、「知っておくこと」はとても重要であり、知識を持つことで将来への不安を少なくすることもできます。その時に最善の選択が出来るように、知っておくべきことを今から勉強しておきましょう。
連載第4回目の今回は、「施設を利用する際に困らないために必要な知識」をご紹介します。
介護施設にはいろいろな種類があります。在宅介護で施設サービスを利用するとき、入所して介護サービスを受けるときについて、各施設の特徴を理解し、親に合った施設選びをしましょう。
在宅介護が始まると、親はつい引きこもりがちに。しかし、それでは生活に張り合いが生まれず、身体機能も落ちてしまいます。そこで検討したいのが、デイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリテーション)です。
いずれも在宅で暮らす要介護者が日帰りで施設へ通うサービスで、朝9時くらいに自宅に迎えの車が到着し、利用者をピックアップ。施設でのスケジュールを終えて、夕方4~5時頃に自宅まで送り届けてくれます。半日の利用もあり、その間、家族は心身を休め、自分の時間を持つことができます。
施設では、まず体温・血圧を測り、問題がなければ、食事、口腔ケア、入浴、レクリエーションなどが行われます。
デイサービスではレクリエーションや趣味活動などが中心、デイケアは身体機能の向上を目指す機能訓練に時間を割いているのが特徴です。そのため、デイサービスは特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどの福祉施設で、デイケアは老人保健施設、病院、診療所などの医療施設で多く開設されています。
在宅介護を支えるおもなサービスには、訪問介護(自宅に来る)、デイサービス(施設に通う)、ショートステイ(施設に泊まる)があり、家族は必要に応じて使いこなすことになります。しかし、サービスごとに事業者が変わり、スタッフの顔ぶれも出かける場所も変わっていては、本人の気持ちが落ち着かず、心身に影響が出る場合もあります。
そこで誕生したのが、「訪問」「通う」「泊まる」を一体化させた「小規模多機能型居宅介護」というサービスです。通うのも泊まるのも同じ場所なので、スタッフも同じ。自宅を訪問するのも顔なじみのスタッフです。1日あたりの定員は「通い」がおおむね15名以下、「泊まり」がおおむね9名以下と、事業所自体も小規模です。その分、家庭的な雰囲気で、本人のことをよく知るスタッフが一貫して介護をしてくれます。
「小規模多機能型居宅介護」の利用料は月あたりの定額制です。何回利用しても同じ料金なので、介護費用が膨れ上がる心配がありません(食費、宿泊費などは別途)。ただし、こちらが希望しただけのサービスを事業者から提供してもらえない場合や、あまりサービスを利用しない場合も、一定額を支払うことになります。
小規模多機能型サービスを利用した場合、他の訪問介護サービスやデイサービスなどを受けることはできません(どうしても受けたい場合は全額自己負担)。
ケアマネジャーも小規模多機能型居宅介護のケアマネジャーに変わります。また、住民票のある市区町村でしか受けることはできません。
今回ご紹介した小規模多機能型介護サービスはほんの一例に過ぎず、民間の介護施設や有料老人ホームなど、誰もが聞いた事のあるサービスがまだまだあります。1日の流れや、総じてかかる費用など、たくさんの条件の中から自分たちに合った形のサービスを選ぶことが望ましいと思われます。
次回、最終回は「親の介護中、こんな時はどうする?」をご紹介します。
※本記事は、下記出典をもとに一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/室谷)
「親が入院した」という連絡は、ある日、突然やってきます。いざ、というときのために備えておきましょう。