[その①] 視覚系脳だけでなく聴覚系脳も使う
黙読は視覚からの情報しか脳に伝わりませんが、音読は自分の声を聞くことで聴覚からの情報も伝わります。
[その②] 「あの」「その」がなくなり、言葉が出やすくなる
思考力や判断力が高まるだけでなく、伝達系脳を刺激するため、認知症予防などアンチエイジングに役立ちます。
[その③] 朝から前向きになれる
思考系脳が刺激されると不安感がやわらいで前向きになり、うつ病の予防・改善につながります。
[その④] 顔の舌の筋肉が鍛えられる
表情筋や舌筋を動かすため、頬のたるみや食べ物を飲み込む嚥下能力の低下が改善して、高齢者に多い誤嚥による肺炎を予防します。
[その⑤] 人の話がよく聞けてキレなくなる
音読して自分の声を聞いているので、他人の声も聞き取りやすくなって話を理解できるため、怒りづらくなります。
脳の働きを効果的に引き出すための音読法についても紹介します。実は文章を音読することで、次のように脳の6つの系統が順次刺激されます。
①視覚系脳で文字を追い、1文字1文字をひとつながりにして認識する。
↓
②記憶系脳に蓄積されている言葉の意味と結びつける
↓
③理解系脳で文章としての意味を理解する
↓
④伝達系脳で文章を想起する
↓
⑤運動系脳で口を動かし音に変換する
↓
⑥聴覚系脳で自分の声を聞き取る
↓
さらに理解が深まることで感情系脳や思考系脳も活性化!
このように、音読は多様に脳を刺激しますが、1回の音読で脳にある8つの系統がすべて働くとは限りません。そこで重要なポイントとなるのが、聴覚系脳で自分の声をしっかり聞き取ること。しっかり自分の声を聴くことで、脳全体の働きは高まるのです。ところが、脳は棒読みでは、聴覚系脳への伝わり方が弱くなり、脳全体の働きも弱くなります。
そこでこの本では、助詞を強調した音読をおススメします。脳は名詞と助詞の差を感知しやすいので、「に、が、は、の」などの助詞を名詞よりも大きな声で読むことで、声がはっきりと脳に伝わり、文章が記憶しやすく、理解度が格段にアップします。そこで、掲載している作品の文章には、音読する際の参考にしていただくために、名詞やそれに準じる語句に接続している助詞に●印を付けました。ゆっくりしっかり、発音しながら、繰り返し読むことで、脳全体が活性化する音読ができるようになるでしょう。
📖さっそく読んでみよう!
本日のテキストは「枕草子」
◆さらなり…「言ふもさらなり」の略で「言うまでもない」という意味
◆をかし…しみじみとした感動を意味する形容詞
◆まいて雁などの連ねたる…まして雁の群れが一列になって飛んでいる
◆またさらでもいと寒きに…またそう(白い霜が置いて)でなくてもとても寒い時に
◆つきづきし…「調和がとれている、ふさわしい」という意味の形容詞
『枕草子』の冒頭の文章は、国語の授業で暗記した方も多いはずです。日があるうちは美的感覚が視覚中心なのに、日が暮れると聴覚中心になる点など、音読する際は現代との違いに思いをはせてみましょう。
作者 清少納言
生没年不詳。
女房としての名前しか残っておらず、本名は不明。学者の家系に生まれ、和歌や漢学の才覚を見せる。28歳ごろに一条天皇の中宮定子に女房として仕えた。『枕草子』監視後は隠遁生活を送ったとされる。
最近は新型コロナの影響で家族間でも会話が減り、声が出しづらい方も少なくありません。そのため、プールに入る前に準備体操をするように背筋を伸ばして、「あ~い~う~え~お~」と五十音を声に出してゆき、のどの調子を整える「音読の準備体操」がおすすめです。1作品を音読する目安は1分ですが、あくまでも目安です。まずは読むことに集中できるように、自分に合ったペースで読んでいきましょう。
出典『脳が元気になる!音読1日1分』
イラスト桜井葉子
本書は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
著書には、『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き「選ばれた才能」を120%活かす方法』(ダイヤモンド社)、『頭がよくなる!寝るまえ1分おんどく366日』(西東社)など多数。