2023.03.01
井堀利宏先生の

【サクッとわかる経済学 ミニ講座】
③金融政策と経済活動との関係など

 今回は、金融政策と経済活動の関係およびグローバルな視点についてお話します。

 

 中央銀行(日本の場合は日本銀行)では、景気がいいときには金利を上げ、景気の悪いときには金利を下げます。これはなぜかというと、金利を下げると企業や家計がお金を借りるときのコストが安くなりますから、お金が借りやすくなります。

 その結果、企業はたくさん投資をしたい、家計では例えば住宅ローンを組んで家を購入したい、というように需要が増えますので、経済にとってプラスとなります。

 

 このように、不況のときは中央銀行が金利を下げて経済を活性化し、好況になると経済が過熱してインフレがどんどん進んでしまいますから、金利を引き上げてインフレを抑制するという政策をとるわけです。

 

日本の場合は、ずっと経済が低迷しており、景気が悪いため金利を引き下げてきました。それに対し、ヨーロッパやアメリカは、日本ほどには景気の低迷は続いてこなかったので、インフレ気味になっては困るということで、金利を少し引き上げる方向に動きつつあります。

 

 そうなると、アメリカやヨーロッパの金利と日本の金利とに差があるため、アメリカやヨーロッパにお金を預けるほうが得であるということになると、円を売ってドルを買う、という動きが強まり、円の値段が相対的に安くなり、ドルの値段が上がる、ということになりますが、これを「円安」とよびます。

 円安が進むと、外国からモノを買うときに割高になり、輸入するときの値段が上がり、輸入再度からはコストプッシュでインフレに対する圧力が強くなります。

 そこで、ある国の中央銀行が、どのような金融政策を取るか、ということは、国際的にお金が動いている世界では為替レートに影響することになります。その結果、その国のインフレ率に影響をもたらす、というグローバルな影響へと広がるのです。

 そのような意味で、国際的に中央銀行がどのような政策をとるか? ということは、非常に悩ましい問題であるわけです。

 

 そこで、世界中で中央銀行どうしが協調し、同じような金融政策を取った方がいいのでは? という議論がさかんになっています。

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サクッとわかる ビジネス教養 経済学
井堀利宏 監修
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井堀利宏(プロフィールは下記参照)
1952年、岡山県生まれ。政策研究大学院大学名誉教授。東京大学名誉教授。専門は財政学・公共経済学・経済政策。
東京大学経済学部経済学科卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士課程修了(Ph.D取得)。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、同大学教授、同大学院経済学研究科教授を経て2015年同大学名誉教授。同年4月より政策研究大学院大学教授、2017年4月に同特別教授、2022年4月より現職。
著書に『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)、『政治と経済の関係が3時間でわかる教養としての政治経済学』(総合法令出版)『入門経済学』(新世社)など多数。
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