電話は便利なビジネスツールですが、最初のうちは慣れなくて慌ててしまうのも当たり前。「知らない人からの突然の電話が怖い」と、苦手意識を持っている人は少なくありません。
しかし、電話はビジネスに必須。電話応対をラクにこなせるようになれば、仕事がスムーズに進み、ストレスも減らせます。
電話が苦手……そうした人に寄り添い、アドバイスを続けているのが、人財育成コンサルタントの北條久美子さんです。
電話応対での声や話し方は、会社の雰囲気を印象づける「会社の顔」のようなもの。ていねいで明るい印象を与えるためにマナーが必要です。
そのためにはどうしたらいいのか? 「就業時間中は、常に会社の代表という意識を持って電話をすることが大切」という北條さん監修の書籍、『どんなに苦手でもうまくいく電話応対』より、頼れる人だという印象を持ってもらえるような電話対応を紹介します。
連絡は基本的に電話のみ、という世代もいれば、ほとんどメールで済ませる世代も。また、個人情報を取り扱っている業種は情報漏洩防止の観点から電話をメインに使うこともあります。
自分にとっては当たり前の連絡ツールでも、相手にとっては不便に感じることもあります。電話が当たり前の世代が相手なら、まずは電話で連絡してみるなど、相手によって使い分けることが大切です。
【20代】生まれた時からメールというツールが存在していたため、電話よりメールのほうが身近。なるべく電話を使いたくない人も。
【30~40代】メールももちろん使いこなしますが、急ぎの案件など、場合によっては電話をかけて直接伝えるほうが安心してもらえます。
【50~60代】メールも使いますが、文章だけだとそっけない印象を抱いてしまうことも。電話で直接話したほうが好印象を持たれます。
【60代以降】連絡ツールといえば電話の世代。メールはあまり使わない人もいるため、最初は電話連絡がベター。
最初は苦手でも、毎日のように電話応対をしていると、次第に慣れてスムーズなやりとりができるようになってくるでしょう。それはとてもよいことなのですが、敬語がくずれてきたり、声が暗くなったり、早口になったりすることがあるので要注意。気のゆるみからくる横着な態度は、相手に不快感を与えてしまいます。ビジネスの場だということを意識して、ほどよい緊張感を持ちましょう。
とくに、よく電話をする相手には親しみが生まれ、マナーがくずれがちです。よい関係性を長く築いていくためにも、「親しき仲にも礼儀あり」を忘れないようにします。また、仕事の基盤である「ホウ・レン・ソウ」は電話応対でも大切。連絡事項は誤解のないように伝え、電話内容によっては上司に報告や相談をすることで、仕事のキャリアを積んでいきましょう。
無意識に使っている口グセは、多用することでイメージが悪くなります。正しい言葉づかいを意識し、適切に使えるようにしましょう。
「すみません」…謝る場ではないのに「すみません」と言って場つなぎをするように使っていませんか。本当に謝るときに、謝罪の気持ちが伝わりにくくなるので、多用しないようにしましょう。また、「すみません」と言われると、相手が悪いことをした気分になってしまうことも。
「させていただく」…「〇〇させていただく」という表現は、適切に使う分には構いませんが、紛らわしい表現になることも。例えば何かを送る場合は「〇〇をお送りさせていただきます」よりも「お送りいたします」のほうがすっきりとしてわかりやすいでしょう。
「大丈夫です」…何か質問されたときに、返答として「大丈夫です」と言うと、何が大丈夫なのか相手がわかりにくく、不親切です。誘いを断る場合も「大丈夫」ではわかりにくいもの。「今回は遠慮します」など、相手にはっきりわかる表現を使うようにしましょう。
【最後まで言い切る】
「〇〇ができればと…」「そんな感じで…」と、語尾がはっきりしないと、察してほしいような言い方になり、相手が困惑します。失礼な印象を与えてしまうので、「〇〇していただきたいです」など、はっきりと最後まで言い切るようにしましょう。
【フレーズにこだわりすぎない】
電話応対のマナーにとらわれすぎて、定型文で答えてばかりいると、ぎこちない印象を与えます。少し慣れてきたら、相づちにバリエーションをつけたり、同じ意味でも言葉を言い換えたりしてみましょう。会話がよりスムーズになります。
【挨拶を省かない】
仕事でよく連絡をとり、親しい関係になってくると「お世話になっております」という挨拶を省いてしまうというケースも。社内の人との電話でも、「お疲れ様です」など、挨拶はしっかりとするのがマナーです。
【敬語はくずしすぎない】
入社当初は敬語に気をつけていても、気がゆるむと敬語がおざなりになりがち。また、若者言葉や間違った敬語などを使ってしまうこともあるので、慣れてきたときこそ、正しい敬語をより意識してみるとよいでしょう。
