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2025.05.15

「ここを直してほしい」相手の気分を悪くさせずに指摘する方法とは? トラブルを避けるための気づかい

 管理職やリーダー的立場になると、部下に指摘や注意をする機会も増えてきます。また、新しく入社してきた社員の教育を任された方もおのずと指摘せざるを得ない立場になります。

 

 しかし、言い方によっては相手のやる気を失わせ、自分自身の信用も失ってしまうこともあります。

 

 そうならないために、相手の気分を悪くさせずに指摘や注意をする方法はあるのでしょうか?

 

「マナースクールEMI SUNAI」の代表の諏内えみさんが監修した『サクッとわかるビジネス教養 所作と気づかい』(新星出版社)から、指摘や注意を素直に受け入れてもらえる言い方を一部抜粋・編集して紹介します。

指摘するときは言い方の順序が大事

 ねぎらいの言葉もなく、「ここの数字、間違っているよ! 大事な企画書なのに困るじゃないか!」などといきなり間違いを指摘されては、「聞く耳」を持つ気持ちになれません。

 

 言い方で大事なのは順序。最初に「お疲れさま」や「大変な作業でしたね」などねぎらいや感謝などポジティブな言葉からスタートしましょう。

 

 また、最後に「〇〇さんならできると思います」と期待や励ましを伝えます。順序を間違えるとネガティブな気持ちだけが残ってしまうので、最後は必ずポジティブに。

 

【例】
「企画書作成、お疲れさま。よくまとまっていてわかりやすいです」

   ↓

「ただ、1か所数字が××になっていました。私の言い方がわかりにくかったかもしれませんね」

   ↓

「他は完璧だから大丈夫! 何かわからないことがあったら聞いてください」

 

 このように、まずは仕事に対するねぎらいの言葉、出来ばえについてのよい評価を伝えたうえで、間違っている部分を伝えます。自分の非を認めて謝る余裕もほしいところです。そして、最後はポジティブな言葉で終わりにすると、指摘を素直に受け入れられます。

指摘をしたら、最後はポジティブに締める

■ポジ→ネガ→ポジの順序が大事
 

 ミスや不備を指摘するとき、注意を促すときは、十分な配慮が必要です。
 

 指摘の型で大事なのは順序です。ポジティブな言葉でスタートし、「ここを直してほしい」と指摘・注意(ネガティブ)を伝えます。同じ内容でも順序が逆になると印象が全く変わってしまうので注意しましょう。
 

 指摘・注意の後は「〇〇さんならできると思います」と期待や励ましを伝えます。「何かあったらすぐに質問して」と、あなたの味方であると示すフォローも効果的です。

 

■断定・決めつけは避け、相手に振り返りを促す
 

 指摘を伝えるとき、嫌な予感をさせる枕言葉を使うと、相手は身構えてしまいます。また「私の若いときは……」などと、過去の常識を振りかざした指摘をすると、理不尽な非難と捉えられることも。「私の思い違いかもしれませんが」「もしかしたら~では?」と相手が自身を振り返る余白をもたせながら、柔らかく伝えましょう。

相手へのこんな言い方はNG

■嫌なことを予感させる前置きはNG

「ちょっと言いにくいんだけど」「怒っているわけじゃないんだけど」「責めているわけじゃないんだけど」といったような前置きを言われると、相手は「何か嫌なことを言われるんじゃないか」と身構えてしまいます。また、言った人の印象もよくありません。

 

■自分の苦労話や武勇伝を語るのはNG

「最近の若い人は……」「私たちの若いころは……」「昔だったらこんなのは……」などと、自分の経験を話すことで相手の仕事の役に立ててほしいのかもしれませんが、昔と今では状況は異なります。捉え方によっては自慢話、お説教にも聞こえ、相手の心には響きません。

 

■質問の形で指摘するのはNG

「おかしいと思わない?」「そんなこともわからなかったの?」の裏には、「そう思わなかったあなたはだめな人」という意味が隠されています。
 人格を否定しているように受け取れる言葉は、相手を傷つけます。

注意や指摘がパワハラにならないために

■パワハラと言われないためにも感情的な𠮟責は避ける

 人前で「辞めてしまえ!」と叱責する、「お前みたいにデキの悪いやつは……」と人格を否定するなどは、パワハラと捉えられる可能性があります。職場の雰囲気も悪くなりますから、マナーとして避けるのが望ましいです。

 

■「これくらいできて当然」という姿勢はパワハラと紙一重

 職場によって文化や風土はさまざまですが、「こうするべき」「これくらいできて当然」という価値観の押しつけが強いと、「高圧的でストレスの強い職場」になります。

 

