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2026.06.16

“めまい”がして立っていられないし、吐き気も…すぐに病院へ行くべき症状とは? 対処方法とセルフケアも紹介

 6~10月は、梅雨や台風の影響で気圧の変化が大きく、めまいが悪化する時期なので注意が必要です。

 耳鼻咽喉科専門医で、日本めまい平衡医学会認定めまい相談医である医学博士の富田正彦医師は、「健康な人であっても、何かがきっかけで耳鳴りやめまいが起こることは珍しくなく、時間がたてば消える一過性のものであれば、心配する必要はありません。一方、めまいや耳鳴りが常にあって日常生活に支障をきたしている場合は治療が必要ですし、めまいや耳鳴りが繰り返し起こったり、ほかの症状も同時に起こっている場合は、重篤な病気のサインである可能性があります」といいます。

 

 速やかに医療機関を受診すべきめまいの症状とはどのようなものなのか、また、めまいが起きたらどうすればよいのかなどを、富田医師の著書『悩み・不安・困った!を専門医がスッキリ解決 耳鳴り・めまい』(新星出版社刊)より一部抜粋・編集して紹介します。

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 私たち人間は、ある程度不安定な場所でも、ひとりで立つことができます。そこには、体の傾きや回転、加速度(スピード)などを察知する「平衡感覚」という働きがかかわっています。

 

 平衡感覚は、耳(前庭覚)や目(視覚)、足などの筋肉・腱(体性感覚)から、体の傾きや動きの情報を得て、それらが脳に伝わって統合されることで、「自分の体の傾き・動きはどうなっているか」を把握できることで成り立っています。

 脳で統合した情報は、目や手足、自律神経などに送られ、「体が傾いているから、視点を修正しよう」などと、それぞれの体の部位が無意識のうちにバランスをとろうと働くのです。

 

 めまいは、この平衡感覚が障害されることで起こる症状です。そして、その障害が体のどの部分(領域)の問題・病気によって生じるかで、「前庭性」と「非前庭性」に分けられます。

 

 前庭性めまいは、平衡感覚にかかわる内耳や脳の異常によるめまい、非前庭性めまいは、それ以外の全身の状態によるめまいのことです。そして、一般的に「めまい」と呼ばれる症状は、前庭性めまいであることがほとんどです。

 

 「前庭」とは、耳の奥(内耳)にある「三半規管」と「耳石器」で構成された、平衡感覚をつかさどる感覚器のことです。

 三半規管では頭部の傾きや回転などを、耳石器では加速度などを情報として感知し、前庭にある神経(前庭神経)を通して脳へと伝達します。

 これにより、脳が「体が傾いている」などと認知し、姿勢を変えたり眼球を動かしたりしてバランスをとろうとします。

 三半規管や耳石器に異常が起こると、体の傾きなどをうまく感じ取れなくなり、感知する機能そのものにも狂いが生じるようになります。こうして起こるめまいを、前庭性めまいのなかでも「末梢性めまい」と呼びます。

 内耳は耳鳴りの原因となる難聴を生じさせる器官でもあるため、めまいと同時に耳鳴りが起こることも少なくありません。

 

 また、前庭性めまいは、脳の障害によっても起こります。先述のとおり、脳には内耳や目、筋肉などで感知した体の傾きや動きの情報がすべて伝えられます。そして脳は、それらの情報をまとめることで、バランスをとるための判断を行い、体の各部位にバランスをとるための情報を伝えます。

 しかし、小脳や脳幹で脳梗塞や脳出血などが起こると、脳がバランスにかかわる情報の処理を正しく行えなくなり、めまいが生じます。これを前庭性めまいのなかでも、「中枢性めまい」と呼びます。

 中枢性めまいは、命の危険もある病気の症状として現れるため、めまい以外に激しい頭痛や舌のもつれ、手足のしびれなどを感じたら、すぐさま医療機関を受診する必要があります。

 一方で非前庭性めまいは、耳や脳などの平衡感覚をつかさどる部分ではなく、全身状態の何らかの異常によって起こるめまいです。この場合、脳への血流量の減少や自律神経の不調、更年期障害、心因性などがめまいの引き金となります。

■めまいが現れる病気
・メニエール病
・突発性難聴
・前庭神経炎
・良性発作性頭位めまい症
・悪性発作性頭位めまい症
・外リンパ瘻
・脳梗塞

 

■めまいの背景因子例
・ストレス
・疲労
・睡眠不足
・体質
・加齢
・生活習慣病
・薬物

すぐに病院へ行くべき症状は?

