
「人生100年時代」と言われて久しいですが、どうすればいつまでも若々しくいられるのでしょう。
糖尿病・アンチエイジング専門医の牧田善二医師はこう言います。
「日本人の平均寿命は男性で81.09年、女性は87.14年(厚生労省・2024年)と世界でもトップを誇り、超高齢化社会を迎えています。私が生まれた1951年当時の日本人男性の平均寿命は61歳でしたから、その頃に比べて20年も延びていることになります。多くの人が長生きできるようになりましたが、そうなると次に目を向けるのが、病気にならず、元気に過ごしたい、心身をいつまでも若々しく保ち、老化に負けない人生を送りたいという願いではないでしょうか」
では、どのような食生活を送れば、この願いが叶うのでしょうか。牧田医師が提唱する食事のコツを、『脳と体が老けない人の食べ方』(新星出版社刊)から紹介します。
AGEとは、「Advanced Glycation End Products」の頭文字を取ったもので、日本語では「終末糖化産物(しゅうまつとうかさんぶつ)」と呼ばれます。簡単に言えば、糖質とタンバク質が結びついてできる物質で、老化を招く“人類最大の敵”と言っても過言ではありません。
AGEは1900年代に入ってから発見された物質で、一般の人にはまだあまり知られていません。
AGEという言葉を耳にしたことはあっても、なぜAGEが老化を招くのか、どうすればAGEがもたらす害を防ぐことができるのかを詳しく知る人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
■人の老化はなぜ起きるのか? 老化を招き、寿命を短くするAGE
AGEを世界で初めて発見したのは、フランスの科学者のルイ・カミーユ・マイヤール博士です。1912年のことでした。
マイヤールは、タンパク質を構成する「アミノ酸」と糖質を一緒に加熱すると、褐色になり、AGEが発生することを発見しました。
パンケーキ、食パン、焼きおにぎり、お好み焼き、たこ焼き……。タンパク質と糖質を含むものを加熱したときには褐色に色づき(コゲ)ますが、そのなかにはAGEが大量に発生しています。
おいしいカレーやハンバーグをつくるために、玉ねぎをじっくりと炒めてキツネ色にしますが、これらにもAGEが大量に含まれているのです。
世界的には、このコゲがつく反応を「メイラード反応」と呼んでいます。これは発見者の名前マイヤールの英語読みが「メイラード」だからです。
メイラード反応はタンパク質と糖質を同時に加熱することで起こります。同じコゲでも、プリンのカラメルのように糖質だけを加熱したものにAGEは発生しません。ただ、体内に入った糖分はAGEの元になります。
茶色いおいしいものの多くにメイラード反応が起こっていて、それに含まれるAGEが老化を加速させ、ひいては病気を招くのですから注意が必要なのです。
■AGEがタンパク質を変性させ、細胞の老化が進む
タンパク質(アミノ酸)は、体の細胞をつくる材料で、細胞は筋肉や脂肪、皮膚、骨、血管など、あらゆる体のパーツを構成するベースです。
また、糖質(ブドウ糖)は、生命を維持するための大切なエネルギー源で、食事で摂ると消化吸収され血液に乗って全身の細胞に届けられます。
糖質を摂り過ぎている人は、体を動かしたり、脳を使って考えたり、食べ物を消化したり、呼吸したりするといった、生命活動に使われる以上の糖質を体内に入れているため、糖質(ブドウ糖)が大量に余ってしまいます。
余った糖質は、体のいたるところに届けられて、体中で糖とタンパク質の結びつく「メイラード反応」が起こります。体内は、炒める・煮るなどの調理の温度と比べると、それほど高温ではありませんが、それでもゆっくりとメイラード反応が起こり、AGEがつくられてしまい、その結果、AGEが全身の細胞や組織に少しずつたまっていくのです。
AGEが細胞や組織に蓄積するとタンパク質が変性してしまい、もともと持っている機能が低下してしまいます。変性したタンバク質は元に戻ることはなく、体外に排出もされにくいため、さらに体に蓄積されてしまいます。
変性したタンパク質が増えると、それだけ細胞の機能は低下します。やがてさまざまなところの機能の低下を招き、老化を加速することになります。
