みなさんは、「経済学」とはどのような学問だと思いますか? 数字ばかりを追う難しい学問だと思う方が多いかもしれません。
私が監修した『サクッとわかるビジネス教養 経済学』にも「経済学とは、幸せへの最短経路緒探すためにある!!」とありますが、経済学は、消費者のみなさんや企業のみなさんが、それぞれ自分の幸せや、自分にとって最適なものは何か? ということを探して行動することの結果として、「すべての方々がハッピーになれるような枠組みを考えること」を基本的な目的としています。
たとえば、家計でいうと消費者のみなさんはいろいろなものをバランスよく消費することで、自分たちの経済的な消費から得られる満足度を高めたいと思いますし、企業の場合でいうと、モノを作って販売することで、利潤を最大化したいわけです。
それぞれの企業や家計は、強制されてモノを売ったり買ったりするのではなく、あくまでも自分の利益を追求することで満足するわけです。
それが結果として社会全体にとってハッピーになるような枠組みを考えること、それが経済学の基本的な発想であり、そのための重要な考え方が「市場(=マーケット)」です。
マーケットを通じて自由にモノを買ったり売ったりすることができ、それが結果として資源の最適な配分となることで、すべての方の経済的満足度が高まるのですが、そのためにはマーケットがうまく機能しなければなりません。
そのための条件は何か? を考えるのが、経済学の基本的な発想で、そのときの大前提は「完全競争市場ならうまくいく」ということなのですが、実際には完全競争主義というものは存在しないので、市場は失敗するわけです。
そのときに政府や日銀がうまく介入することで市場の失敗を是正して、その結果みなさんの幸福度が高まるために何ができるかを考えることが経済学の大きな目的なのです。
テレビや新聞が経済のニュースにあふれているのは、わたしたちの日常が「経済活動」にあふれているから。仕事であろうがプライベートであろうが、わたしたちは生きている限り常に経済の一部を担っているのです。日々のニュースを受け流してしまっているのであれば、「経済学的」な感度がまだまだよくなる証拠でもあります。
一番身近な経済活動である「買い物」、勤め先の「企業活動」や「生存戦略」、国の「経済政策」や「社会保障」、外国との「貿易」etc……経済学についての知識があれば、会社で・日本で・世界で起こっている出来事がどう自分と関連しているのかに気付くことができます。ビジネスパートナーとの何気ない会話も、知識に基づいたものに変わるでしょう。
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「モノの値段はどうやって決まっている?」「円安・円高って?」「GDPで何が分かる?」など、経済学に関する知識をQ&A形式で展開。直感的なイラストと東大名誉教授監修の分かりやすい解説で、経済学が専門外でも全く問題なし!経済学の基本的な知識をサクッと網羅できる一冊です。
東京大学経済学部経済学科卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士課程修了(Ph.D取得)。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、同大学教授、同大学院経済学研究科教授を経て2015年同大学名誉教授。同年4月より政策研究大学院大学教授、2017年4月に同特別教授、2022年4月より現職。
著書に『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)、『政治と経済の関係が3時間でわかる教養としての政治経済学』(総合法令出版)『入門経済学』(新世社)など多数。