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2026.11.02
【KADOKAWA ダ・ヴィンチWeb レビューコーナー】

File No.37 「遅刻」「先延ばし」「マルチタスク不能」…時間管理に悩む人に試してほしい!『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の時間術』【書評】

「いつのまにか締切直前!」「気になることがあって他が手につかない!」「早く準備したのに、遅刻ギリギリでダッシュ!」「頼み事が断れなくて自分の時間がない…」「あとでやろうと思ったら結局忘れた」…こんな困りごとに思い当たる人は、発達障害やグレーゾーンの可能性があるという。いまや小学生の10人に1人は発達障害といわれており、グレーゾーンも含めたらその数はかなりのものだろう。今、この記事を読んでいるアナタにだって思い当たる節があるかもしれない。

 

 そうした発達障害およびグレーゾーン当事者にとって問題なのは、「実生活で(上記のような)困りごとにどう対処していくか」だ。このほど登場した『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の時間術』(中村 郁/新星出版社)は、「時間術」にポイントを絞って実践的なアドバイスをくれる1冊。著者自身が発達障害の当事者で、かつては前述のような困難からバイトも次々にクビになった経験もあるというが、今では子育てをしながらナレーターに声優、講演家、本の著者、そろばんの先生とマルチに活躍中! 一体、どんな秘訣があるのか、本書からいくつかピックアップしてみよう。

マルチではなくシングルタスクが正解!

 人間というのは本来、同時に複数のことを処理できる生き物ではなく、マルチタスクに見えるものの正体はシングルタスクのすばやい切り替えだったりする。残念ながら発達障害の人は同時に複数の情報が入ると脳内の処理が追いつかなくなりフリーズしてしまうので、マルチタスクに向かない人が多い。さて、そんな場合にどうするか?

 

 できればマルチタスクを前提とした環境からは距離をとるのがベストだが、どうしようもなければまず「ちょっと待ってください」と一言発してから自分内のルールで進めること。大事なのは完璧にやろうとしすぎず、「ひとつずつ、順番に、丁寧に」。自分の呼吸を取り戻すことができれば、時間が空回りするのを減らせる。

 

完全に「死んでもいい日」を作る

 楽しいことに夢中になりやすい&自分の疲れにも気が付きにくいから、いつのまにか限界を超えていきなり電源が切れたようにダウン…これも発達障害の特徴のひとつ「過集中」。過集中をやめるのは難しくても、その対処法なら工夫できる。それは「完全に死んでもいい日」(1日パジャマのままでもOK、寝ててもいい、仕事もしなくていい、家事も最低限…のいわゆるダメ日)を、あらかじめスケジュールに入れこんでおくこと。突然動けなくなって時間を奪われるのではなく、自分の意思で休みを選んだほうがずっと生産的だ。

 

とりあえず5分だけやってみる!

 ついつい先延ばしにしてしまうのも発達障害の特徴のひとつ。そんなときは「とりあえず5分だけやる」を実践してみよう。実は人間の脳は作業を始めるとドーパミンが出て集中力が高まり「もっと続けたい」という意欲を生むようにできているという。著者はこの仕組みを利用して「5分だけタイマー」をセット。タイマーが鳴る頃には「今やめると気持ちが悪い」状態になっているという。仕事や勉強だけでなく、洗い物や家での筋トレなど、地道なことに効きそうなテクニックだ。

 

 そのほか「本当の締切の3日前をゴールにする」「タスクを細分化して書き出す」「30分前到着をデフォルトに」などなど、本書には著者が自分の問題解決に効果ありの具体的なテクがいろいろ紹介されている。いずれも苦手を無理に克服するのではなく、自分の特性に合わせた失敗しにくい仕組みをつくる感覚なので、しんどくないのがありがたい。この本をヒントにもっと「本当に大切なことに使う時間」が増やせたらハッピーだろう。

文=荒井理恵

発達障害・グレーゾーンかもしれない人の時間術
中村郁 著(プロフィールは下記参照)
【”普通”じゃない私の弱みを武器に変える62の方法】

時間術というと、無駄をなくすことだったり、効率よく働くことだったりと思われがちです。
でも、発達障害と診断された私にとっては「自分が壊れないための知恵」なんです。
ー本書より

幼いころから注意力散漫で、遅刻や時間管理のミスだらけ。
数々のバイトをクビになりながら、偶然”ナレーター”という天職にたどりつきました。

「もう絶対にクビになりたくない」
その思いから生み出した”普通”じゃない私の時間術。
この時間術のおかげで、ADHDや自閉スペクトラム症を併存している私でも24年間一度も仕事を休むことなく続けられています。(産休を除く)

普通じゃない私でも、普通に毎日仕事に行けたり、普通に子育てができる。
そんな方法をみなさんにお伝えします。
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中村郁(ナカムライク)
ナレーター、声優(株式会社キャラ所属)。注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)併存の診断を受けた発達障害当事者。発達障害の当事者会「ぐちゃぐちゃ頭の活かし方」主催。
学生時代は、ADHD・ASDの特性が災いし、数々のアルバイトをクビになり、あるバイト先の店長からは「社会不適合者」の烙印を押される。「自分にできる仕事などない」と自暴自棄になって就職活動することを放棄するが、偶然が重なりナレーター事務所に所属することに。「もう絶対にクビになりたくない」という強い想いから、発達障害を持ちながらも時間管理のミスをしないために様々な時間術を生み出し、仕事に取り組む。以後、24年間、産休以外で一度も仕事を休んだことがない。
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