 中枢性めまいである場合は、すぐさま医療機関の救急外来や、かかりつけ医を受診してください。

 中枢性めまいは、脳幹や小脳といった脳の中枢部で、何らかの障害が起こったときの症状のひとつです。

 脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れる脳出血、脳に腫瘍ができる脳腫瘍、脳がウイルスや細菌に感染する脳炎などが、おもな原因です。

 いずれの場合にも、めまい以外にも激しい頭痛や嘔吐、ものが二重に見えること、手足のしびれ、言語障害(ろれつが回らない、言葉が出てこないなど)、歩行困難(まっすぐ歩けない)などが起こります。

 

 めまいとともにこれらの症状が見られる場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。

 症状が数分から1時間のうちに治まったときにも注意が必要です。この場合、「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があります。

 TIAは、一時的に脳の動脈が詰まり、脳梗塞の症状が現れたものの、すぐに動脈が開いたことで血液が流れ、症状が消える現象のことです。運よく血管の詰まりが解消しただけに過ぎず、血管には障害が残ったままであるため、脳梗塞や脳出血の前触れともされています。

 実際、TIAは48時間以内に脳梗塞を発症しやすいとされ、90日以内に脳梗塞を発症するリスクは15~20%にもなるという報告があるほどです。たとえ症状が一時的であったとしても、その原因を確認するために、医療機関を受診するようにしましょう。

めまいが起きたらどうすればいい?

 激しい頭痛や手足のしびれなどがないめまいは、命にかかわることはほとんどありません。しばらく休めば治まりますので、落ち着いて対処しましょう。

 

 めまいが起こった際に、もっとも危険なのはふらついて転倒することです。大けがのもとにもなるので、四つん這いでゆっくりと移動し、イスなどに座ります。一定の姿勢を保っていれば、めまいは次第に落ち着きます。移動できない場合には、無理に動かず、めまいが落ち着くまでその場にしゃがみ込むほうが安全です。

 

 目や耳からの刺激で、症状が悪化することがあります。そのため、静かな暗い場所で休むようにします。あまり頭は動かさず、衣服をゆるめて横たわり、安静にしましょう。目を閉じるとかえってめまいがひどくなることがありますので、一点を見つめるようにしてください。

 

 外出先でめまいが起こったら、路上であれば車が来ない場所へ、駅のホームであれば、ホームの中央へと移動しましょう。車の運転中である場合は、あわてず路肩に駐車し、落ち着くのを待ちましょう。めまいの発作を抑える薬が処方されているならば、外出時には必ず携帯し、発作が起きたときには服用して安静にします。

 

 発作がいつもよりも激しい場合や、ほかの症状が強い場合、そして安静にしていてもめまいが治まらない場合には、救急車を呼ぶか、かかりつけの医療機関に連絡するなどして、医師の指示や診断を受けてください。

めまいが起こるとどうなるの?

 めまいが起こってすぐの「急性期」は、症状がもっとも激しく現れる時期です。目の前がグルグル回ったり、体がふらついたりして立っていられず、吐き気・嘔吐が生じます。1~2時間で症状が緩和すれば、一過性のめまいであると判断できますが、激しい頭痛や言語障害などの神経症状がある場合には、中枢性めまいの可能性もあります。この場合は、すぐさま救急外来やかかりつけ医を受診しましょう。

 

 急性期の激しいめまいが落ち着くと、しだいに緩和していく「亜急性期」に入ります。めまいの発症から1週間~1か月ほどのこの時期に注意したいのが、めまいが発性難聴の症状であるかどうかです。突発性難聴は発症後1週間以内に治療を開始することが重要であるため、左右の耳で聞こえ方に違いがないかをイヤホンなどで確認し、異常がある場合にはすぐさま耳鼻咽喉科を受診しましょう。

