【連載第2回】
個人事業のさまざまな形態
④「個人事業を立ち上げる手始めとしての副業」
「副業」でも事業を始めれば個人事業主です。副業とは、本業をもつ人(多くの場合は会社員)が、本業(給与)以外から収入を得ている仕事のことです。サイドビジネスやダブルワーク、兼業も同じ意味で使われています。
その仕事の範囲は、広範に及びます。アルバイトや内職のようなものから、ヤフオク!やメルカリなどへの出品、SNSやYouTubeでの広告収入、家事代行サービスなども、副業としてとらえられます。また、その意味を拡大して解釈すれば、マンションや駐車場の経営、株やFX、仮想通貨などの投資も副業に含めることができるかもしれません。
副業をする目的は人それぞれです。人気ユーチューバーになって一攫千金を狙う人もいれば、すき間時間を利用して月に数万円を稼ぐ人もいます。
また、趣味で製作した小物を販売したり、得意な語学を活かして臨時収入を得るなど、趣味やいきがいの延長として副業を始める人もいます。
ここでは、副業で始めはするものの、いずれは本業にできるくらい収入を増やしていきたいと考えている方をメインに考えます。
カメラマンやプログラマーのようなフリーランスの場合は、一般的に企業などから直接、仕事を請け負うので、営業活動が必要です。しかし、インターネットを使って不特定多数の人に業務を委託する「クラウドソーシング」というサービスを使えば、クライアントを開拓しなくても自分のスキルを売る仕事を得ることができます。「Lancers(ランサーズ)」や「CrowdWorks(クラウドワークス)」「Craudia(クラウディア)」「ストアカ」といった大手のクラウドソーシングサイトには、イラスト制作やデザイン、ソフトウェア開発といった専門知識や技能を要するものから、家事代行や体験談の執筆といった比較的簡単なものまで、さまざまな仕事が掲載されています。副業を始めるならば、営業活動をほとんどしないで済む、このようなマッチングサイトを活用するのも一つの手でしょう。
時間や場所を選ばずに仕事ができるという点では、SNSやブログなどに広告を貼って商品を売り、広告主から手数料を得るアフィリエイトや、SNSやYouTubeで宣伝することで広告収入を得る方法も副業に向いています。これらを定期的に更新するには根気が必要ですが、ユーザーの関心をうまく引きつけることができれば、本業に影響を与えることなく収入が得られます。
空き部屋や家の前の空きスペースのような遊休資産があれば、その資産を活用して稼ぐ方法もあります。「民泊」や「駐車場のシェア」「個人間のカーシェア」などのシェアリングビジネスがこれに当たります。これらも「Airbnb(エアビーアンドビー)」のようなマッチングサイトを活用すれば営業活動が少なくて済みます。
「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達パートナーも、自分の空き時間を使って働くことができるため、副業に向いている仕事といえます。
【アルバイト】就業後や休みの日にアルバイトをする。
【フリーランス】マッチングサイトを活用し、ライターや家事代行、配達などの仕事をする。
【ネット販売】ヤフオク!やメルカリなどで商品を売る。
【アフェリエイト】SNSやブログなどで他社の商品を売って手数料をもらう。
【広告収入】SNSやYouTubeなどで登録者を増やして広告収入を得る。
【シェアリングビジネス】空いている部屋を民泊として貸したり、車などを貸して稼ぐ。
副業で収入を得たときに一番考えなければいけないのは、税金のことです。
原則として所得を得ている人は、税金を支払わなければなりません。ここで問題になるのは、副業で得ている金額です。副業で得た所得が年間20万円を超えている場合、確定申告をしていても自分で税金を納めなければなりません。逆をいえば、副業をしていてもその所得が20万円以下ならば、原則として確定申告をする必要がないのです。
なお、確定申告とは、給与や個人事業での収入を計算して正しい税金を納める手続きのことです。
◆売上(収入) ー 必要経費(パソコン代、携帯電話代、発送代、仕入代など)= 年間20万円超 ⇒ 確定申告が必要。20万円以下 ⇒ 確定申告が不要
副業を始めるときに気をつけなければならないことは、現在働いている会社の規則です。会社によっては副業を禁止していることがあるからです。これまで多くの会社では、「業務に支障が生じる」「会社に損害を与える」「会社の信用を落とす」などの理由で、副業を原則禁止にしてきました。しかし、働き方改革により、副業が積極的に推進され、世の中全体で容認される方向に変わりつつあります。それでもまだ副業自体が禁止の会社もあり、副業を許可制にしている会社もあります。違反すると懲戒の対象となり、きびしい処分が下されることもあります。そうならないために、まずは「就業規則」を確認しましょう。終章規則とは、就業時間や休日、退職などの会社の雇用に関するルールが書かれているもので、従業員ならば誰でも見ることができます。
なお、会社に隠れて副業をするのは得策ではありません。副業で収入が発生すると、給与から差し引かれる税金が高くなり、そのことから会社の経理部などに知られてしまうことがあります。
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出典 『図解わかる 個人事業の始め方 2023-2024年版』
本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
イメージ写真 Shutterstock
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