「微生物」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか?見えないもの?食中毒を起こすもの?病気のもと…?あまりいいイメージはないかもしれませんね。
アクネ菌や緑膿菌、ウイルスなど、病気を引き起こすような微生物もたくさんいますが、すべてが私たちにとって害になる存在かというと、そうではありません。
たとえば、「乳酸菌」。その名の通り乳酸を作り出す菌ですが、こちらはヨーグルトやチーズを作るうえで欠かせない、偉大な立役者なのです。「えっ!チーズって菌が作ってるの?」と思われたアナタ。意外にも、私たちが普段口にする食品には、菌など微生物の作用でできるものがたくさんあるんです。そして、それは「発酵食品」と呼ばれています。きっと聞いたことありますよね。
今回は「微生物図鑑」より、発酵食品を作ってくれる微生物と、その働きについて勉強していきましょう!
まずは、微生物の基本から勉強していきましょう。よく耕された畑の土をスプーンですくって、顕微鏡で覗いてみると、そこには100億近い数の微生物がいるのを発見できます。たったスプーン1さじ分の土に100億…想像もできませんよね。そこには、私たちが普段肉眼で見ている動植物の世界とは全く違うスケールの「微生物の世界」があるんです。
ほかにも、空気中のチリやホコリに交じっているもの、人間の皮膚や体内に生息しているもの、海や池で泳いでいるものなど、色々な微生物があらゆる場所で生活しています。
こうした微生物には、細菌、真菌、古細菌、ウイルスといった種類があり、観察するためにはミリメートルより小さい、マイクロメートル(㎛)の世界が見えるような、光学顕微鏡が必要になってきます。また、ウイルスはもっと小さいナノメートル(㎚)の世界をみる電子顕微鏡でなければ観察できません。
「腐敗」というと食べものが腐ってしまうことですね。この「腐敗」とは、食べものに微生物が増殖してしまうことが原因です。
でも、発酵食品の「発酵」も、原理は一緒でこちらも、食べものに微生物が増殖してしまうこと。だから、この二つは基本的には同じ現象なんです。
しかし、「発酵」は人間が意図的に食べものに微生物を増殖させることを指します。つまり、人間が食べられるものが発酵、食べられなければ腐敗と呼ぶわけです。
発酵が起こると、増殖した微生物が食べ物に含まれる栄養分を分解したり、増加させたり、変化させたりします。すると、もとの食べものよりも消化・吸収率が上がったり、風味や栄養分が増すといった変質が起こるというわけです。
それでは、実際にどんな微生物が発酵食品を作っているのか見ていきましょう!
CMやヨーグルト飲料のパッケージなどでよく聞く名前ではないでしょうか。乳酸菌は、糖を分解して大量の乳酸を生み出す乳酸発酵を起こす細菌の総称です。ヨーグルトやチーズなど、乳酸発酵を利用した食品は、古来より食べられていて、人類の食生活をずっと支えてきてくれた微生物なんです。
さわやかな風味を生み出すことから、しょうゆや天然醸造のみそ、ぬか漬けなど日本人になじみ深い食品にも利用されています。現在確認されている乳酸菌はなんと100種類以上!今でも新種が発見されるなど、とても多くの種類がいるんですね。
さて、気になる効果ですが…
●乳酸を生成して大腸のはたらきを活性化させる
●免疫力向上やアレルギー症状をおさえるなど、人間にとっていいことずくめ。健康効果もあっておいしいだなんて、乳酸菌たちに感謝しなければいけませんね。
そんな納豆を作る際、大豆を発酵させるために活躍するのがこの納豆菌。伝統的な製法では、似た大豆を稲藁で包み、約40℃で保温。その稲藁のなかで納豆菌が増殖して、発酵することで納豆が完成します。この発酵の段階で、納豆菌はあのネバネバに含まれるナットウキナーゼやアミノ酸、ビタミンK2などを作り出します。それぞれの働きについては以下のとおりです。
◆こんなに体にいい! 納豆菌の健康効果◆
●ナットウキナーゼ……脳梗塞や心筋梗塞の原因になる血栓を予防するとされる。
●ビタミンK2……骨粗鬆症や動脈硬化を予防する効果が期待されている。
●アミノ酸類……カルシウムなどのミネラルの吸収を促進する。
●納豆菌……有害な腸内細菌をおさえ、乳酸菌などの有用な腸内細菌を増やす。また、抗がん作用や免疫機能を高める作用もあるといわれる。
今回はここまで。少しでも微生物のことを知っていただけたなら幸いです。
さて、今回ご紹介したのは朝ごはんに出てくるような発酵食品と、微生物でしたね。次回は皆さんの大好きな、お酒の発酵に欠かせない「コウジカビ」「酵母」をご紹介します。お楽しみに!
※本記事は、下記出典をもとに、一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/大森)