例えば、シミ・シワが増える、目が悪くなる、骨がもろくなるといった老化現象を促していきます。また、もの忘れが多くなる、新しいことを覚えにくくなるなど、脳に関する老化も進みます。
そして、さらに老化が進行すると病気や認知症になってしまうのです。実際、体内のAGEが多いと老化の進行が速く、寿命が短くなると報告されていて、AGEは老化の最大要因と言われています。
■体内のAGEを増やさないためには血糖値を上げないことが第一
AGEはタンパク質と糖が結びつくことで発生する物質です。体を構成する細胞や臓器はタンパク質からできていますから、血液中の糖が増えるとそれだけAGEがたくさん発生することになります。
体内でつくられるAGEの量は、「血糖値の高さ」と「高血糖状態が続く時間」で決まります。私たちの脳や体を老化させる黒幕であるAGEを増やす、もっとも大きな要因は食後に高血糖状態(血液中に血糖[ブドウ糖]が多い状態)が続くことと言ってもいいでしょう。
若々しい脳、若々しい体を維持するためには、食事による血糖値の上昇をできるだけ避けることが、とても重要なのです。
■食事の影響を大きく受ける血糖値
「血糖値」とは血液中のブドウ糖の量のことです。ブドウ糖とは糖の一種で、私たちが生きていくためのエネルギー源となる重要な栄養素です。
生命活動を維持するために必要不可欠なブドウ糖は、ごはんやパンや麺、いも類や根菜類などの炭水化物や、甘いお菓子や甘い飲み物に含まれる砂糖などが腸で分解されるとブドウ糖となって吸収され、血液へと送られます。
血液へと送られたブドウ糖は全身の細胞に運ばれて、生命活動を維持するためのエネルギー源になります。
このように糖は生きていくうえで欠かせないものではありますが、使いきれないほどあるとAGEを増やしてしまいます。
現代の日本人には、使いきれないほどの糖を摂り入れている“高血糖状態”の人が多く、ここ30年ほどで糖尿病(血糖値が高い状態が続く病気)の患者数は爆発的に増えているのはその証でしょう。
食事が関係している2型糖尿病の患者数は2000万人を超え、なんと日本人の6人に1人が「糖尿病が強く疑われるかその予備軍」と言われています。
さらに、高血糖と指摘されていなくても、年齢を重ねると食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖」になりやすいことがわかっています。
食事による血糖値の上昇はAGEを増やし、私たちの健康を書する要因となっているのですから、血糖値を上げない食事を心がけることは、とても理にかなっています。
ちなみに、食後高血糖の直後に、急速に血糖値が下がるケースもあり、それが「血糖値スパイク」のひとつです。
高血糖がよくないことは明らかなのですが、日本人には「主食を必ず食べないといけない」という思い込みがあるので、糖質の摂取量を減らすことに抵抗がある人が少なからずいます。
何度も言いますが、糖質の摂取量を減らしても何の問題もありません。私たちの体には血糖値を一定に保つ仕組みかきちんと備わっています。糖質を減らしたとしても、低血糖に陥って倒れるなどという心配はないのです。飢餓に対応する能力が備わっているので心配ありません。
ですから、血糖値を上げない食べ方を心がけてください。
そして、血糖値は食事内容で大きく変わります。血糖値を上げる食べ物を控えることで、高血糖状態を避けることはできます。
いつまでも見た目も体のなかも脳も若々しく過ごしたいのでしたら、次から紹介する「血糖値を上げない食べ方」を今すぐ実践しましょう。
【血糖値を上げない】
糖質や甘いものは血糖値を上げます。これらを減らすことで血糖値の上昇を抑えます。
・おやつは加工の少ないものを、果物は少量を朝食後に食べましょう。
・ごはん(米)やパン、麺のような主食は量を減らしましょう。
・食後すぐ歩くと血糖値の上昇を抑えられます。
・よく噛んで、ゆっくり食べると血糖値の上昇がゆるやかになります。
【AGEを入れない】
食べ物自体にAGEが含まれています。高温で調理するとAGE含有量が増えます。
・刺身や生野菜のような生で食べられるものはAGEが少ないことが多いです。
