敬語というと、みなさんにとっては普段「当たり前のように使っているもの」という認識が強いのではないでしょうか。しかし、間違ったまま職場などで長年使っていることに気づかず、知らず知らずのうちに恥をかいている…なんていうことも。
そこで今回は、うっかり間違ってしまいがちな敬語を、場面ごとに紹介していきます。
挨拶や報告・連絡・相談。社会人としてできてアタリマエ…なことですが、意外なところに落とし穴が。具体例をいくつかピックアップしてみましょう。
目上の人に対して「なるほど」という表現は好ましくありません。
(例)仕事の相談にのってもらったお礼を言うとき
「なるほど、すごくよくわかりました」
→「どうもありがとうございました。たいへん助かりました」
このような場合は、「どうもありがとうございました」と素直に述べるのが適当です。
<言い換え表現>
「ありがとうございました。さっそく対処いたします」
「すみません」は便利な言葉ですが、ビジネスシーン使ってはなりません。「申し訳ありません」「申し訳ございません」と言い換えます。
(例)仕事のミスをわびるとき
「すみません。うっかりしていました」
→「配慮が足りず、申しわけありません」
やむを得ない事情で、始業時間に間に合わないときは、電話でその理由をくどくど述べるのではなく、およその到着時間を伝えましょう。
(例)始業時間に間に合わないとき
「人身事故で電車が止まってしまったので、出社が少し遅れるみたいです」
→「電車が遅れているため、会社に到着するのが〇時くらいになりそうです」
つい言いがちな「いただいております」。
たとえば担当者が休みの日に取引先が訪ねてきた場合、「○○はお休みをいただいております」と言うと、訪ねてきた相手のおかげで休みがもらえたという表現になってしまいます。「休みをとっております」とシンプルに言えばOKです。
(例)担当者が休みのとき
「担当の○○は、本日、お休みをいただいております」
→「あいにく担当の○○は、本日、休みをとっております」
「うかがう」は謙譲語なので、丁寧に述べても相手の行為に使うことはできません。
(例)相手がすでに聞いていると思うことを告げるとき
「もうおうかがいになっていらっしゃると思いますが…」
→「すでにお聞き及びのこととは存じますが…」
※「存じる」は、「思う」の謙譲語。「ご存じ(ご存知)だ」は、「知っている」の尊敬語です。
お客さまや取引先の方とお話していると、「○○様がおっしゃられるように~」などと、つい口をついて出てしまいませんか?「おっしゃられる」は、「言う」の尊敬語にした上で、さらに尊敬語の「れる・られる」をつけた二重敬語です。シンプルに「おっしゃる」を使いましょう。
(例)上司への報告をお客様に約束するとき
「お客さまがおっしゃられたことは、上司にお伝えします」
→「お客さまがおっしゃったことは、上司に申し伝えます」
※「お伝えする」も「申し伝える」も謙譲語ですが、「お伝えする」を用いると上司を立てたことになってしまいます。一方、「申し伝える」はお客さまを立てる謙譲語なので、敬語の使い方として適切です。
いかがでしたか?普段何気なく使っている敬語ですが、間違いには自分では気づきにくいもの。
敬語を正しく使えるということは、ビジネススキルとしてとても重要です。今一度、改めて見直してみてはいかがでしょうか。
※本記事は、下記出典をもとに、一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/大森)
産業能率短期大学、専修大学卒業。総合商社の常務付秘書、専門学校の秘書科講師を経て、平成3年にクロスポイントを設立。産業能率大学では、敬語をはじめとしたビジネスマナー、秘書検定、サービス検定を担当。また、企業の秘書研修、管理職の作法等を中心に研修講師として活躍。
秘書検定準1級面接試験委員、ビジネス実務マナー検定試験委員、サービス接遇検定運営委員を経て、実務技能検定協会 評議員、秘書・サービス教育学会監事を歴任。