連載第1回 「すぐにしなければいけない手続き」
大切な人が亡くなったとき。失った悲しみでいっぱいの時でも、しなければならないことが次々に押し寄せてきます。
さまざまな届け出や手続きは、故人の喪もあけないうちに済ませなければならないものも多く、スムーズに済ませたいもの。そこで今回は、『改訂3版 大切な家族が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』から、最低限知っておきたい手続きについて、5回に分けて説明していきます。今回は「すぐにしなければいけない手続き」について説明します。
大切な人が亡くなられた後、すぐにしなければならない手続きはそう多くありません。それを知っているだけでも少しだけほっとしますよね。周囲の人や葬儀社などの助けも借りながら無事に済ませましょう。
まず、届け出が必要なのは「死亡届」と「埋火葬許可申請書」です。必要な場合は「世帯主変更(住民異動届)」も添えて市区町村役場の窓口に提出します。
死亡届の提出期限は7日以内となっていますが、実際はもっと早い提出が必要です。同時に埋火葬許可を申請して、「埋火葬許可証」の交付を受けないと葬儀ができないためです。
世帯主変更の届け出も14日以内が期限ですが、通常は死亡届と同時に提出します。これらの手続きが済めば、当面必要な手続きは国民健康保険や後期高齢者医療など健康保険の「資格喪失届」の提出になります。この間に、今後の納骨、法要などのことも考えておきましょう。
届け出が済んでお通夜・告別式の当日になったら、後々の手続きのためにお金の出と入りを記録しておくことが大切です。
葬儀社に支払う分などについては、後で明細の書類が届けられます。しかし葬儀には、お布施や心付けなど、領収書のない出費も伴うものです。きちんと記録を取っておきましょう。
当日は、領収書のあるものは領収書を保管し、ないものはメモを残しておく程度で構いません。後日、時間のある時に表のような形にまとめておきましょう。葬儀の費用は、後で相続税の計算をするときに相続財産から差し引き、その分の相続税を安くすることができます。お通夜の飲食代やお坊さんへのお布施なども、葬儀費用として相続財産から差し引くことができます。もれなく記録するようにしましょう。
香典には原則として相続税も所得税もかかりません。そのため、香典返しにかかった費用は、相続税の総額から差し引くことはできません。しかし、遺産分割の話し合いなどで香典の総額などが必要になることがあります。
納骨・法要のしかたによっては、必要な手続きが増えたり、他の手続きと時期が重なったりすることがあります。現在では、初七日法要を告別式の日に併せて行い、その後、四十九日、百か日、一周忌を行うのが一般的とされています。ただ最近では、葬儀の日に四十九日の法要まで行うケースもあります。ですから、四十九日までの法要は、葬儀の打ち合わせの時に決めておくことが必要です。
その後は、あまり先の法要まで決めておく必要はありませんが、一周忌くらいまでの期間は、まだ遺産分割協議や相続のいろいろな手続きが続いている可能性があります。法要と、各種の手続きのかねあいも考えて、どの法要を行うか、行わないか、考えておくようにしましょう。
今回ご紹介した手続きややっておいたほうが良いことはすべての人に当てはまると言えます。もちろん手続きを進めてゆくうえでこういう時はどうしたら良いのだろうということが出てくることもあると思います。
少しでもスムーズに進められるよう、今のうちに確認できることは確認しておくと、もしもの時にも最低限やらなくてはならない事がわかって安心かもしれません。
次回は、「少し落ち着いたら最初に確認したいこと」を解説します。
出典『改訂3版 大切な人が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/室谷・向山)
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でも、その後の手続きや届け出は自分でしなければなりません。
じつは、これらの手続きには、結構いろいろなものがあり、手間がかかります。
相続の手続きはもちろんのこと、亡くなられた方の確定申告も、代わりにしなければなりません。
また、健康保険や年金の手続きもあります。
亡くなられた方が持ち家をお持ちなら、世帯主の変更手続きが必要なケースもありますし、光熱費の支払先の変更やNHKの受信料の手続きなども必要です。
これらの中には、手続きや届け出をしなければ、損をしてしまうものが少なくありません。反対に、手続きや届け出をすることで、得するケースもあります。
本書はこれらの手続きや届け出の仕方を、記入例とともに、ていねいに解説しています。
また、これらの手続きをするために必要な書類を、役所などから入手しなければなりません。本書では、これらの入手方法にも触れています。
これらは一般に、税理士、司法書士、社会保険労務士など、何名かのプロに相談しなければなりません。
本書は監修者に、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士の資格を持つ方をむかえています。
懇意にしている税理士や司法書などの専門家がいらっしゃるのでしたら、これらの手続きは彼らにお任せできます。
でも、そのような方々が周囲にいらっしゃらないのでしたら、本書はとても役立つ一冊になります。
※本書は2019年刊行の『新版 大切な家族がなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』を最新の法律や手続きに沿って新しくしたものです。
中央大学法学部法律学科卒。平成17年司法書士登録、平成26年行政書士登録。司法書士・行政書士大曽根佑一事務所代表。街の法律家として、相続発生以前の遺言書等による紛争予防アドバイスから、相続発生後の登記手続・相続財産管理業務に至るまで、相続にまつわる多岐の分野に積極的に取り組む。
中央大学法学部法律学科卒。平成19年税理士登録、税理士法人ゼニックス・コンサルティング社員税理士。近年の高齢化に伴い「亡くなる前」の贈与や相続税の事前対策から、「亡くなった後」の遺産分割、二次相続に至るまで、財産の収益化・コンパクト化を重視した、遺族の暮らしの総合コンサルティングを提供している。