前回、脳を元気にする音読のメリットについて解説しましたが、音読のテキストとして紹介した「枕草子」は、誰もが一度は教科書で目にしたことがあるでしょう。じつは、音読そのものに加え、昔懐かしい物に触れることによっても脳は活性化し、認知症の進行予防にもつながるとされています。このことは、1960年代、アメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法「回想法」として知られています。
また、高齢者だけでなく、職場や家庭での責任が増え、知らず知らずのうちに受け身の生活となってストレスが溜まっている現役世代にとって、うつ病予防としても音読はおすすめ。若い方も高齢の方も、是非この機会に試してみてはいかがでしょうか。
本日のテキストは「山のあなた」「春の朝(あした)」
ここでは、助詞を強調した音読をおススメします。脳は名詞と助詞の差を感知しやすいので、「に、が、は、の」などの助詞を名詞よりも大きな声で読むことで、声がはっきりと脳に伝わり、文章が記憶しやすく、理解度が格段にアップします。そこで、掲載している作品の文章には、音読する際の参考にしていただくために、名詞やそれに準じる語句に接続している助詞に●印を付けました。ゆっくりしっかり、発音しながら、繰り返し読むことで、脳全体が活性化する音読ができるようになるでしょう。
📖さっそく読んでみよう!
『山のあなた』
◆山のあなた…山の向こう側
◆涙さしぐみ、かへりきぬ。…(「幸」が見つからない失望で)涙をながしながら、帰ってきた
『春の朝(あした)』
◆日は朝、…日が昇って朝が来た
◆揚雲雀なのりいで…雲雀が鳴きながら飛び上がり
◆神、そらに知ろしめす。…神は天にいらっしゃる。
作品解説
「山のあなた」はドイツの詩人カール・ブッセの、「春の朝(あした)」はイギリスの詩人ロバート・ブラウニングの作品。上田敏の訳詩集『海潮音』で紹介され、日本ではここで紹介する上田の翻訳で愛誦されている。
【上田敏】1874(明治7)~1916(大正5)年…旧幕臣の子として東京で生まれ育ち、東京帝国大学英文科を卒業した詩人にして翻訳家。訳詩集『海潮音』や『牧羊神』で当時のヨーロッパで活躍していた詩人を多数紹介し、後進の文学者たちに多大な影響を与えた。
日本の詩歌に用いられている五音と七音を上手に組み合わせて翻訳されており、西洋の詩でありながら親しみやすいリズムを持っているため、長歌を詠むような気分で音読してもよいでしょう。
出典『脳が元気になる!音読1日1分』
イラスト桜井葉子
本書は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
著書には、『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き「選ばれた才能」を120%活かす方法』(ダイヤモンド社)、『頭がよくなる!寝るまえ1分おんどく366日』(西東社)など多数。