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2021.03.04

☕堀口俊英先生のコーヒー講座①
【コーヒーの風味を理解するために重要な10生産国ガイド】

 コーヒーはコロンビア、ブラジル、グァテマラをはじめ、さまざまな国で生産されていますが、土地によってその特徴も違います。そこで今回のFun-Life!講座では、『THE STUDY  OF COFFEE』から、コーヒーのスペシャリスト堀口俊英先生が教える『風味を理解するために重要な10生産国ガイド』をご紹介します。ここでは、個性的な風味のコーヒーで知られているケニア、エチオピア、インドネシア・スマトラ。標高の高い生産地区の豆に特長があるコロンビア、コスタリカ、パナマ。伝統的に日本への輸出量が多いグァテマラ、タンザニア、ブラジル。生産量世界2位で日本への輸出量もブラジルに次いで多いベトナムの10か国をピックアップしています。国による違いをぜひ覚えてくださいね。

☕ケニア

世界のコーヒーの中でも最も酸が強く、果実の風味が豊かなコーヒー

 2000年代初めに、農園産が少量入港し、その果実の風味に衝撃を受けました。2010年代にはファクトリーのコーヒーが流通するようになり、より風味は複雑になりました。スペシャルティコーヒー(Specialty Coffee:欠点豆の混入が少なく、生産地の風味の特長のあるコーヒーのこと。以下SP)は、酸味が強く、レモン、オレンジなどの柑橘系の果実にラズベリー、パッションフルーツ、アンズ、トマト、乾燥プルーンなど様々なニュアンスが加わり、華やかな風味です。世界で最も酸味の強いコーヒーで、深い焙煎でも様々な風味が表現でき、SP市場では極めて重要なコーヒーの一つです。

🌎産地…ニエリ、キリニャガ、キアンブ、ムランガ、エンブなど

☕エチオピア

アラビカ種の起源であり、華やかな果実の風味があふれている

 1995年頃に湿式のイルガチェフェG-2が日本に入港し、その果実感に衝撃を受けました。2000年後半あたりから湿式のG-1が生まれ、2010年代には乾式のG-1が誕生し、イルガチェフェ地区産のコーヒー全盛期となります。

 湿式は、ブルーベリー、レモンティーなどの果実の風味が強く、乾式は完熟した果実や赤ワインなどのニュアンスが感じ取れます。

 現在、イルガチェフェ地区以外のハラーやジンマ地区などでも高品質コーヒーが開発されつつあり、今後新しい風味に巡り合える可能性の高い生産国です。

🌎産地…シダモ、イルガチェフェ、ハラー、ジンマ、カッファ、リム、ウォレガ

☕インドネシア

スマトラ式の乾燥方法が、世界でも類のない個性を生み出している

 ケニア産やエチオピア・イルガチェフェ産が流通する以前は個性的なコーヒーの代名詞でした。昔から日本には根強いマンデリンファンが多くいます。

 スマトラ島北部のリントン地区産の在来種系のニュークロップは、青草、芝、檜や杉などの木、レモンの強い酸、トロピカルの果実などの風味が混在し個性的です。ただし、在来種系の品種の生産量は少なく、大部分はカティモール種系で酸味よりも苦味が際立ちます。在来種の豆は、経時変化とともに森の湿ったにおいやハーブやレザーなどの風味が加わり、独特な個性を醸し出します。

 米国のロースターの一部にもエキゾチックな風味として人気があります。

🌎産地…スマトラ島北部リントン、アチェ

 

 

☕コロンビア

南部県産の標高の高い産地の生豆が流通し始め、風味の豊かさが増した

 1990年代には、すでにティピカ種からカトゥーラ種に植え替えられていましたが、ティピカ種もわずかに残っていました。しかし、フェノール臭(薬品臭)の問題(生産量の増大などに伴う精製不良とカビなどが原因)がありました。2000年代はコロンビア種(ハイブリッドチモールとカトゥーラ種の交配)が増え、さらにさび病もあり品質の低下が見られました。2010年以降は、ゲリラの問題も解消し、南部ナリーニョ県、ウイラ県産のSPが流通し始め、徐々に品質も向上し、小農家の優れた豆が流通するようになっています。

 柑橘のさわやかな酸から濃厚な甘いオレンジの酸まで多様な酸味があります。北部マクダレーナ、セサール県産はライトボディ、中部トリマ県産はミディアムボディで、南部ウイラ、ナリーニョ県産はフルボディのコーヒーが多く見られます。コロンビアといっても産地により風味が異なりますので、産地を確認の上飲んでいけば、次第に風味差を理解できるようになります。

🌎産地…アンデス山脈が縦に長く連なり、土壌は火山灰土壌

 

☕コスタリカ

小農家が自ら精製するマイクロミルを作り、生豆の品質が劇的に向上

 2000年代までは大農園や農協の大量生産方式でした。しかし、2010年代から、マイクロミルの数が増加しています。小ロット生産のハニープロセスが広まり、大きく変化した生産地といえます。ただし、全体の生産量の中でマイクロミル産は少なく、その輸入量も微々たるものですが、年々国際的な評価は高まっています。柑橘の酸をベースにし、よいものは熟した果実の甘味を伴います。豆質は硬く、十分なコクがありますので深い焙煎にも向きます。

