
2型糖尿病で「寛解」を実現した人の特徴とは? 専門医の西森栄太が語った、3つのタイプと共通する生活習慣
糖尿病は「一度かかれば、一生付き合っていく病気」と思われがちです。
しかし、2型糖尿病(以下:糖尿病)は、必ずしもそうとは限りません。近年、薬を使わずに血糖値を正常化し、その状態を維持する「寛解」を達成する人が実際にいることが分かってきました。
佐久市立国保浅間総合病院の糖尿病センターでセンター長を務める西森栄太医師によると、糖尿病になった背景や寛解にいたる取り組み方は人それぞれですが、寛解した人たちには大きく3つのタイプがあるといいます。
では、それぞれのタイプにはどのような特徴があるのでしょうか。また、糖尿病の寛解を目指し、その状態を維持するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
西森医師の著書『2型糖尿病は寛解する!』(新星出版社)より一部抜粋・再編集して紹介します。
※本記事に掲載している医療・健康情報は、一般的な情報の提供を目的としたものです。具体的な診断や治療については、必ず医療機関を受診し医師にご相談ください。
糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が高くなってしまう病気です。でも、なぜ血糖値が上がるのでしょうか? それは、「インスリン」というホルモンの分泌が不足したり働きが悪くなったりするからです。インスリンは、食べ物から得たエネルギー(ブドウ糖)を細胞に届ける役割を持っています。たとえば、インスリンを「宅配便の配達員」、ブドウ糖を「荷物」、細胞を「家」、そして血管を「道路」だと考えてみましょう。
健康な人の体では、食事をするとインスリンがしっかり働き、ブドウ糖(荷物)を細胞(家)に届けてくれます。ところが、糖尿病では、インスリンの働きが弱くなり、ブドウ糖が血液の中にあふれてしまいます。この状態が続くと、血管にダメージを与えたり、体のいろいろな臓器に負担をかけたりしてしまうのです。先の例えでいうと、配達員が疲れて荷物を宅配することができず、道路に荷物があふれ、あちこちで交通事故が起きているようなものです。
■糖尿病治療の目的は、「全身の血管を守る」こと
糖尿病の寛解が患者さんの長期的な健康にどのような影響を与えるのかを調べた研究によると、寛解を経験した人は、慢性腎臓病(CKD)のリスクが33%減少し、心血管病(CVD)のリスクが40%減少しました。これらの効果は、寛解が長く続くほど大きくなりました。
糖尿病の寛解を目指し、体重を減らすことで、コレステロール値や血圧、脂肪肝を改善することもできます。境界型から動脈硬化は始まります。早期の対策は、動脈硬化の進行をくい止め、合併症のリスクも減らすことにつながります。
【国際的な糖尿病寛解の定義】
(1)ヘモグロビンA1cが6.5%未満(48mmol/mol以下)であること
(2)糖尿病治療薬を使用せずに、この状態が3か月以上維持されていること
※ヘモグロビンA1cの値が信頼できない場合(例:貧血や特定の血液疾患がある場合)は、以下の代替基準が使用されることがある。
・空腹時血糖値126mg/dl(7.0mmol/l)未満・持続血糖モニタリング(CGM)による推定ヘモグロビンA1cが6.5%未満
2021年、アメリカ糖尿病学会(ADA)や欧州糖尿病学会(EASD)などの国際的な専門家グループが新たな「糖尿病寛解」の定義を発表しました。もはや糖尿病は「一生治らない病気」ではありません。
たとえ一度、糖尿病と診断されても、「体重を減らす」ことで糖尿病を発症する前の「健康な体に戻す」ことができるのです。それでは、なぜ「治癒」とは言わず「寛解」というのでしょう。
それは、糖尿病の寛解とは、「糖尿病の症状が消えているが、将来再発する可能性がある」状態だからです。
従来の糖尿病治療は、血糖値が上がらないようにして糖尿病の悪化を防ぐことが目的でした。しかし、今は「寛解」という新しい希望が持てる時代になったのです。
■糖尿病の「リバースボタン」 体重を減らすと何が変わる?