・高温で長時間調理するとAGE量が増えます。炒めるよりゆでるほうが低温なので、AGEを抑えられます。
・魚より肉のほうがAGE量が多いです。
・お酢やレモン果汁で漬けるとAGEが減ります。
【抗糖化の食べ物を摂ろう】
食べ物には糖化を抑制したり、老化を予防する効果がある栄養素を含むものがあります。
・ビタミンB1やB6、B12は老化予防に特におすすめです。
・抗酸化作用の強いビタミンA、C、Eは、老化予防に必須です。
・EPA、DHAには動脈硬化予防をはじめ、老化を防止する働きがあります。
・ワインや大豆、しょうが、お茶などには、ポリフェノールなどの老化予防によい栄養素が多いです。
AGEをためないために、食事で気をつけることはたくさんあります。あり過ぎて、すべてを実践することは難しいほどです。また、こまかく考えると、どちらを優先させればいいのかわからなくなることもあるでしょう。
すべてを守って実践するのが理想でしょうが、AGEはほとんどの食べ物に含まれていますし、おいしく食べるには加熱調理が必要です。血糖値を上げない食事を続けることも、理論的には可能でも、実際には難しいでしょう。
理想の食事にこだわりすぎるとストレスがたまり、かえって老化を速めてしまいます。糖質をどのくらい制限すればいいのか、AGEはどれくらい減らせばいいのかなど目安を聞かれることも多いのですが、基準は人によって違います。まずは自分の体質に合わせて、何を優先させるのかを決めましょう。
■自分の体質に合わせて食事を調整しよう
例えば、肉類は糖質は低いのですが含まれているAGEは多めです。バンやごはんはその逆で糖質は多く、AGEの含有量は少なめです。
AGEが多く含まれているものと、糖質が多いもののどちらを避けたほうがいいかと言えば、私はまずは糖質制限を優先して適正体重を保つことをおすすめします。適正体重を保てている人は、糖質はあまり気にせず、AGE含有量の少ない食品を、AGEを増やさない調理法で食べるといいでしょう。
■太っている人や血糖値が高い人はまず糖質制限
太っている人や血糖値が高い人は、それだけでAGEの害が大きくなるので、まずは糖質制限を実践して、適正な体重に戻すことを目標にしましょう。
糖質を制限しても、私たちの体は体内にあるタンバク質や脂肪から糖をつくり出すので、低血糖に陥ることはありません。特に、体脂肪をたっぷりため込んでいる人はそれがエネルギー源として使われるだけなのです。理論上は、体内に体脂肪がある限り、どれだけ糖質を制限しても問題ないと言えます。
もちろん、制限し過ぎてストレスになるのはよくありません。ストレスにならない程度に糖質の摂取量を減らしましょう。
■脂質に異常がある人は脂質やタンパク質の種類に注意
コレステロールの数値に異常がある人は、動脈硬化のリスクが高いので、脂質の種類や摂取量に気をつける必要があります。
基本的には肉より魚を選びましょう。植物性タンパク質である大豆製品もおすすめです。野菜をたっぷり摂ることも大切です。
中性脂肪が高いと指摘された人は、糖質を制限しましょう。血液中に使いきれなかった血糖は脂肪として体内に蓄積されるため、血糖値が高い状態が続くと中性脂肪も高くなります。逆に、糖質を制限すると、中性脂肪も自然と減ります。LDL(悪玉)コレステロールが酸化すると動脈硬化が進行するので、抗酸化作用のある野菜やAGEの少ない食品やAGEを増やさない調理法を選ぶことも大切です。
■やせている人は体重がそれ以上減らないよう糖質も摂ろう
やせている人の場合は、体重が減らないよう気をつけてください。高齢になってから体重が減るのは、筋肉や骨が減少している心配があります。
キビキビと若々しく動くには筋肉が必要ですし、骨粗しょう症にならならないためには骨を強く維持する必要があります。タンパク質やカルシウムをしっかり摂って、筋肉や骨を強くしましょう。タンパク質を十分に摂ると代謝が促されて、肌もツヤツヤになります。
体重が減ってきたときには、適度に糖質を摂るようにしてください。穀類に含まれるAGEの含有量は大きく変わらないですし、調理法による差もそれほどないので、自分が食べたいものを選ぶといいでしょう。
