ライフ & ホビーライフ & ホビー

2020.10.29
【腸を治す食事術 後編】

「腸を整える食事のポイント」は、じつはここ!
日常的におなかの調子がすぐれない人はチェックしてみて!

著者:江田 証(あかし)
医学博士。江田クリニック院長。
1971年栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科修了。
日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。
米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。
消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。
毎日、全国から来院する患者さんを胃内視鏡・大腸内視鏡で観察し、改善させることを生きがいにしているカリスマ消化器専門医。テレビやラジオ、雑誌などに頻繁に取り上げられ、分かりやすい解説に人気がある。

 前回ご説明したように、一般的な整腸食が合わない原因のひとつとして考えられるのが、過敏性腸症候群と呼ばれる腸の病気です。また、もうひとつの原因として考えられるのが、小腸内細菌増殖症SIBO:Small Intestinal Bacterial Overgrowth)です。近年になって、カプセル内視鏡や小腸内視鏡が開発され、小腸の病気が正しく認識できるようになってわかってきた病気です。

 大腸には100億~1兆個以上の細菌が存在しているのに対し、小腸には通常約1万個しかいません。それが、10倍の10万個以上という爆発的な数字になってしまっているのが、小腸内細菌増殖症という状態です。

 小腸の腸内細菌が増え、そこに「整腸食」が入ってくると、それをエサとしてますます細菌が増殖し、細菌が大量のガスを発生させ、おなかの不調を招くのです。小腸は本来ガスに耐える構造をなしていないので、炎症を起こしたり、小腸の粘膜を傷つけてしまうことで異物を通しやすくなってしまいます。通してはいけない細菌や毒素までも通してしまうと、さまざまな病気にかかりやすくなります。

 

 

 SIBOの症状は過敏性腸症候群とほぼ同じで、過敏性腸症候群と診断された人の84%は、SIBOを合併しているという報告もあります。前編のチェック表で、過敏性腸症候群の疑いがあるとされた人たちは、短鎖脂肪酸をつくりやすい腸内細菌を持っています。短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸)も適量なら腸の健康によい影響を与えるのですが、過剰になると下痢や腹痛などの症状を悪化させることが発表されています。お腹の弱い人たちにとって、「腸内細菌を整える食事」が、ますます症状を悪化させてしまう可能性があるというわけです。

 

 このような診断を受けていなくても、体質的に胃腸の弱い人、もともとお腹の調子をくずしやすい人も多くいます。私の著書『腸を治す食事術』で紹介する食事法は、そんな人たちにこそおすすめしたい食事術なのです。

便秘・下痢・おなかの張りの原因は「吸収されにくい糖質」!

 過敏性腸症候群やSIBOの人に限らず、普段から腸が健康ではないと感じているひとのおなかの不調を引き起こしているのは「吸収されにくい糖質」です。その4種類の糖質は「FODMAP(フォドマップ)」※ と呼ばれる「発酵性のある吸収されにくい4種の糖質」が、腸内で異常に発酵して腸を傷めつけているのです。

(※ FODMAP=「オリゴ糖類(O)」「二糖類(D)」「単糖類(M)」「ポリオール類(糖アルコール)(P)」の4種類の頭文字を並べて、頭に「発酵性(Fermentable)」のFをつけ、「And」でつないだもの)

 

 過敏性腸症候群の人は、「発酵性のある吸収されにくい4種類の糖質」をとると、腸内が酸性に傾きすぎることによって、大腸の右側の動きが悪くなり、ガスがたまり、下痢や腹痛などの症状が悪化してしまいます。敵となる糖質・味方となる糖質を知れば、長年の腸との戦いに勝ったも同然。糖質とは、ごはんやパン、麺類などに豊富に含まれる炭水化物から食物繊維を抜いたものです。糖質にはいろいろな種類がありますが、お腹に悪さをする糖質の総称が「FODMAP(フォドマップ)」です。といっても全てのFODMAPが食べられないかというと、そうではありません。そのなかの1つか2つが敵となりますがそれには個人差があります。比較的吸収できる人から、なかにはまったく吸収できない人もいるほど、FODMAPに対する耐性にはかなり個人差があるのです。