糖尿病の寛解が起こると、まるで「リバースボタン」を押したかのように、体の中で良い変化が始まります。その大きなカギとなるのが「体重減少」です。イギリスのDiRECT(ダイレクト)研究によると、体重を10~15kg減らすことで、肝臓とすい臓に溜まった脂肪が減り、インスリンの働きが劇的に改善することがわかっています。これは、ちょうど「詰まった水道管を掃除する」ようなものです。
たとえば、キッチンのシンクの排水管が油汚れで詰まってしまったら、水がスムーズに流れませんよね。でも、パイプクリーナーで油を取り除けば、スムーズに流れるようになります。糖尿病の体でも、肝臓やすい臓の脂肪が減ることで、インスリンの通り道がスムーズになり、血糖値が正常に戻るのです。
糖尿病になった背景や寛解にいたる取り組み方はさまざまですが、寛解した方たちを大きく分けると次の3つのタイプに整理できます。
(1)肥満を背景に、体重減量を通じて寛解したタイプ
食べ過ぎや間食の習慣が積み重なり、肥満を背景に糖尿病を発症した人たちです。43歳男性は体重112kg、ヘモグロビンA1cが11.4%で糖尿病と診断。野菜を増やし、コンビニ食をやめるなど生活を一新。20kg以上の減量をきっかけに薬を中止し、今も寛解を維持しています。
(2)糖尿病歴が長く薬を使っていたが、生活を根本から見直して寛解したタイプ
60歳以上の人、長く糖尿病薬を使っている人でも、取り組み次第で寛解は可能です。76歳女性は長年薬を飲み続けていましたが、菓子パンや甘い食べ物をやめ、食事を工夫したことで、半年後に薬なしで寛解を達成しました。「前より元気になった」と笑顔で話してくれています。
(3)診断早期で薬を使わず(または短期間使用で)寛解したタイプ
健診などで「糖尿病です」と言われた段階で、すぐに生活を立て直した人たちです。たとえば、61歳男性は、転職をきっかけに運動不足と食べ過ぎが重なり、糖尿病と診断されました。お茶碗2杯食べていたご飯を1杯に減らし、歩く習慣を身につけただけでヘモグロビンA1cは7.2から6.2に大きく改善。薬を一切使わず、寛解を達成しました。
このように、「1 肥満・減量成功型」「2 糖尿病歴長い・薬使用からの寛解型」「3 診断早期・薬なし(短期間のみ薬使用)型」と、患者さんの背景は異なっても、寛解を実現できる道は存在します。あなたにも必ず、自分に合った「寛解への道」が見つかるはずです。
■寛解しやすい人はこんな人
(1)40歳未満
(2)糖尿病と診断されてから1年未満
(3)1年間の減量幅が5%以上
(4)ヘモグロビンA1cが7.0%未満
(5)薬物療法を受けていない(あるいは1剤および短期間使用のみ)
早期の対策が「寛解」のカギです。ですが、糖尿病歴が10年以上、ヘモグロビンA1cが10%以上、70歳以上など、上記の条件にあてはまらない方も寛解しています。糖尿病には「寛解」という希望、「卒業」という道があることを知ってください。
糖尿病が寛解した方々には、共通点もあります。それは、毎日の生活の中で、食事・運動・ストレス対策など自分にできる“小さなこと”を地道に続けたことです。でも、実践するには「コツ」がいります。そこで、糖尿病を寛解し、維持するコツを7つにまとめました。ぜひ、毎日の生活に取り入れてください。
(1)甘い飲み物、お菓子はやめる
砂糖入りのジュースや炭酸飲料は、血糖値を急激に上げてしまいます。まずはこれらをゼロにすることから始めましょう。のどが渇いたら、水、お茶、ブラックコーヒーや炭酸水がおすすめです。どうしてもおなかがすいたときは、血糖値が上がりにくいナッツやチーズ、生野菜などを選びましょう。間食は食事の一部とし、量を決めて摂ります。
(2)毎食、必ず野菜とたんぱく質を摂る
血糖コントロールの味方は、野菜とたんぱく質のセット。野菜は血糖値の上昇をゆるやかにし、たんぱく質は筋肉をつくって代謝を支えます。どちらも毎食に少しずつでも取り入れることが大切。サラダ、具沢山の味噌汁、たんぱく質入りのスープ、卵、豆腐、魚など無理なく工夫しながら続けましょう。
