2021.09.16

🌕中秋の名月に
【百人一首 秋の歌を楽しもう!】
「ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 
からくれなゐに水くくるとは」

  酷暑続きだった今年の夏。ようやく秋の気配が感じられるようになりました。秋といえばお月見。今年の中秋の名月は9月21日、しかも満月だそうです。

 そこで今回は、中秋の名月によせて、『まんが百人一首事典』のなかから「秋の恋」をテーマにした歌をご紹介します。百人一首についてなじみのない方もぜひこの機会にふれてみてはいかがでしょうか。

🍁百人一首って?

 百人一首とは、すぐれた歌人たちが詠んだ和歌を、一人一首ずつ、百首選んだもの。なかでも、藤原定家(ふじわらのていか)が選んだ小倉百人一首が有名です。

 和歌は、奈良時代には完成したといわれる、短い詩の形です。はじめの五・七・五を「上の句(かみのく)」、後ろの七・七を「下の句(しものく)」と呼びます。詠むテーマは自由で、基本的には「五句三十一字」のリズムで詠むことだけがルールです。

 和歌を数えるときは、1首、2首……とカウントします。

恋の歌と秋の歌がとくに多い

 歌は、8つの部立て(テーマ)に分かれます。100首のうち、半分近い43首が恋の歌です。2番目に多いのが秋の歌で16首あり、雑秋(ぞうのあき)を加えると17首になります。

さっそく詠んでみよう!

ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは

在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)―『古今和歌集』より

🍁意味

 ふしぎなことが当たり前に起きた、遠い昔の神がみの時代にも聞いたことがありません。紅葉が、龍田川の水をあざやかな紅色のしぼり染にするなんて……。

💑解説

紅葉が流れる川をしぼり染めにたとえる

 

 在原業平は、平安時代を代表する歌人で、容姿端麗だったことでも有名です。とても女性にモテたそうで、自由気ままに数かずの女性と恋に落ちました。のちに清和天皇の皇后となる藤原高子(ふじわらのこうし)との恋は、『伊勢物語』のモデルになったといわれます。

 

 「ちはやぶる」は、「神」にかかる枕詞(まくらことば)です。「龍田川」は紅葉の名所として有名な場所。「神代も聞かず」は、「神がみがいた遠い神話の時代でも聞いたことがない」という驚きを表しています。「からくれなゐ」は、あざやかな紅色を、「くくる」はしぼり染めをさします。紅葉の落ち葉が、川を真っ赤に染めるようすを歌っています。

 

 じつはこの歌、かつての恋人であり、皇后となった高子の屋敷に招かれたときに、屏風を見ながら詠んだ歌です。数多くの恋をした業平ですが、高子との恋はかけ落ちを考えたほど本気だったよう。そのためこの歌には、「二人が愛し合った、燃えるような恋を思い出しますね」という、高子だけに伝わるメッセージがこめられているという説もあります。

💛マル秘エピソード

平安時代に朝廷がつくった歴史書に、「業平は美男子でスタイルもよく歌もうまいが、自由奔放」という記述がありました。

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出典 『まんが百人一首事典』

漫画 あおいみつ

本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

 

アイキャッチ画像素材  President KUMA/Shutterstock.com

 

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日本文学研究者、東京大学教授。専門は和歌文学。著書・監修書に『「君の名は。」で古文・和歌の読み方が面白いほどわかる本』KADOKAWA、『超訳百人一首 うた恋い。』メディアファクトリー、『和歌のルール』笠間書院など多数。
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