🌎産地…タラズ、セントラルバレー、ウエストバレー、トゥリアルバ

☕パナマ

ゲイシャ種、乾式の精製豆でSP市場をリードしているが、流通量はわずか

 2000年までは日本入港はほとんどなく、2004年にベスト・オブ・パナマ(インターネットオークション)でゲイシャ種がデビューし、その果実のような風味で一躍脚光を浴びました。冷めるとジュースのような印象さえ受けました。現在は、多くの農園がゲイシャ種の栽培をしています。また、他の生産国のゲイシャ種栽培にも大きな影響を与えました。2010年代には、いくつかの農園が乾式の精製にトライし、今では発酵臭のない高品質の生豆が流通するようになりました。赤い果実や赤ワインを想起させるような風味があります。もともと生産量は少なく、高品質化の方向に舵を切った生産国といえます。

🌎産地…ボケテ、ボルカン

☕グァテマラ

2000年代のSPをリードした生産国。歴史があり安定した品質のコーヒー

 1996年にスターバックスが日本1号店を出店した際には、グァテマラ・アンティグア産がメニューボードに書かれていました(コロンビアのナリーニョ県も)。

 当時の日本はまだアンティグアなどの地域までは関心のない時代でした。

 ANACAFE(Asociación Nacional del Café/グァテマラ生産者協会)は、2000年代に生産地区の違いについてプロモーションを行い、SP市場を牽引しました。

 アンティグア地区は歴史のある農園も多く、品質が安定しています。アンティグア産のブルボン種は、柑橘果実の酸味とコクのバランスがよく、ブルボン種の風味を代表します。

🌎産地…アンティグア、アカテナンゴ、アティトゥラン、ウエウエテナンゴ他

☕タンザニア

 北部地域の農園の豆に優れた風味のコーヒーが見られる

 昔からキリマンジャロの名で流通し、日本でも古くから知られた産地です。SPは北部産が多く、農園のものが多く見られます。ブルボン系の品種が多く見られますが、品種は混在傾向にあります。個性的な風味は少なく、酸味とコクのバランスのよいコーヒーです。あまり個性の強くない、飲みやすいコーヒーを求めている方にはよいコーヒーだと思います。

🌎産地…北部産、南部産のアラビカ種が約75%、その他はカネフォーラ種

 

☕ブラジル

 酸味の華やかさとは対極にあり、コクがあるコーヒー

 世界最大の生産国で、日本輸入も最も多く、多くの方はこの風味に慣れています。酸味は中米、コロンビアなどの湿式に比べ弱く、コクのあるコーヒーです。

 標高800mと1100mの産地の風味差、乾式とセミウォッシュトの精製の風味差は出ますが、全体としては生産地域や品種による風味の差異は小さいと感じます。湿式のクリーンなコーヒーとは異なり、かすかにアフターテーストに埃っぽさが残りますので、湿式の基準を当てはめないで評価すべきと考えています。

🌎産地…Minas Gerais(南ミナス、セラード)、Espírito Santo 他

 

☕ベトナム

 カネフォーラ種の最大の生産国

 一般家庭用の流通はほとんどありません。ベトナム産のカネフォーラ種はアラビカ種とブレンドして低価格レギュラーコーヒーとしてスーパーなどで販売され、安い業務用のコーヒーとしても使用されています。また、多くは工業製品である缶コーヒー、インスタントコーヒーなどに使用されています。

 こげた麦茶のような風味で、酸味、コクともに弱い印象です。カネフォーラ種はカフェインがアラビカ種の2倍あり、苦味と重い風味に支配されます。冷めると渋味を感じるものもあります。ベトナム以外のカネフォーラ種は、インドネシアの湿式のWIB、乾式のAP-1、アフリカのウガンダロブなどが多く輸入されています。

写真/©Shutterstock

※本記事は下記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

THE STUDY OF COFFEE
堀口俊英 著(プロフィールは下記参照)
本書は、自分にとって最良のコーヒー抽出チャートを作成することを最終目的にしています。そのために生豆の品質がおいしい風味を生み出すことを解説し、大学院で実験をした化学的データによる裏付けも一部紹介しています。
また、抽出したコーヒーの風味をどのように表現すればよいか、また抽出したコーヒーをどのように評価すればよいかについても、理化学的な数値という新しい観点から解説しています。
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堀口俊英(ホリグチトシヒデ)
堀口俊英(ほりぐち としひで)
1948年生まれ。1990年、東京・世田谷区に「珈琲工房ホリグチ」を開業(2004年に株式会社化し、2014年に社名を「株式会社堀口珈琲」に変更)。喫茶・小売り・卸売りの3業態を担う。
2019年3月東京農業大学大学院・環境共生学博士課程卒業。現在、抽出、テースティングのセミナーの開催、コンサルティング、コーヒーの官能評価について研究などを行っている。
(株)堀口珈琲会長。SCAL(日本スペシャルティコーヒー協会)理事。日本コーヒー文化学会常任理事。著作は『コーヒーの教科書』など多数。2020年11月に10年ぶりの執筆となる『THE STUDY OF COFFEE』を刊行。
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