「これくらいできて当然」という態度はNG

「これくらいできて当然」という態度はNG

■丁寧な言葉づかいをすることで気持ちが穏やかに

 時間に追われている、精神的なゆとりを失っていると、ついトゲトゲした言葉が口をついて出やすくなります。やはり大事なのは余裕・余白です。そういうときこそ丁寧な言葉で、ゆったりとふるまいましょう。

「型」に添って行動することで自分自身も気落ちが整い、相手を気づかう心の余裕が戻ってくるのです。

 

「型」に添って行動することで自分自身も気持ちが整う

 

■専門知識や経験などの“優位性”を自覚する

 パワハラは、上司だけの課題ではありません。パワハラとは「地位や人間関係などの職場内の“優位性”を背景に、業務上の適切な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」です。 例えば、ITスキルが高い人が、そうでない人を見下すなどもパワハラの一種です。専門的知識がある、経験年数が長いなどの“優位性”がある人ほど、言葉選びには注意が必要です。

出典『サクッとわかるビジネス教養 所作と気づかい』

イラスト 小野寺美恵

所作と気づかい(サクッとわかる ビジネス教養)
諏内えみ 監修
◯人は見た目がすべて!
第一印象を決めるのは「見た目」。身だしなみや表情などの見た目がよくなければ、あなたのよさを伝えることはできません。どんなに相手を思いやる気持ちがあっても、心には「形」がないからです。
相手への敬意や気づかいは「型」でこそ表現できるもの。だからこそ、相手への敬意や気づかいを表す「所作」を身につけると「見た目」が美しくなるだけでなく、相手によい印象を与えることができます。
また、相手やその場にふさわしい所作と気づかいで、気持ちのよい人間関係を築くことができるのは「人」ならではのもの。AIには代替できないビジネススキルです。美しい所作を身につけ、相手への気づかいができることはビジネスでも大きな武器になります。

所作と気づかいのポイントは「1表情、2身だしなみ、3ふるまい、4話し方」の4つです。
本書では、あえてこの4つにしぼり、所作の基本から話し方、メール、電話、訪問、食事などのビジネスシーンを中心に、Q&A方式、オールカラーで解説しました。
この4つを意識するだけで、「見た目」が格段によくなり、周囲からの評価も上がります。

◯イラスト満載で、ひと目で理解、実践できる!
さまざまな場面で必要な所作や話し方、マナーなどを、イラストを多用して紹介しているので、すぐに納得、修正、実践できます。間違えやすいNG例も豊富に収録!

本書なら、自信をもって堂々とふるまえる「スキル」が身につきます!
もっとスマートにふるまいたいと思っている方はもちろん、「デキる」ビジネスパーソンになりたい方、人間関係やコミュニケーションで悩んでいる方に、読んでいただきたい一冊です。

◯本書の構成
 知っていますか? 人は見た目がすべて
 AI時代だからこそ 所作と気づかいが最大の武器になる
 所作と気づかい4カ条
 目指すのはこんな人 所作がきれい 気づかいができる 好感度の高い人

 Chapter 1 第一印象のいい人になる
 Chapter 2 話し方で好感度アップ
 Chapter 3 好印象のメールと電話
 Chapter 4 スマートな訪問・来客応対
 Chapter 5 美しい食べ方で好感度アップ
 Chapter 6 ふだんのふるまいも素敵に
購入はこちら
諏内えみ(スナイエミ)
“結果を出すスクール”として人気の「マナースクールEMI SUNAI」「親子・お受験作法教室」代表。マナー、立ち居振る舞い、会話術、社交術を伝授。キャンセル待ちの出る「テーブルマナー講座」や「婚活戦略講座」「『育ちがいい人』のふるまい・会話レッスン」が好評。2020年より一番売れているマナー本『「育ちがいい人」だけが知っていること』著者。映画・ドラマでの女優男優の所作指導にも定評がある。「世界一受けたい授業」「ぐるナイ」「王様のブランチ」「ホンマでっか!?TV」「あさイチ」などメディア出演や、国内外での講演実績多数。

ベストセラー『「育ちがいい人」だけが知っていること』『もっと!「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)他、『戦略としてのずるいマナー』(かんき出版)、『世界一美しいふるまいとマナー』(高橋書店)、『「ふつうの人」を「品のいい人」に変える一流の言いかえ』(光文社)、『大人の若見えを叶えるしぐさとふるまい』(大和書房)、『知らないと損をする男の礼儀作法』(SBクリエイティブ)、『先生!ダメダメな私を2時間で仕事デキる風にしてください!』(KADOKAWA)など著書多数。
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