1900.09.23
【冷酷な殿様】わしのことをこわがっている者を城に呼べ
「わしがこわいものを城に集めよ」
「はっ、承知いたしました」
しばらくして家来は、殿様をこわがっている民たちを、城に集めた。
「殿のおなりである」
民たちはビクビクしながら頭を下げていた。いかなる理由で城に呼ばれ、殿様に会わされるのか、知らされていなかったのだ。
「みなの者、苦しゅうない。おもてを上げるがよい」
頭を上げると……ニコニコと笑っている殿様の顔があった。
「冷酷な殿様とはウワサにすぎない。それを知ってもらいたくて、呼んだのじゃ」
やさしく語りかける殿様を見て、民たちは安心したのだった。