ひと目でわかるFODMAP

【F Fermentable 発酵性の】

 

【O oligosaccharides オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖・フルクタン)】

●ガラクトオリゴ糖(ガラクトースの重合体)

豆類(大豆、ひよこ豆など)、とうもろこし、納豆、豆乳、カシューナッツなどに多く含まれる。

●フルクタン(フルクトースの重合体)

 小麦(パン、うどん、パスタなど)、玉ねぎ、にんにく、にら、柿、桃などに多く含まれる。

 

【D Disaccharides  二糖類】

●乳糖(ラクトース)

 牛乳、ヨーグルト、クリームチーズ、ブルーチーズ、アイスクリームなどに多く含まれる。

 

【M Monosaccharides 単糖類

●果糖(フルクトース)

 りんご、すいか、なし、アスパラガス、はちみつなどに多く含まれる。

 

【And】

 

【P polyols ポリオール(糖アルコール)】

●ソルビトール、マンニトール、キシリトールなど

ソルビトール:とうもろこし、りんご、なし、さくらんぼ、プラム、桃などに多く含まれる。

マンニトール:カリフラワー、さやえんどう、マッシュルーム、しいたけ、さつまいも、すいかなど

 低FODMAP食は発酵性の4種の糖質を避ける食事ですが、FODMAP量を見た目で見分ける規則性はありません。最初はどれがが食べられて、どれが食べられないのか悩むと思いますが、気軽に取り込めるポイントをいくつかお教えします。

【気軽に取り組めるポイント】

 まず、対象となるのは糖質です。肉も魚も卵も食べられます。これらにはFODMAPはひとつも含まれていません。脂肪やオイルも同様です。注意が必要なのは、豆類などの植物性タンパク質が豊富な食品です。豆類にはオリゴ糖(ガラクトオリゴ糖)が豊富に含まれています。

 ほかの問題は、野菜と果物です。ぶどう、いちごは食べられますが、りんご、桃、すいかはNG果物です。キャベツ、ブロッコリー、にんじん、ほうれん草などは食べられますが、玉ねぎ、アスパラガス、カリフラワーなどは避けたい野菜です。まずは、自分が好きなもの、よく食べているものでNGのものを最初に覚えているものを最初におぼえてしまうのがコツです。好きなものが高FODMAP食だったときの注意点などについては、本書に詳しく載っていますので、ぜひ参考にしてみてください。そしてもし、これらを食べておなかが不調になっても、一生食べられないというわけではありません。半年から1年ほどして腸内細菌が変化してくると、少量ならまた食べられるようになることもあります。歳を重ねることで、体質が変化して食べても不調が起こらなくなる場合もケースもありますので、ぜひこの機会に『低・高FODMAP食』を覚えて、実践してみてください。

 

👉『低・高FODMAP食』をもっと詳しく知りたい方はこちら

 

※本記事は、下記出典をもとに再編集したものです。(新星出版社/室谷・向山)

腸を治す食事術
江田証 著(プロフィールは下記参照)
購入はこちら
江田証(エダアカシ)
医学博士。江田クリニック院長。
1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科修了。
日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。
毎日、全国から来院する患者さんを胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしているカリスマ消化器専門医。テレビやラジオ、雑誌などに頻繁に取り上げられ、わかりやすい解説に人気がある。著書に『医者が患者に教えない病気の真実(幻冬舎)』『パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません(さくら舎)』『なんだかよくわからない「お腹の不調」はこの食事で治せる!(PHP研究所)』『小腸を強くすれば病気にならない(インプレス)』『新しい腸の教科書(池田書店)』『腸のトリセツ(学研プラス)』などがある。(書籍刊行当時)
新着記事