ただし、甘いパンケーキやワッフル、ドーナツなどは別です。パンを食べるのであれば、食パン、ベーグルなど甘くないものを選びましょう。
■間違った食べ方を減らすだけでも老化予防になる
ごはんやパンの量を減らす、甘いお菓子やスナック菓子を毎日食べているのであれば週に1回に、甘い清涼飲料水は飲まない(水分補給は水・お茶・コーヒーにする)、茶色い食べ物は食べる回数を減らす、揚げ物を週に1回食べているのであれば月1回にする、ソーセージやベーコンを食べる回数を減らす、コゲたものよりも白っぽい食べ物を選ぶ、禁煙する、日焼け対策をする……。
これらを実践するだけでも、体内にたまるAGEの量は劇的に減ります。難しく考えず、自分にできることから始めてみてください。

もちろん、遺伝的な原因は無視できませんが、それではではありません。
日々の習慣が異なるのです。
その習慣の中でも、特に重要なのが「食べ方」。
人は食べ物によって作られているからです。
老けない人は、若さを保つために最適な食べ方をしていますし、老け込んでいる人は、老化を促進してしまう食べ方をしているのです。
老化が進んでいる人は、実年齢よりも10歳以上、老けて見えます。肌の張りもなくシワが多い、髪の毛が少ない・白髪が多い、動きが緩慢になる、さらに白内障になる、耳が遠い、消化が悪い、病気を抱えているなどの状態になります。
一方、老けない人は、シワが少なく肌に張りがある、髪の毛が元気、動きがしっかりしている、目のかすみなども少ない、内臓が元気など、すべてが元気です。
脳の老化が進んでいる人は、もの忘れが激しい、頭の回転が鈍いといったことだけでなく、すぐに怒り大声を出す、列に割り込むなど、人の迷惑に無頓着になり、次第に認知症の症状が顕著になります。
一方、脳が若々しい人は、この逆です。頭の回転が速くハキハキし、感情も制御できています。結果、認知症を恐れる必要がありません。
本書は、食べ物や食べ方によって、体だけでなく、脳の老化も防ぐ方法を解説しています。
キーワードは「糖化(AGE化)」です。
脳も体もエネルギー源となるのは糖質(ブドウ糖)ですから、糖は体に必要不可欠なものです。
しかしながら、糖を摂り過ぎると体も脳も糖化が進みます。糖化はAGEという老化物質によって起こります。AGE化すると、脳も体も老化します。
そして、現代の日本人は糖質を過剰に摂っている状態。言い換えれば糖質中毒です。
糖質が過剰なため、老化物質であるAGEが増えて体の老化が進みます。
脳の老化も同じです。認知症を引き起こすアルツハイマー病は「脳の糖尿病」とも言われています。その原因は糖質過多です。
本書では、糖尿病を専門とし、老化物質AGE研究の第一人者でもあり、ベストセラーを多発している著書が老化を止める方法、若返る方法を解説しています。
その中でも、世間の間違った常識をくつがえす方法が解説されています。
具体的には、主食はイラナイ、糖質はゼロでもいい、アルコールは毎日飲んでもいいなどです。
これらは「生化学」という分子レベルの役割・機能をもとにした事柄や、近年発表されている最新論文をベースに、多くの糖尿病患者の経験と糖尿病を治療している著者の経験に裏打ちされたことだけを解説しています。
脳も体も老化させず、若返る食べ方を学び、80代、90代になったときでさえも元気で若々しく暮らしていきましょう。

ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、『The New England Journal of Medicine』『Science』『The Lancet』等のトップジャーナルにAGEに関する論文を第一著者として発表。
1996年より北海道大学医学部講師。2000年より久留米大学医学部教授。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業し、延べ20万人以上の患者を診ている。
著書は『決定版 糖質オフの教科書』『老けない人はこれを食べている』(ともに新星出版社)、『医者が教える食事術 最強の教科書』『医者が教える食事術2 実践バイブル』(ともにダイヤモンド社)、『糖質中毒』(文藝春秋)などベストセラー多数。







