会議で突然意見を求められて頭が真っ白。なんとか意見を口にしても、上司から「もっと簡潔に」と言われる――ビジネスシーンにおける言語化に苦手意識を感じている人は少なくないだろう。だが、言語化スキルを高めようにも何から手をつければいいの? 色々なビジネス本を読んでも全然身につかない… と感じている人も多いのではないだろうか。
そんな悩めるビジネスパーソンにオススメしたいのが『頭がいい人は身につけている言語化トレーニング』(横川裕之/新星出版社)。豊富なQ & Aと実践的なワークを通して、言語化スキルを鍛えることができる1冊だ。
言語化とは、文字通り、「言葉にすること」。「頭の中のモヤモヤを言葉にする」「相手に伝わりやすい言葉にする」「瞬時に思考や意見を言葉にする」といったようにいくつかの段階はあるが、「できない」というのは思い込みで誰も自然に行っていることだと、本書の著者で思考現実化コーチの横川裕之さんは語る。多くの人は気の置けない友人との会話では言葉がスルスルと出てくるし、好きなものの話ならば時間を忘れて熱く語れるのではないだろうか。
では、どうしてビジネスシーンでは言いたいことを上手く言葉にできないのかといえば、それはそこに「完璧な意見を言わなければならない」というプレッシャーや「これを言ったら、どう思われるだろう」という他者への過剰な配慮があるからだ。そこで、この本では、「言語化ができない」という思い込みをなくし、「まずは30点でいいから、とにかく言葉にしてみる」というマインドセットを身につける。そして、さまざまな思考法を、具体的なトレーニングとともに実践していくのだ。
言語化スキルを身につけるためにはアウトプットを重ねることが大切だという。まずは頭の中にある情報を文字に書き起こすことが重要だと横川さんは語る。もっとも簡単なトレーニングは、1日5分、「本日の仕事の検証」と「明日の仕事の整理」を書き出すというもの。この特訓でビジネスに関して言葉にすることに慣れよう。
明確なことを言語化できるようになったら、今度は頭の中でぼんやり思い描いたものの言語化。たとえば、「10年後に自分がなりたいイメージ」を、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の5W1Hで整理する。
これもできたら、さらには、全く答えが浮かばない問いへの対処法。たとえば、企画に対する意見が思い浮かばない時は、「いいと思う」など仮の意見を定め、「なぜ?」「たとえば?」と問いかけていくフォローアップクエスチョンが効果的。それでも何も浮かばない時は、「メリットは?」「デメリットは?」と考えてみたり、「その前は?」「その後は?」と過去や未来を考えてみたり、「似ている点」「異なる点」などと他と比較してみたり。このように、この本ではあらゆる状況にあわせた言語化の方法を教えてくれる。ひとつの方法で上手くいかなくても、また別の方法を教えてくれるからありがたい。
頭の中のモヤモヤを言葉にすることに慣れてきたら、今度は相手に伝わりやすい言葉にする方法を学んでいこう。身の回りで起きたビジネスのトラブルや問題をまとめるにはどうしたらいいか。
上司に「今期取り組みたいことを1on1までに考えて」と言われた時、現在の業務に尽力し、営業先も開拓したいことを明確に伝えるためにはどうするか。お菓子メーカーの開発担当として「低脂肪高タンパクの和スイーツ」を提案する時、どう説明するか――本書には、たくさんのワークがあり、それを起点に言語化の方法を身につけられるのがいい。
話し言葉は1文を40〜50字程度」など普段意識していなかった視点も学ぶことができ、また数字やオノマトペで伝わりやすさを高める方法について触れられているから、プレゼンなどでもすぐに使えそうだ。
大切なのは、「完璧な言語化はない」というマインドセットと、日々のトレーニング。言語化スキルを高める方法が明確なので、会議などで「どう思う?」と急に意見を求められても即応できる言語化スキルを無理なく身につけられるだろう。もう「伝わらない」と悩む必要はない。実践型のこの1冊であなたも言語化スキルを鍛えてみませんか。
文=アサトーミナミ

・ビジネス書にありがちな「読んだけど何も変わらない」「結局何なのか覚えてない」「最後まで読めなかった」という読後感ではなく、ゴールは「ビジネススキルが身についた」
・ビジネススキルを身につけるため、「実践的な問題を解きながら読む」形式で展開
テーマはビジネススキルとしてはもちろん、深く思考するために必須である「言語化」
1章「言語化とは」【必要なマインドセット】
<言語化の定義と心構え>
友達と趣味の話はできる→つまり言語化できている。できないという思いをなくし、「まずは30点でいい」というマインドセットを身につける
2章「自分の無意識を言語化」【アイデア構築】
<自分1人で考えを掘り起こして具体化>
ビジネスシーンにおいて、「相手に伝わる」「有効なアイデアを出す」というレベルではなく、間違えていてもいいので、自分の頭にある考えを掘り起こして言葉にするための方法やメソッドを紹介
3章「相手に伝わる言語化」【会議、プレゼンテーション】
<相手にとってわかりやすい伝え方>
ここから、「相手」を考えて行う言語化を紹介。
ある程度考えてから行うプレゼンテーションや会議での発言で使える言語化のメソッドを掲載
4章「瞬間的な言語化」【会議、ブレスト】
<会議などで意見を求められた際のその場での言語化 >
ブレストや日常業務などで「どう思う?」と急に意見を求められた際のメソッドを紹介
5章「言語化がうまくいく環境」【マネジメント】
会議のファシリテーターなどの立場での言語化しやすい空気作り>
誰しも評価を下げたくないという思いがあるから、どんな発言も受け入れて、心理的安全性を高める
早稲田大学卒業後、一部上場ICT企業、外資系生命保険会社を経て独立。「思考を文字化すると現実化する」というコンセプトの「文字化メソッド」を開発し、オンラインスクール『文字化合宿』で提供。思考現実化コーチ。著書に『思考を現実化する「ねるまえ」ノート』(2021)、『人も仕事もお金も引き寄せる すごい自己紹介』(2020)、『思考は文字化すると現実化する』(2020)。










