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2020.09.03
【古語クイズ!】

Q「今度の上司はとてもおとなしい人だ」
約1000年前にさかのぼって訳すとどんな意味?

岡本梨奈

古文・漢文講師。
リクルート運営「スタディサプリ」古文・漢文担当。大阪府立千里高校→大阪教育大学・教養学科芸術音楽コースピアノ科卒。新卒で予備校講師となり、映像授業も担当。

 現在、私たちが日常的に使っている言葉の中には、奈良時代や平安時代から用いられている言葉がたくさんあります。

 今も昔も共通して使える単語が多い一方、その単語が意外な意味を併せもつのも、古文単語の興味深いところ。

 

 そこで、いまからざっと約1000年前にタイムスリップ! 次の言葉の意味を当ててみてください。

 

Q 「今度の上司はとてもおとなしい人だ」

 現代語では、口数が少なく控え目で穏やかな性格の人を「おとなしい」と言います。

 その「おとなしい」に似た古語の「おとなし」は、漢字で「大人し」と書き、「大人らしい」がもとの意味です。

 子どもを指して言うときは、「おとなっぽい・大人びている」の意味を表しますが、大人を指す場合は、「思慮分別がある」、「リーダー」の意味です。「大人」であれば、「思慮分別がある」とみなされますね。

 そして、何かプロジェクトなどがあるとき、やはり年配者がリーダーになることが多いでしょう。そんなイメージで覚えると、現代語の「おとなしい」と分けて考えることができるでしょう。

答え

今度の上司はとても思慮分別がある人だ。

覚えておこう!
「おとなし」の現代語訳

①大人びている

②思慮分別がある

③年配で中心となる

 ところで、古語の「おとなし」の対義語は「をさなし」です。漢字で「幼し」と書くのですが、語源は「長(をさ)無し」からできた言葉。「長」は現代でも使うリーダーのことで、この「長」は「おとなし」のなかの、「年配で中心となる」の意味。つまり、「長無し」は、「リーダー」(長=年配で中心となる人)が「いない」(=無し)のです。「をさなし」は「おとなし」の反対語ですね。よって「をさなし」は、「子どもっぽい」の意味で使用するようになりました。

「おとなし」を使ってみよう

●おとなしい女の子が、さかしらな男の子に説教する。

大人びている女の子が、利口ぶった男の子に説教する。

 

★現代語で考えてしまうと「おとなしいのに説教?!」と、何だかおかしな文になってしまいます。古語の「おとなし」は「大人」を思い出しましょう。(さかしら=利口ぶった)

●一番おとなしい人に、有給取得の許可を取る。

一番の中心人物に、有給取得の許可を取る。

 

★現代語の意味で考えてしまうと、相手に有無を言わさず、休暇をもぎ取る勢いを感じてしまいますが、それは勘違い。決定権のある一番重要な人物に許可を得た、ということです。

 いかがでしたか? クイズは当たりましたか。このように、現代でも使う言葉でも、意味が大きく異なっているものが少なくありません。

 意外な意味を知ることで、古文の奥深さを堪能できることでしょう。

※イラスト/上田惣子

※本記事は、下記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

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古文・漢文講師。
リクルート運営「スタディサプリ」古文・漢文担当/『岡本梨奈の1冊読むだけで古文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『岡本梨奈の古文ポラリス1・2』(KADOKAWA)など。
大阪府立千里高校→大阪教育大学・教養学科芸術音楽コースピアノ科卒。新卒で予備校講師となり、映像授業も担当。
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