衣の表面はサクッと、中はふわっと、そして具材は衣に包まれてうまみがギュッと凝縮された美味しい天ぷらを揚げるには、どうしたらいいのでしょうか?
家庭で美味しい天ぷらを味わうためには、温度から揚げる順番、分量などいくつか秘訣があります。
ちょっとしたコツでプロ並みの揚げ方ができる基本とは?
京都で200年以上続く老舗料亭「近又」の店主・鵜飼治二さんが刊行した『和食の手解き』(新星出版社)から、天ぷらを美味しく揚げる8つのコツと料亭「近又」の揚げ方を一部抜粋・編集して紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
【コツ1 道具】
てんぷらは油の温度調節が肝心。そのためにも揚げ鍋はある程度深さがある、厚手で大きめの鍋を選びましょう。“温度計”を使い、温度を測ることも大切です。天かすをすくう、“網じゃくし”や、油をきるための“バット”や“網”、かき揚げには“穴じゃくし”も必要です。
【コツ2 油の量】
揚げ物は、具材がしっかり浮かび上がって泳ぐくらいたっぷりの油で揚げること。温度調節や均等に火を入れることなどを考えると、少なめの油での揚げ物はプロでも難しいものです。
【コツ3 油の温度】
てんぷらは170~180℃が適しています。野菜は170℃で、えびなど新鮮な魚介類は180℃が目安です。温度計がない場合は、少しの衣を落としてみます。途中まで沈み、すぐ浮き上がってきたら適温です。
【コツ4 揚げる順番】
野菜→魚介類の順番で揚げましょう。魚介類を先に揚げると脂肪分が溶け出し、油に匂いがついてしまいます。
【コツ5 一度に揚げる分量】
揚げ鍋に入れる分量は表面積の1/2から1/3くらいに。それ以上入ると温度が下がってべちゃっとした仕上がりになります。
【コツ6 引き上げるタイミング】
具材から出る気泡が小さく少なくなり、音も高く静かになってきたときが目安です。
【コツ7 油きり】
揚がったら、鍋の上で一度油きりし、それから網の上に移します。
【コツ8 天かすを取る】
浮いてきた天かすは、油汚れや酸化の原因になるのでこまめに取り除きます。
【材料(2人分)】
えび(殻付き)……4尾
かぼちゃ……60g
しいたけ……2枚
揚げ油……適量
小麦粉……60~65g
冷水……125ml
卵黄……1/3個分
【下準備】
ボウル、水、小麦粉、卵黄は冷蔵庫で冷やしておく。
【1】衣を作る
小麦粉を粉ふるい、またはザルでふるう。
別のボウルに冷水を入れ、卵黄を加えて泡立たないように混ぜる。ふるった小麦粉を少し加えたら数本の菜箸の太い部分を使ってたたくように小麦粉を液体に沈めながらなじませる。粉っぽさがなくなったら再度少量の小麦粉を入れ、同じ作業を繰り返す。決してぐるぐるとかき混ぜないこと。かき混ぜすぎるとグルテンが生まれて衣が粘ってしまう。ある程度合わさったら手でダマをつぶす。
【2】えびの下処理をする
えびは尾の部分を残し、殻をむいて背ワタを取る。尾の先を斜めに切り落としたら尾を開いて包丁の先で汚れをこそげ取る。
腹の面に約1㎝間隔で切り込みを入れ、切り込みを入れた面を下にして、身をまな板にプチプチと音がするまで押しあて、筋を切り離す。こうすることで、揚げたときに身が反らない。
【3】野菜の下処理をする
しいたけは軸を切り落とし、傘の表面に花柄に化粧包丁を入れる。かぼちゃは種を取り除いて5㎜幅に切る。
【4】衣をつけて揚げる
揚げ油を170℃の中温に熱し、先に野菜を【1】の衣にくぐらせて約3分揚げる。しいたけは頭の部分を下にして油に入れると衣がとれにくい。泡の音が小さくなって具が上に浮いてきたらしっかりと油をきりながら引き上げる。
次にえびを180℃の高温で同様に揚げる。
※次の具材を揚げる前に、油の温度を確認する。衣は思っている以上に薄いのでたっぷりつける。油を入れれば余分な衣は逃げて天かすに。
【仕上げ】
塩またはてんつゆと大根おろしで食べる。
出典『京都老舗料亭「近又」和食の手解き』
料理写真 石川奈都子
本記事は、上記出典を再編集したものです。
いつまでも守り続けたい日本の味を、美しい写真とともにご紹介します。
お店で提供される逸品から、毎日食べたいおばんざい、伝統的なおせちまで、近又の真髄を余すことなく丁寧に解説します。
改めて押さえておきたい素材の切り方、魚のさばき方、揚げ物の基本なども掲載。
「近又」七代目又八・鵜飼治二著書。
本書は2015年に刊行した『和のおかずの教科書』に新しいレシピを加え、内容の一部を再編集、判型・タイトルを変えたものです。