親の介護や看病といった問題は、必ずしも親が年齢を重ねていきながら徐々にやってくるものではなく、ある日突然やってくることも多々あります。そしてこのことは、目下、育児に奮闘中のママ・パパにとっても他人事ではありません。
晩婚化・晩産化等を背景に、育児をしながら親の介護も同時に担う「ダブルケア」を行う人口は、平成28年の内閣府男女共同参画局による調査で約25万人もいます(女性約17万人、男性約8万人)。年代的には30歳~40歳代が8割と最も多く、この割合は育児のみを行う者とほぼ同様となっています。
どんな「もしも」が起こりうるのかは誰にも分からないからこそ、「知っておくこと」はとても重要であり、知識を持つことで将来への不安を少なくすることもできます。その時に最善の選択が出来るように、知っておくべきことを今から勉強しておきましょう。
連載第3回目の今回は、親に介護が必要になった時、とても頼りになる「介護保険」のしくみや、サービスの内容についてを解説します。
「まだ自分は大丈夫」と、周囲のサポートでなんとか暮らしていた親も、日常の家事ができなくなったり、認知症の症状が現れ始めたりしたら、介護保険の利用を検討しましょう。介護保険給付対象となるのは65歳以上、もしくは40~64歳で特定疾病(がん末期など)の人です。
65歳になると「介護保険証」が公布されますが、これを持っているだけでは介護サービスを受けることはできません。介護保険を利用するには、親が住んでいる市区町村の窓口もしくは地域包括支援センターへ出向き、「要介護認定」の申請手続きをする必要があります。申請は本人(親)または家族が行うものですが、申請の代行を頼むこともできます。その場合は、市区町村に相談しましょう。しかし、申請すれば、介護保険のサービスを受けられるわけではありません。
市区町村の窓口では、本人(親)の状態を事前に把握するための「チェックリスト」に従った25項目の質問を受けます。その結果、要介護認定が必要と判断されれば、市区町村の職員などが親の自宅(または入院先の病院)を訪問し、心身の状態を確認する「認定調査」が実施されます。
同時に主治医(いない場合は、市区彫塑音の窓口、地域包括支援センターで紹介してもらう)が、心身の状況について意見書を作成。こうした情報をまとめて、コンピューターによる一次判定、介護認定審査会による二次審査を経て、要介護度が決定します。
□介護保険証
□親の印鑑(必要でない市区町村もあります)
□親の本人確認書類(マイナンバーカードなど)
□介護保険要介護・要支援認定申請書(※書式は、市区町村によって異なります。書き方がわからないときは、窓口の人に聞きましょう)
要介護と認定されたら、まずは在宅で介護を続けるのか、それとも施設に入所するのか、家族でしっかりと話し合いましょう。在宅の方が経済的負担は少なくて済みますが、日々の身体的・精神的負担は施設より大きくなります。全体の状況を踏まえて、在宅か施設か判断しましょう。
自宅で暮らし続けるなら、ケアマネジャーを選び、在宅サービスを利用するためのケアプランを作成してもらいます。親が暮らしやすいように、段差をなくしたり、手すりを付けるなどリフォームしたり、介護ベッドを入れたりすることもできます。また、家族の「介護力」がどれほどあるのかを見極めることも大切です。介護はひとりで支え切れるものではありませんので、チーム体制をつくり上げることがポイント。家族やケアマネジャーを交えて相談し、協力者を確保します。
🏠居宅サービス
●訪問介護
●通所介護
●短期入所
●福祉用具購入費の支給
●福祉用具貸与
●地域密着型サービス
●住宅改修
🏢施設サービス
●介護老人福祉施設(要介護3以上)
●介護老人保健施設
●介護療養型医療施設(2024年3月末で廃止予定)
在宅で介護保険サービスを利用する場合、おもな介護サービスは「介護のプロに自宅を訪問してもらう」「本人が施設に通う」「本人が施設に泊まる」などに分けることができます。なかでも介護の中心となるのが、訪問介護サービス。ケアプランに従って、ホームヘルパーが決まった曜日と時間に部屋を訪れ、身体介護や家事を行うので、仕事で不在の家族も安心です。
「施設に通う」サービスで、よく利用されるのが「デイサービス」です。食事や入浴の介助、レクリエーション、リハビリなどを行います。本人が施設で過ごす間、家族は休息をとることができます。「施設に泊まる」サービスでは、「ショートステイ」があります。仕事や冠婚葬祭で家を留守にするときや、体を休めたいときなど、理由を問わず利用できます。ショートステイは、最長で30日まで利用することができます。
ほかにも、「訪問」「通い」「泊まり」を一つの事業所にまとめた「小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。在宅介護サービスには「福祉用具貸与(レンタル)」もあります。日常生活の中をスムーズに送るために必要な車いすや介護ベッドを、原則1割の自己負担で借りることができて、症状の変化により借り換えすることもできます。また、手すりを取り付け、段差の解消などの「住宅改造の給付」も在宅介護サービスの一つに入るので、これらのサービスを必要に応じて上手に利用しましょう。
今回紹介した在宅介護サービスのほかにも、訪問介護やホームヘルパーなど、知っておくと必ず使える知識はたくさんあります。この機会にぜひ知っておくとよいかもしれません。
次回は「介護施設に関するいろいろ」についてご紹介します。
※本記事は、下記出典をもとに一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/室谷)
「親が入院した」という連絡は、ある日、突然やってきます。いざ、というときのために備えておきましょう。