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2022.05.12

【5月12日は看護の日💉】
看護学の母、ナイチンゲールのヒストリーを見つめてみよう

5月12日は、看護の日

 近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲール。ナイチンゲールの誕生日にちなみ、5月12日が「看護の日」に制定されました(1990年、旧厚生省による)。なお、国際看護師協会(本部:ジュネーブ)では、1965年からこの日を「国際看護師の日」に定めています。

ナイチンゲールは、「クリミアの天使」という異名をもち、看護師として数々の偉業を成し遂げた人物です。その功績は大変大きく、200年後の私たちも知るほどです。そこで今回は、『人物で読み解く世界史365人』より、彼女の半生を紐といていきましょう。

献身と科学精神【看護学の母 ナイチンゲール】

 フローレンス・ナイチンゲール(1820年~1910年)は「近代看護教育の母」「看護師の祖」として有名ですが、彼女の名前を高めたのはクリミア戦争中の彼女の献身的な行為の数々でした。

―「天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である」

 彼女の残したこの言葉は、その献身的姿勢を的確に表しています。

 

ナイチンゲールの生い立ち

 ナイチンゲールはイギリスの裕福な家庭に生まれ、幼いころから幅広い教育を受けて育ちました。フランス語、ギリシャ語、イタリア語などの語学教育だけでなく、哲学、心理学、経済学など、学んだ内容は多岐にわたります。

教育を受けたのちは、慈善事業を通じて貧しい人々と接し、奉仕する仕事につきたいと考えるようになりました。

クリミア戦争への従軍

 19世紀当時、メイドのようなものとして考えられていた看護師を重要な職業として認知させたのは、先述の、ナイチンゲールのクリミア戦争への従軍でした。

負傷兵の死亡率が42%という絶望的な数字であった原因を、ナイチンゲールは戦場の衛生環境の問題であると分析。徹底的な衛生管理を行った結果、感染症を防いで死亡率を5%にまで減少させることに成功しました。

 負傷者の死亡率を下げるカギは衛生管理であり、その衛生管理を行う存在である看護師は、重要な役割を持っていると知らしめたというわけですね。

 ナイチンゲールは、戦争中の病院の実態を調査するために「レーダーチャート」を考案し、死亡原因の実体をひと目でわかるようにしました。こうした功績によって彼女は統計学の先駆者として、イギリス王立統計学会の初の女性メンバーにも選出されています。

現代にのこる彼女の功績

 ナイチンゲールの社会的影響はこれだけではありません。

彼女はロンドンにナイチンゲール看護学校を設立。専門的な看護教育の必要性を説き、看護教育の普及に努めました。

さらに、こんにち人道支援団体として世界中で活動する「国際赤十字社」は、スイスの実業家であるアンリ・デュナンが、ナイチンゲールの献身的な看護精神に感銘を受けて創設したものです。この機関は献身的な看護行為を行った者に対して贈られる賞を「ナイチンゲール賞」として彼女の功績をたたえています。

 ナイチンゲールは近代の看護学の礎を築き、統計学などにも多大な影響を与えた、多才な女性でした。わたしたちが安心して病院で治療を受けられるのも、彼女の活躍があってこそだったのですね。

 

出典『人物で読み解く世界史365人』

 

本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/大森)

写真 Shutterstock.com

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1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。 1985年に同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省に入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、本省国際情報局分析第一課で、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起訴され、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『勉強法 教養講座「情報分析とは何か」』(KADOKAWA)、『危機の正体 コロナ時代を生き抜く技法 』(朝日新聞出版)など、多数の著書がある。

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