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2026.07.14

空き家の固定資産税が6倍に? 訴訟リスクも…不動産売却のプロが「早めの対応を」と忠告する理由

 親が高齢になり、実家に戻る予定もない――そんな状況でも、「まだ元気だから」「必要になったら考えればいい」と先送りにしていないでしょうか。けれど実家の問題は、空き家になってから動き出すと、税金や管理費といった金銭的な問題と、相続人同士の話し合いなどが重なり、想像以上に負担が大きくなることがあります。

 実家の問題を先送りすると、いざというときに慌てたり、家族でもめたりして、結果的に損や失敗をして後悔することになりかねません。

 では、空き家にすると具体的にどのようなリスクが生じるのでしょうか。また、実家じまいを始めるタイミングはいつが最適なのでしょうか。不動産売却を知り尽くしたプロであり、売却の正しい知識と売主が損をしないための情報を発信している山中英紀さんが監修した『実家の売り方、準備の仕方がぜんぶわかる本』より一部抜粋、再編集して解説します。

実家を空き家にすると何が問題になるのか

 親が亡くなったり施設へ入所したりした後、しばらくは実家をとりあえずそのままにして、どうするかをゆっくり考えたいという人もいるでしょう。

 でもその間、誰も住まなければ実家は「空き家」状態になります。

 現在、放置された空き家は年々増え、総務省が5年ごとに調査・発表している「住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家数は約900万戸と過去最高を更新。このうち、実家問題と関係する持ち家の戸建て空き家は約400万戸前後とされています。

 

 空き家は、老朽化に伴う倒壊、不法侵入や放火、ゴミの不法投棄などが治安悪化にもつながるため、今や社会問題になっています。空き家にするリスクは大きく、何年も放置すると税金が6倍になることもあるのです。

2023年の空家法改正により、空き家を放置すると税金が6倍になることも

「実家をどうするか」を考えたとき、安易にとりあえずそのままという選択をするのは危険です。誰も住まなくなって空き家になった実家の管理を後回しにして放置していると、税金の負担が大きくなる可能性があることをご存じでしょうか。

 

 実は2023年の空家法改正により、自治体から「管理不全空家等」や「特定空家等」として勧告を受けると住宅用地特例が解除され、小規模住宅用地(200平方メートル以下)の場合、固定資産税は最大6倍、都市計画税は3倍になることがあります。

 

 改正前は「特定空家」に認定されない限り税金が高くなることはありませんでしたが、現在は治安悪化や倒壊の恐れのある空き家をなくすために、特定空家になる可能性のある管理不全空家で指導が行われています。築年数の古い実家は、管理を怠ると管理不全空家になる可能性が高いので注意が必要です。

 

 管理不全空家と認定されても何ら改善せず放置していると、いよいよ特定空家に認定されます。その後の指導や勧告、そして命令に従わないと50万円以下の過料が科せられます。建物倒壊の危険度が高い場合には、行政代執行により強制的に解体され、その費用は所有者に請求されます。空き家になった実家を放置し続けると、多額の税金や諸費用がかかることをよく認識しておきましょう。

 

【将来の実家の選択肢】
「実家をどうするか」には、相続の問題も関わってきます。家族でよく話し合って決めましょう。

 

■実家に住む
・自分は住まなくても、きょうだいの誰かが住む。
・実家を売却するまでの期間限定で住む。

 

■親がいる間は維持
・親が施設に入所、病院に入院して、誰も住まなくなっていても、親が生きている間はそのまま維持。

 

■実家を売る
・実家の土地や建物を売却する。

 

【空き家は維持・管理が重要】
 実家を売るという選択をしても売れるまでは空き家になることがあります。その場合、安易に「誰かに貸す」「親戚に住んでもらう」といったことはせず、建物の状態を保つための適切な管理を行ってください。税制上の大きな優遇措置(空き家の3000万円控除)を受けるためには「相続から売却までずっと空き家であったこと」が絶対条件となるからです。

建物の状態を保つための適切な管理とは

■かかるのは固定資産税だけではない――空き家にかかる主な費用

 実家が誰も住んでいない「空き家」になったとしても、維持費としてかかるのは「固定資産税だけ」と思っていませんか? 家は「持っているだけ」で、実にさまざまなお金がかかります。年間数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。

 税金でいえば固定資産税だけでなく、土地や建物が市街化区域内にあれば都市計画税も発生します。万が一に備えて火災保険に継続加入すれば保険料、電気や水道も使えるようにしておきたいなら光熱費の支払いも生じます。

 また、マンションの場合は毎月の管理費と修繕積立金がかかります。戸建ての場合は家の状態にもよりますが、屋根や外壁の修繕や庭木の剪定の費用が必要になることもあります。