【情報の扱いに気をつける】
まだ発表してはいけない情報や、他社を持ち出した噂話、社内で起こっているトラブルなどは、禁止と言われていなくても話してはいけません。とくに外出しているときに携帯電話で詳しい業務の話をするのはタブーなので、注意しましょう。
【相づちのバリエーション】
相づちは、電話応対中に「あなたの話に関心を持っています」「聞いています」ということをあらわす大切な表現です。何気なく使っていると相手に不快感を与えることもあるので、意識して使うようにすると電話応対はより上達します。
例えば、「はい」や「ええ」という相づちは、話の間にタイミングよく使うのは効果的ですが、「はい、はい、はい」と連続で言ったり、いつも「はい」しか使わなかったりすると、相手の話を馬鹿にしているような印象を与えかねません。真剣に話を聞いていないのではないかと、相手を不安にさせてしまうこともあります。
また、相づちのバリエーションとして使いがちなのが、「なるほど」という言葉。相手の話に納得する場合に使う表現ですが、上から目線の表現なので、目上の人に使うと失礼にあたることもあります。「そういうことですね」というひと言も、相手の話をひとまとめにしてしまう表現で、相手を不快にさせてしまうことがあります。「おっしゃる通りです」「そうなんですね」などいくつかの言葉を覚えて使い分けるようにしましょう。また、同じ言葉でも、了承したことを伝える時はやや強く、共感を示すときは余韻を残すなど、声色や抑揚で表現を増やすのも有効なテクニックです。
【軽い世間話ができると好感度アップ】
ビジネスの電話では、基本的に用件のみを話すことが多いですが、会話の流れから軽い世間話を振られることもあります。ビジネスという場だということを踏まえて、空気を悪くせず、心地よい距離感で会話ができれば好感を持ってもらいやすくなります。電話応対に慣れてきたら、さらに習得したいテクニックです。
会話では、プライベートなことを聞きすぎない、相手の話をよく聞く、短く切り上げる、の3つが大切です。話題によっては、相手が答えづらかったり、不快な思いをすることがあるので、季節、天気、趣味、出身地、ニュース、旅、食事など、無難なテーマを選びましょう。「最近、忙しいですか」など労うような一言を添えるのもおすすめです。
立場によって意見がさまざまでぶつかることがあるテーマ(政治や思想、人の悪口、具体的な私生活、容姿や年齢についてなど)は、世間話では避けるようにします。逆に相手にそのような話題を振られたときには、あまり具体的に話さず、さりげなく避けるようにしましょう。
電話は直接相手と話せるので、すぐに連絡をとりたいときや、相手の気持ちを直に確認したいときなどに便利です。それに対して、メールは場所や時間を選ばずに情報を共有できるツールとして、ビジネスでは今や必須の連絡手段となっています。
電話とメールはどちらが上ということはなく、相手の働き方や、タイミングに応じてうまく使い分けられるようになるのが大切です。
例えば、何かを念のために確認する場合、急ぎではないのに電話をかけると、相手の時間を奪ってしまいかえって迷惑になることもあるのでメールのほうが適しています。
逆に、急いで確認すべき場合、メールでは返事をもらうまでに時間がかかったり、文面だけでは真意がわからずにモヤモヤした気持ちになるということもあります。
メールの利点は、①相手の都合のよい時間に対応してもらえること、②口頭では複雑になる説明を文章でわかりやすく伝えられること、③記録として残せるので言った言わないというトラブルが起こりづらいということです。
ただし、無機質な文面になると相手に冷たい印象を与えてしまうので注意が必要。このように利点と欠点を意識して使うことで、ビジネスの効率がよくなり、相手に安心感を与えることができます。タイミングやわかりやすさを考慮して使い分けましょう。
出典『どんなに苦手でもうまくいく電話応対』
イラスト ひらのんさ
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
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現在は多数の企業や大学などで年間約2500人のマナーやコミュニケーション、キャリアのセミナーを行う人財育成のプロフェッショナルとして活躍中。
著書に『ビジネスマナーの解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『図解 仕事の基本 社会人1年生大全』(講談社)など多数。