2021.12.01
直井亜紀先生が教える、わが子と話したい性のこと

【思春期から性教育を伝えるのはもう遅い?】
「解答・解説」

問1 解答・解説 「性教育」のジャンル

「 性教育 」と聞くと、 どんな内容が頭に浮かびましたか? 性教育のカテゴリーにはたとえば次のものが含まれます。

 

1.関係性( 家族、友情、愛情、恋愛関係 )

2.価値観、人権、文化、セクシュアリティ

3.ジェンダーの理解

4.暴力と安全確保( 性暴力、性的虐待、デートDV、同意、「 からだの権利」、プライバシー、インターネッ トの安全な使い方 )

5.健康と幸福のためのスキル( 意思決定、コミュ ニケーショ ン、メディアリテラシー、支援、援助)

6.人間のからだと発達( 男性と女性の体、性器、生殖、月経、思春期、ボディイメージ)

7.セクシュアリティと性的行動(キス、ふれあい 、セックス、マスターベーション )

8.性と生殖に関する健康(妊娠、避妊、性感染症) など

 

「性教育」といっても 、実に幅広い内容を含むんですね!

 ユネスコなどの国際機関や専門職の意見がまとめられた「 国際セクシュアリティ教育ガイダンス」には 、このような「包括的性教育」の必要性が書かれています。

「包括的」つまり、性に関する知識やスキルだけではなく、人間関係や人権、価値観を尊重すること、多様性など、幅広く学ぶことが大切ということなのですね 。

 

 日本の学校では、性教育は保健体育の授業で教わります。そして、性教育の授業時間は、学校によりばらつきがありますが、中学生で年平均9.19時間ほどといわれています 。

 この限られた時間の中で、子どもたちはどこまで学ぶことができているでしょうか?

問2 解答・解説 避妊法の種類

 避妊の方法にはこのようなものがあります。

 

【日本で承認されているもの】

経口避妊薬(ピル・OC)( 避妊効果99.7%)…黄体ホルモンと卵胞ホルモンが含まれた薬を飲むことで、  卵胞の成熟を抑え排卵しにくくする。

IUD/IUS( 避妊効果99%)…IUD/IUSともに子宮内に挿入する器具。IUDはホルモンを含まず、IUSには黄体ホルモンが含まれている。受精卵の着床を防ぐ(約5年程度で交換が必要)。

コンドーム(避妊効果85~98%)…性感染症を防ぐことができる。男性の同意がなければ装着できない。

リズム法(避妊効果76%)…避妊効果は高くなく、妊娠したい人がタイミングを知る方法。

殺精子剤(避妊効果71%)…精子を殺す働きのある膣内に入れる薬。避妊効果は高くなく、コンドームと組み合わせるなど補助的に使用する。

【日本で未承認のもの】

避妊リング(避妊効果91%)…ホルモンを粘膜から吸収させるために、膣に挿入するリング。

避妊シール(避妊効果91%)…ホルモンを皮膚から吸収させるために、皮膚に貼りつけるシール。

避妊インプラント(避妊効果99%)…小さなプラスティックを腕に埋め込むホルモン避妊法。

避妊注射(避妊効果94%)

 

【その他】

不妊手術(男性)(避妊効果99.9%)/不妊手術(女性)(避妊効果99.5%)

 

 

 日本では、 避妊の方法といえばコンドームをイメージする方が圧倒的に多いようです。実は、コンドームの避妊効果は85~98%で、確実ではありません。また、コンドームは、「つける、 つけない 」つまり、「 避妊する、 しない 」を決めるのは男性で、女性は決めることができません。

 しかし、海外に目を向けると、日本ほど避妊法としてコンドームを選択する確率が高くなく、女性が主体的に選べる避妊法がたくさんあることがわかります。

 妊娠や出産は女性にしかできませんし、心身や社会的にも大きく影響するできごとです。「 妊娠する」「妊娠しない 」を決めるのは女性の権利です。女性が主体的に決められる避妊の選択肢が、さらに増えるといいですね。

問3 解答・解説 生理用品の種類

 現在日本で手に入る生理用品にはこのようなものがあります。

 

・紙ナプキン

 一般的に、 生理用ナプキンといえば紙ナプキンをさします。昼用、夜用、羽あり、羽なしなど、経血の量に合わせて選べます。

・布ナプキン

 名前のとおり、布でできた生理用ナプキンです。布を何枚も重ねて経血を吸収します。紙ナプキンに比べてかぶれにくく、くり返し使用できます。

・タンポン

 腟の中に入れて使います。経血を腟内で吸収するため、水泳などの際に便利です。

・月経カップ

 広口のカッ プ型で、 やわらかい医療用シリコンなどでできています。 折りたたんで腟内に挿入し、経血をカッ プの中にため、たまっ た経血をトイレで捨てます。かぶれることがなく、水洗いと消毒で繰り返し使用できます。

・シンクロフィット

 ナプキンと併用し、体とナプキンの隙間にはさんで使います。トイレに流せます。

 

 

 その他、  洗っ てくり返し使える「 吸水型サニタリーショ ーツ」もあります。このように生理用品の選択肢はいろいろあります。女性の生活に合わせて使い分けることができそうですね。

親世代の姓の知識は偏っているかもしれない

「性教育といえば?」「避妊法」「生理用品の種類」の3問をいっしょにお考えいただき、どのように感じたでしょうか。

 避妊法においては、日本では承認されていないものもあったので 、少しずるい問題だったかもしれませんね。

 わたしたち親世代の中でさきほどのような避妊法や生理用品を、すべて試したことがある人はおそらくいないでしょう 。

 快適さや使いやすさもひとりひとり違うはずです 。

 にもかかわらず、「ふつうは〇〇」と決めつけていることはありませんか? 自分たちがもっている性の知識は、プライベートな経験に基づいたものが多く、個人差があるものなのですね 。

マンガでわかる 思春期のわが子と話したい性のこと
直井亜紀 著(プロフィールは下記参照)
小学校4~5年生くらい(思春期)の子どもをもち、性教育についてどうしたらよいか悩んでいるママ・パパに向けて、「子どもの体の変化をポジティブにとらえる」、「自分の“ふつう”は本当にふつう?」、「子どもの性的関心にどう向き合うか」、「ジェンダーについて」など、「おうちで、こう話してみよう!」がわかる本です。小中学生を対象とした「いのちの授業」や性教育の講座などで広く活躍中の著者が、子育てで実際に直面するさまざまな悩みに寄り添い、マンガ多めで読みやすく解説しました。「思春期を迎えてからでは遅いのか?」「性教育には抵抗感がある」などと困っている方でも大丈夫!今からでも遅くありません。性、いのち、ジェンダー、防犯、人権について。これぜんぶ性教育です。あなたの子育てをアップデートしませんか?
購入はこちら
直井亜紀(ナオイアキ)

助産師。一般社団法人ベビケア推進協会代表理事。聖母女子短期大学助産学専攻科(現・上智大学総合人間科学部)卒。第39回母子保健奨励賞受賞。令和元年度内閣府特命担当大臣表彰受賞。埼玉県、千葉県、東京都などを中心に、小・中・高校でいのちや性の講演実績、企業や専門職向けのセミナー講師実績多数あり。エッセンシャル・マネジメント・スクールフェロー(特別研究員)。田口ランディ氏のクリエイティブ・ライティング(文章創作)講座受講。音楽活動では、企画・歌手を務めたCD「あかちゃんのうた」が童謡ランキング1位を獲得。合気道初段。二児の母。
著書『おかあさんのための性教育入門』実務教育出版
新着記事