近年の離婚率の高さから見ても、離婚はすでに特殊なことではなく、経済的な面からも、以前と比べれば離婚しやすい社会状況が整ってきたように見えます。しかし、離婚に対するハードルが昔に比べて低くなっているからこそ、離婚という選択肢が自分にとって幸せなのかどうかをじっくり考える必要があるでしょう。離婚は離婚届を出せばそれで済むというものではなく、精神的にも体力的にも想像以上に大変です。
2020年度、婚姻関係について家庭裁判所に申し立てられた調停事件は58,969件。この申し立ての動機を見ると、現代の離婚理由が見えてきます。
夫も妻も、圧倒的に多いのは「性格が合わない」。もともとは「相手の性格が好き」と思って結婚したはずですが、「釣った魚に餌はやらない」とばかりに相手への気遣いを忘れてしまうこともあるでしょう。「強くて頼もしい」と感じていたのが、結婚してからは「自分勝手でわがまま」な人に思えたり、「優しい」性格と思っていたのが「優柔不断」な性格に見えたりと、相手に対し違う見方が芽生えたのかもしれません。生活しているうちに、相手への認識が変わってきたり、価値観や人生観がずれてくる。昔からよくあることですが、現代では、社会的に離婚への許容度が高くなっていることが、離婚件数の増加に拍車をかけているようです。
夫からの理由は「性格が合わない」の件数が突出しているのが特徴的ですが、「精神的に虐待する」「異性関係」「家族親族と折り合いが悪い」と続きます。妻からはやはり「性格が合わない」を筆頭に「生活費を渡さない」「精神的に虐待する」「暴力をふるう」「異性関係」の順にかなりの件数がありますが、最近では「暴力をふるう」という理由はやや減少しています。かわりに、夫、妻とも「精神的に虐待する」という理由が増加傾向にあります。
👨夫からの理由
1位…性格が合わない
2位…精神的に虐待する
3位…異性関係
4位…家族親族と折り合いが悪い
5位…浪費する
6位…性的不調和
7位…暴力をふるう
8位…同居に応じない
9位…家族を捨てて省みない
10位…生活費を渡さない
👩妻からの理由
1位…性格が合わない
2位…生活費を渡さない
3位…精神的に虐待する
4位…暴力をふるう
5位…異性関係
6位…浪費する
7位…家族を捨てて省みない
8位…性的不調和
9位…家族親族と折り合いが悪い
10位…お酒を飲みすぎる
出典『2020年度 司法統計』
なぜ離婚したいと考えたのか、結婚生活で望んでいたことは何だったのか、改善の余地はあるのか。そして離婚したらどのような生活になるのかを、あらかじめ考えておくことが大切です。
そして、離婚する際に必要な財産分与や慰謝料についてはもちろんのこと、子どもの親権や養育費のことなど今後のことについても、きちんとした情報や知識を得て、計画を立てて準備をしておかなければなりません。
子どものいる夫婦が離婚する場合、母親が子どもと一緒に暮らすケースがほとんどです。2016年に行われた離婚した母親への調査によると、母子家庭で一番大変なことの1位は「生活費」でした。
また、元夫からの養育費を「もらっていない」と答えた人は半数以上にものぼっています。子どもがいる場合、離婚の原因が夫婦間の問題だったとしても、離婚後は、子どもを含めた生活のことをよく考えたほうがいいでしょう。
厚生労働省が調査した、2016年度ひとり親世帯調査によると、ひとり親家庭で困っていることとして挙げられたのは、以下の通りでした。
🔹ひとり親家庭で困っていること
生活費…49%
仕事…14%
自分の健康…13%
住居…9%
その他…15%
🔹離婚しても養育費をもらっていますか
もらっていない…60%
もらっている…21%
もらったことはある…14%
不明…5%
離婚で解決する悩みもあれば、離婚で生まれる悩みもあります。
それでもなお、離婚という選択肢を選ぶ方が幸せなのか。相手への愛情はもう全く残っていないのか。相手と自分を見つめ直し、歩み寄る努力をしてみたか。もしかしたら、あなたが幸せになる方法は離婚ではないのかもしれません。
熟考した結果、「離婚」という選択肢しかないと決断したのであれば、離婚に関する法律や手続きを一つずつ学んでいきましょう。
出典『最新オールカラー版 これだけは知っておきたい図解 離婚のための準備と手続き 改訂6版』
本記事は、上記出典を再編集したものです。
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お金、子ども、財産分与の問題、戸籍についてなど、気をつけたい問題点と、解決方法をわかりやすく解説する。
特長
1.離婚についての最新動向(100日禁止ルールの撤廃、養育費の算定表改訂など)を網羅
2.各種データや図解が豊富で、法律知識がない読者にも視覚的にわかりやすい
3.読者が知りたい疑問にピンポイントで回答。さらに、実際の手続きの流れや、相談窓口などの情報もきめ細かく掲載
本書は2019年に刊行した『離婚のための準備と手続き 改訂5版』の内容を更新し、最新版にしたものです。