「 性教育 」と聞くと、 どんな内容が頭に浮かびましたか? 性教育のカテゴリーにはたとえば次のものが含まれます。
1.関係性( 家族、友情、愛情、恋愛関係 )
2.価値観、人権、文化、セクシュアリティ
3.ジェンダーの理解
4.暴力と安全確保( 性暴力、性的虐待、デートDV、同意、「 からだの権利」、プライバシー、インターネッ トの安全な使い方 )
5.健康と幸福のためのスキル( 意思決定、コミュ ニケーショ ン、メディアリテラシー、支援、援助)
6.人間のからだと発達( 男性と女性の体、性器、生殖、月経、思春期、ボディイメージ)
7.セクシュアリティと性的行動(キス、ふれあい 、セックス、マスターベーション )
8.性と生殖に関する健康(妊娠、避妊、性感染症) など
「性教育」といっても 、実に幅広い内容を含むんですね!
ユネスコなどの国際機関や専門職の意見がまとめられた「 国際セクシュアリティ教育ガイダンス」には 、このような「包括的性教育」の必要性が書かれています。
「包括的」つまり、性に関する知識やスキルだけではなく、人間関係や人権、価値観を尊重すること、多様性など、幅広く学ぶことが大切ということなのですね 。
日本の学校では、性教育は保健体育の授業で教わります。そして、性教育の授業時間は、学校によりばらつきがありますが、中学生で年平均9.19時間ほどといわれています 。
この限られた時間の中で、子どもたちはどこまで学ぶことができているでしょうか?
避妊の方法にはこのようなものがあります。
【日本で承認されているもの】
・経口避妊薬(ピル・OC)( 避妊効果99.7%)…黄体ホルモンと卵胞ホルモンが含まれた薬を飲むことで、 卵胞の成熟を抑え排卵しにくくする。
・IUD/IUS( 避妊効果99%)…IUD/IUSともに子宮内に挿入する器具。IUDはホルモンを含まず、IUSには黄体ホルモンが含まれている。受精卵の着床を防ぐ(約5年程度で交換が必要)。
・コンドーム(避妊効果85~98%)…性感染症を防ぐことができる。男性の同意がなければ装着できない。
・リズム法(避妊効果76%)…避妊効果は高くなく、妊娠したい人がタイミングを知る方法。
・殺精子剤(避妊効果71%)…精子を殺す働きのある膣内に入れる薬。避妊効果は高くなく、コンドームと組み合わせるなど補助的に使用する。
【日本で未承認のもの】
・避妊リング(避妊効果91%)…ホルモンを粘膜から吸収させるために、膣に挿入するリング。
・避妊シール(避妊効果91%)…ホルモンを皮膚から吸収させるために、皮膚に貼りつけるシール。
・避妊インプラント(避妊効果99%)…小さなプラスティックを腕に埋め込むホルモン避妊法。
・避妊注射(避妊効果94%)
【その他】
・不妊手術(男性)(避妊効果99.9%)/不妊手術(女性)(避妊効果99.5%)
日本では、 避妊の方法といえばコンドームをイメージする方が圧倒的に多いようです。実は、コンドームの避妊効果は85~98%で、確実ではありません。また、コンドームは、「つける、 つけない 」つまり、「 避妊する、 しない 」を決めるのは男性で、女性は決めることができません。
しかし、海外に目を向けると、日本ほど避妊法としてコンドームを選択する確率が高くなく、女性が主体的に選べる避妊法がたくさんあることがわかります。
妊娠や出産は女性にしかできませんし、心身や社会的にも大きく影響するできごとです。「 妊娠する」「妊娠しない 」を決めるのは女性の権利です。女性が主体的に決められる避妊の選択肢が、さらに増えるといいですね。
現在日本で手に入る生理用品にはこのようなものがあります。
・紙ナプキン
一般的に、 生理用ナプキンといえば紙ナプキンをさします。昼用、夜用、羽あり、羽なしなど、経血の量に合わせて選べます。
・布ナプキン
名前のとおり、布でできた生理用ナプキンです。布を何枚も重ねて経血を吸収します。紙ナプキンに比べてかぶれにくく、くり返し使用できます。
・タンポン
腟の中に入れて使います。経血を腟内で吸収するため、水泳などの際に便利です。
・月経カップ
広口のカッ プ型で、 やわらかい医療用シリコンなどでできています。 折りたたんで腟内に挿入し、経血をカッ プの中にため、たまっ た経血をトイレで捨てます。かぶれることがなく、水洗いと消毒で繰り返し使用できます。
・シンクロフィット
ナプキンと併用し、体とナプキンの隙間にはさんで使います。トイレに流せます。
その他、 洗っ てくり返し使える「 吸水型サニタリーショ ーツ」もあります。このように生理用品の選択肢はいろいろあります。女性の生活に合わせて使い分けることができそうですね。
「性教育といえば?」「避妊法」「生理用品の種類」の3問をいっしょにお考えいただき、どのように感じたでしょうか。
避妊法においては、日本では承認されていないものもあったので 、少しずるい問題だったかもしれませんね。
わたしたち親世代の中でさきほどのような避妊法や生理用品を、すべて試したことがある人はおそらくいないでしょう 。
快適さや使いやすさもひとりひとり違うはずです 。
にもかかわらず、「ふつうは〇〇」と決めつけていることはありませんか? 自分たちがもっている性の知識は、プライベートな経験に基づいたものが多く、個人差があるものなのですね 。
著書『おかあさんのための性教育入門』実務教育出版