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2023.02.22

💴【株式投資にも役立つ、決算書の読み方】
~後編~ 上場企業の決算情報がわかる2つの書類とは?

決算書の数字は、株取引の参考になる!

 株式を上場している企業の決算書を、株式投資の判断材料に役立てている人も少なくありません。決算短信や有価証券報告書に含まれている決算書の数字には、将来の株価の動きを占う情報が、たくさんつまっているからです。そこで今回は、『ここだけ読めば決算書はわかる! 2023年版』から、上場会社の決算情報がわかる2つの書類について解説します。

短信は、ダイジェスト版の決算情報

 証券市場に流通して売買取引される株式を発行する会社、つまり上場会社は、誰でも決算内容の情報がとれるように公開されています。それが、決算短信と、有価証券報告書です。

 決算短信(短信)は、証券取引所が適時開示のルールに基づき、上場会社に対して発表(開示)を求めている書類です。

 

 決算短信は、事業年度の終了後に、通期でまとめて作成しますが、そのほかにも、3カ月ごとに作成する、四半期決算短信があります。

 情報の中身は、業績などがダイジェストにまとめられていますが、これらは確定したものではなく、推測が入ったおおまかなものです。ただ、なんといっても速報性が高いので、特に株式投資家にとっては、売り買いの判断材料として重要な情報となっています。

 

 1年通期の決算短信は、毎事業年度終了後、45日以内に提出することが適当であるとされており、そのため3月決算の会社が多いわが国では、4月後半から5月の間に短信が発表されることが多くなっています。

有報は、最終的に確定した決算情報

 有価証券報告書(有報)は、上場会社に対して、金融商品取引法により提出が義務づけられている書類です。

 こちらは短信とは違い、最終的な決算の情報をもとにまとめられた、確定情報です。当然、短信よりもあとに発表され、毎事業年度終了後、3カ月以内に提出しなくてはなりません。3月決算の会社なら、6月に発表されることが多くなっています。

 なお、短信も有報も、それぞれ基本様式が決まっているので、見慣れれば情報を読み取ったり、複数の会社の情報を比べたりするのに便利です。

短信、有報はどこで見られる?

 決算短信は、東京証券取引所ほか各証券取引所が提供する適時開示情報閲覧サービス(TDNet:ティー・ディー・ネット)で見ることができます。また有価証券報告書は、金融庁がサービスで提供しているEDINET(エディネット)で見ることができます。もちろん、短信、有報とも、各会社のホームページ上に掲載されており、閲覧が可能です。

決算書の「素顔」に近づくには?
数字を眺めただけでは本当の意味はわからない

 上場会社の決算書は、決算短信(短信)や有価証券報告書(有報)で、誰でも読むことができます。決算書には「売上高」などの科目と、当期・前期の数字が並んでいますが、決算書を読み解くとは、これら1つひとつの数字が示す意味や内容をつかみとり、その会社のお金の状況がどうなっているかを知ることです。

 

 ただ、数字を眺めただけでは、決算書を読み解くことはできません。そのウラにある実際のビジネスがどのように動いたかを読み解く必要があります。

 例えば、損益計算書には会社の売上高がいくらかは書かれていますが、事業別・部門別の売上状況がどうなっているかまではわかりません。また貸借対照表で、前期よりも流動負債の額が増えていたとして、何が原因でそうなったのかは、数字からだけではわかりません。さらに、どのようなビジネスで儲かったのか、あるいは損失が出てしまったのかといった「ストーリー」をヒモづけてこそ、決算書の数字と実際のビジネスの良し悪しを結びつけることができるのです。

 

 そこで参考にしたいのが、短信なら添付資料の「当期の経営成績・財政状態の概況」、有報なら「企業の概況」「事業の状況」などです。

 

 有報の場合、「企業の概況」には売上高や経常利益のほか、自己資本比率や自己資本利益率といった主要な経営指標の推移が数年間にわたって書かれていますし、「事業の状況」では貸借対照表や損益計算書をもとに、財政状態、経営成績の詳細な分析が、実際のビジネスにあわせて解説されています。

 決算書を読むときは、これらの情報を参考にすることで、決算書の「素顔」が見えてくるものです。

出典『2023年版 ここだけ読めば決算書はわかる!』

本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

アイキャッチ画像 Shutterstock

 

ここだけ読めば決算書はわかる!2023年版
佐々木理恵 著(プロフィールは下記参照)
有名な上場企業の最新の決算書を使って解説。だからこそ、事業の内容と決算書の数字がリンク。数字が現実のものとなり、決算書を読むスキルが身につきます。
本年度は、コロナ渦の厳しい現状を乗りこえようとする企業、アフターコロナを見据えた取り組みをしている好調企業を中心に解説。
具体的には、サンリオ、モスフード、イオンモール、ゲオ、出光興産、凸版印刷、大和ハウス、ヤマト運輸など有名な上場企業です。
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佐々木理恵(ササキマサエ)
税理士。自由が丘産能短期大学・産業能率大学通信教育課程兼任教員。産業能率大学経営学部兼任教員。産業能率大学大学院総合マネジメント研究科税務マネジメントコース兼任教員。日本簿記学会会員。

平成4年以降、中央クーパース・アンド・ライブランド国際税務事務所、エルイーエフコンサルティング等において税務スタッフとして勤務。
平成19 年に佐々木理恵税理士事務所を開業。法人・個人事業主のお客様に向けて、決算書作成、税務申告等の業務サポートを提供。
短大、大学で簿記講師を務め、現在「財務諸表の考え方」をはじめ、「会計学入門」「所得税法の基本」なども担当。

著書に『これから始める人の簿記入門』『これから始める人の経理入門』(いずれも新星出版社)がある。
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