 とりあえず実家を現状維持するにしても、定期的に実家へ行って維持管理をするようにしましょう。その場合、実家が遠方だと交通費、食事代、実家に泊まらないなら宿泊費がさらに必要になります。

 

 空き家の期間が長くなるほど、維持費はどんどんかさんでいきます。親が元気なうちに実家のことを考えるのが一番ですが、実家に誰も住まないとわかった時点で早めに売却や活用を検討することが大切です。

 

【空き家にかかる主な費用】
 実家をとりあえずそのままにしておく場合は、年間にかかるおおよその維持費を把握しておくことが大切です。

 

▼固定資産税、都市計画税

直近の納税額を親に確認しておく。

 

▼管理費・修繕積立金(マンションの場合)

親またはマンションの管理組合に金額や引き落とし日などを確認しておく。

 

▼火災保険

空き家でも、火災保険に加入しておくことをおすすめします。特約は見直して空き家に適した内容に。火事になった場合に未加入だと、建物の解体やがれきの撤去、隣家への損害賠償などが全て自己負担となります。空き家は放火リスクも高いので、万が一に備えておくと安心です。なお、火災保険は空き家になると災害補償が適用されなくなる場合もあるので、これまで加入していた火災保険の保険会社に確認しておきましょう。地震保険については、これまで親が加入していても空き家になると原則加入できません。

 

▼水道・電気・ガスなど光熱費

実家の片づけや掃除の際、電気・水道は使えるようにしておくと便利。ガスは止めても。

 

▼庭木の剪定・除草などの費用

隣家に木の枝や落ち葉で迷惑をかけないためにも、庭木の手入れをしておく。

 

▼修繕費用

雨漏りがする場合は屋根や外壁の修繕が必要。

 

▼その他

交通費、宿泊費、食事代など。

■家を「資産」として維持・管理するためには定期的に家の内外をチェック
 家は、誰も住まなくなると劣化が進みます。家の売却や賃貸に出すことを視野に入れるなら、家を「資産」として維持・管理する必要があります。とはいえ、すぐ業者に頼む必要はありません。基本的には定期的に実家へ帰って、掃除や点検をするなどのセルフメンテナンスで十分です。換気と水のトラブルチェックは必須です。

 

 具体的にどんなことをするかといえば、まず換気です。人が住んでいれば自然と換気されますが、空き家になると湿気がこもってカビやすくなります。窓を開けて家全体に風を通すことが大切です。押し入れやウォークインクローゼットも、忘れずに換気しましょう。

 

 また、天井や壁にシミがないかの点検を忘れないこと。シミの原因が雨漏りや水漏れの場合、家の劣化につながります。庭がある場合は、庭木の剪定や雑草の除去、落ち葉の清掃を行い、近隣の家に迷惑がかからないようにします。

 

 ほかにも不法侵入や放火のリスクを防ぐために窓や玄関の施錠の確認はもちろん、必要に応じてセンサーライトや簡易防犯カメラなどの設置の検討をしましょう。空き家の場合、特にセキュリティー面を強化しておくことが重要です。実家をきちんと維持・管理しておくことで、売却時に不要な減額やトラブルを避けやすくなります。

 

■近隣トラブルを防いでご近所さんに迷惑をかけない
 空き家はきちんと管理しないと、近隣に迷惑をかけてトラブルに発展することがあります。例えば、庭木が伸びて隣家に枝がはみ出している、落ち葉が隣家の側溝や雨どいにたまっている、といった一見して些細なことでもトラブルの原因になることがあるので注意が必要です。

 

 築年数が古く老朽化が進んでいる実家は、屋根材や外装材がはがれ、隣家の敷地に落ちちる可能性もあります。そうなれば隣家の方や通行人にケガを負わせる事故になりかねません。

 実家が豪雪地帯にある場合は、屋根の雪が隣家に落ちることもあり、雪下ろしなどの対応が必要です。行けないのであれば業者に頼むことも考えましょう。また、物置や床下、屋根裏に猫やイタチなどの動物が住み着き、悪臭や鳴き声で近隣環境を悪化させるケースもあります。

 

 空き家の状態は、地域全体の安全や環境に直結します。放火されるリスクがあったり、不法投棄場所になりやすかったりするため、トラブルの内容によっては近隣からの苦情や訴訟に発展することもあります。

 

 空き家を管理することは、家をできるだけよい状態に維持するのはもちろん、近隣トラブルを防ぐことにもつながります。定期的に実家に帰って近隣に迷惑がかかっていないか建物の状態や敷地内をチェックしましょう。

実家じまいを始めるタイミング

■誰も住まないなら処分する
 最近、「実家じまい」というワードを見聞きすることが多くなりました。実家じまいとは、誰も住まなくなった親の家を子どもが整理・処分することをいいます。親の高齢化や空き家の問題から、実家をたたむという行動が注目されています。「実家をどうするか」という課題を先送りしている人にとって、いつ実家じまいをすべきかは迷うところでしょう。実は、実家じまいを始めるタイミングは大きく3つあります。