(3)主食(ご飯・パン・麺)は“量を決めて”食べ過ぎない
糖質を完全に抜く必要はありませんが、食べる量を意識することが大切です。「ご飯は小盛り1杯」「パンは食パン8枚切り1枚」「麺は半玉」など、自分にとっての“適量”を見つけましょう。また、食物繊維が豊富なもち麦ご飯や全粒粉パンなどに置き換えるのも効果的です。
(4)意識して身体を動かす
「時間がない」「運動が苦手」という人も大丈夫。まずは“こまめに動く”ことから始めてみましょう。たとえば、
・エレベーターではなく階段を使う
・買い物ついでに遠回りして歩く
・テレビを見ながらスクワットやかかと上げをする
といった、日常の中でできる“小さな運動”を積み重ねることがカギです。
(5)体重を毎日測って記録する
体重は「自分の生活習慣を映す鏡」。毎日決まった時間の測定・記録(グラフ化が望ましい)をルーチンにすることで、小さな変化に早く気づけるようになります。記録にはスマートフォンのアプリが便利です。増えた日があってもOK。「昨日より少しでも良くなろう」と思えることが、継続の力になります。
(6)睡眠をしっかりとる
睡眠不足は、食欲を乱し、インスリンの効きも悪くなります。質の良い睡眠は、ホルモンバランスを整え、血糖値の安定にも、ストレス・マネジメントにもつながる重要な土台です。7時間以上の睡眠を目安に、寝る前のスマートフォンを控える、照明を落とすなど、リラックスできる環境づくりを心がけてみてください。
(7)医療・保健スタッフに相談する
ひとりで悩まず、専門家に話してみることも大切な一歩です。医師、看護師、管理栄養士、保健師などは、あなたの悩みや生活スタイルに合わせて、無理のない方法を一緒に考えてくれます。相談することは「甘え」ではなく、前向きな行動です。
この「7つのコツ」は、どれも今日から始められるものばかりです。大事なのは、「完璧にやる」ことではなく、「やめないで続ける」こと。あなたの一歩が、きっと体と未来を変えてくれます。できることから、気持ちよく、始めていきましょう。
出典 『2型糖尿病は寛解する! 薬なしでヘモグロビンA1cを6.5%未満にする方法』
記事作成 向山邦余

しかし、そうではありません。
最近の研究で糖尿病(2型)と診断された後に「糖尿病でない状態」に戻ることがわかってきたのです。「糖尿病でない状態」とは、薬なしでヘモグロビンA1cの値を6.5未満が3カ月以上になることで、これを「寛解」といいます。
糖尿病は寛解する(治す)ことができる病気になっているのです!
長年、糖尿病患者の治療に携わってきた、糖尿病の専門医である著者が、その経験から得た科学的・医学的根拠に基づいた糖尿病を寛解させるノウハウを、本書に詰め込んでいます。具体的には食事、運動、睡眠、ストレス対策などで、それらによって寛解に導きます。一般的な読者向けに糖尿病を寛解させる方法について、ここまで書かれた本は初めてでしょう。
また、本書には、実際に寛解した10名の症例も掲載していますので、さまざまな症状の方に実践いただける内容になっています。
本書は「糖尿病を根本から治したい。カラダの“芯”から健康になりたい、元気を取り戻したい」と考えている方に、是非とも読んで実践していただきたい本です。
1997年 東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2005年 琉球大学医学部医学科卒業。
沖縄県立中部病院での研修を経て、2008年より沖縄県立南部医療センター・こども医療センター附属粟国診療所に勤務。粟国島(あぐにじま)の島医者としてプライマリ・ケアに従事。2011年から佐久市立国保浅間総合病院に勤務し、糖尿病診療を中心とした地域医療に取り組んでいる。
日本糖尿病学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、 日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医、日本医師会認定産業医。