 

 多くのめまいは、亜急性期を経て、自然と症状が治まります。しかし、平衡感覚の機能が回復しなかった場合や、めまいに対する不安が強い場合には、発症から数か月経過してもめまいが続く「慢性期」に入ることがあります。

 

 平衡感覚の機能が回復しないのには、前庭などの障害そのものが改善しない場合と、その異常を補う「代償」という機能がうまく働かない(末梢前庭障害代償不全)場合があります。いずれの場合でも、のちほど紹介する前庭リハビリテーションを行い、平衡感覚を取り戻せるようにします。また、めまいに対する不安の強さなど、心理的な原因が考えられる場合には、抗うつ剤や抗不安薬を服用したりすることで、めまいの悪化を防ぎ、状態を改善させるようにします。

めまいの改善方法は?

 めまいは、平衡感覚をつかさどる機能が低下することで生じることが多くその原因はさまざまです。そして、その原因に合わせたトレーニングをすることで、めまいを改善することができます。ここでは、先ほど解説した、めまいの原因が前庭の障害にある場合に効果的な前庭リハビリテーションの方法を2つ紹介します。

■その1 【頭振り】 前庭リハビリテーション(1)

 「頭振り」は、前庭の障害が原因となっているめまいを改善する運動法で、目で動きを追う脳の機能や、内耳と脳をつなぐ前庭神経の機能を鍛えることができます。対象となるのは、メニエール病や前庭神経炎、めまいをともなう突発性難聴などです。

 また、私たちの体には、くり返される動きに対し、慣れようとするしくみがあります。そこで、「頭を振る」というめまいの引き金となる行動をあえてくり返し、慣れることで、徐々にめまいを減らせる効果も期待できます。

 前庭神経の機能を鍛えるリハビリテーションは、海外ではごく一般的に行われている治療です。有効性も報告されているので、日本国内でも注目度が上がっています。

【頭振り】 前庭リハビリテーション(1)のやり方

■その2 【歩行訓練】 前庭リハビリテーション(2)

「歩行訓練」は、耳(内耳)・目・足裏や脚の筋肉といった、平衡感覚をつかさどる部位をすべて鍛えられる運動法です。これにより、たとえ内耳に障害を受けていても、ほかの部位で平衡感覚を補えるようになります。

 また、あえて急な方向転換をする訓練も含まれるため、歩いていて方向を変えたときや、らせん階段を上っているときなどに起こるめまいの改善にも有効です。

【歩行訓練】 前庭リハビリテーション(2)のやり方

 あなたがもし病院に行って正確な診断がなされたとしても、めまいの症状をピタッと完全に止める薬はありません。有効性が証明されているのは、メニエール病に対する浮腫をとる薬程度です。ほとんどの薬は、症状を和らげるもので、原因を直す効能は限られています。

 薬よりも最も重要なことは、音響療法やさきほど一例をご紹介した前庭リハビリを行ったり、睡眠を十分にとるなど生活習慣を見直すことです。自分で病気を治すためにできることは多くありますので、日々の生活に取り入れてみましょう。

悩み・不安・困った!を専門医がスッキリ解決  耳鳴り・めまい
富田雅彦 著(プロフィールは下記参照)
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富田雅彦 (トミタマサヒコ)
医学博士。耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医、補聴器相談医。めまい平衡医学会認定めまい相談医。富田耳鼻科クリニック院長。
新潟大学医歯学系耳鼻咽喉科助教、長岡赤十字病院耳鼻咽喉科部長を経て、2019年、新潟県新発田市にて富田耳鼻科クリニックを開院。病気の悩みに共感する心で質の高い医療を提供し、日本全国から患者が訪れる。登録者数14万人を超えるYoutubeチャンネルでは、「みみ・はな・のど」の症状に不安や苦痛を感じている視聴者に対して、病院に行かなくても良いように役に立つ知識をわかりやすく解説している。
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