 

(1)親が亡くなって相続が発生したとき
 相続が発生すると実家の扱いについて話し合うきっかけになりやすいので、相続人である他のきょうだいとよく話し合って決めます。もしも実家に住む人がいなければ、売却処分することを検討しましょう。相続後の売却では、一定の要件を満たした場合に限り、税法上の特例が使えることがあります。

 

(2)親が介護施設や有料老人ホームに入所したとき
 介護施設や有料の老人ホームの入所の際の資金にあてる目的で処分を行う場合もあります。親が施設などから家に戻る可能性がないなら実家じまいを考えましょう。親が意思表示できる場合は、親の意向も聞きながら進めることが大切です。

 

(3)親と同居することになったとき
 施設入所同様、親が病気やケガなどで自立して生活することが困難になり同居する場合、誰もいない家の維持は負担がかかります。実家に住む人がいなくなって時間が経つほど建物の劣化、管理負担など空き家のリスクが生じるので、早めに処分するのが望ましいでしょう。いずれにしても誰も実家に住まないなら、早めに実家じまいにとりかかることをおすすめします。親が意思表示できる場合は、親の意向も聞きながら進めることが大切です。

 

 このように、実家じまいを始めるタイミングは大きく3つあります。親が生きているうちは実家を処分できないと思うかもしれませんが、誰も住まなくなった時点で早めに処分を検討することをおすすめします。

出典『実家の売り方、準備の仕方がぜんぶわかる本』

実家の売り方、準備の仕方がぜんぶわかる本
山中英紀 監修(プロフィールは下記参照)
『亡くなった後の手続き・届け出がずべてわかる本』『生前整理と手続きがぜんぶわかる本』のシリーズで、本書のテーマは「実家の売却」。
2023年12月、空き家に対する固定資産税が6倍に跳ね上がるなど、「実家売却」に注目が集まっています。

実家の売却は想像以上に大変で、事前準備や売却の流れを知らないと損をしてしまう可能性が高いのです。
本書は、実家売却における確認事項や流れ、税制、法律などの知識が詰まっており、1冊あれば「実家売却」に関する問題を解決することができます。

第1章 実家の問題を先送りしない
・親が亡くなったとき?実家に誰も住んでいない状態になった?実家じまいの最適なタイミング
・維持費の問題や近隣とのトラブル予防といった空き家の管理のポイント など

第2章 親が元気なうちに確認しておくこと
・親に家のことを切り出すコツ
・実家に関する書類の保管場所や、財産状況を把握
・重要だけど見逃しがちな家の境界線
・遺言書の確認 など

第3章 実家を売る前に知っておくこと
・実家売却の流れ、実家の相場価格を把握する
・不動産会社が行う査定の種類、注意点
・不動産会社選びのコツ
・実家の売却にかかる費用や知っておきたい特例 など

第4章 実家を売る
・相続前と相続後の実家の売却の違い
・売り出し価格の決め方
・不動産会社と契約を結ぶときのポイント
・不動産売却にかかる一般的な日数 など

第5章 実家を相続・売却したときの税や申告
・実家を相続して相続税がかかるケース
・小規模宅地名との特例が適用される条件
・相続登記の流れ
・相続税の申請手続きの流れ
・売却後にかかる税金
・トラブルが起きたら税理士や司法書士、弁護士に相談 など

第6章 実家の片づけで 売却をスムーズに
・実家の物を片づけるコツ、遺品整理のポイント
・仏壇の処分の仕方や、庭木や石の扱い など

第7章 こんなときどうする? 「実家売却・相続」Q&A
・売れないときは不動産会社を見直すべき?
・戸建ての築年数はどれくらい影響する?
・古いマンションは売りにくい?
・借地に建てた家は売却できる?
・インスペクションで売却しやすくなる?など

実家売却の準備リスト
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山中英紀(ヤマナカヒデキ)
一般社団法人 不動産売却支援機構《バイサポ》代表理事。株式会社ワイズワンホーム・株式会社ワイズテック代表取締役。
1968年兵庫県生まれ。建築業界を経て2006年住宅事業の会社を設立。2019年に不動産部門を独立。東京・神奈川・大阪・兵庫にて不動産の売却を専門に行う。2021年、売却の正しい知識と売主が損をしないための情報を発信する不動産売却専門のYouTube「不動産売却チャンネル」を開設。登録者数7万人超(2026年1月現在)。
宅地建物取引士、一級建築施工管理技士。
著書に『【完全版】損せず売れる!不動産パーフェクトガイド』(知道出版)がある。
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