
File No.36 小4男子と読んだら大盛り上がり! 『2つの意味の物語』で知る「二義文」の面白さと我が子の意外な成長【書評】
自分の言葉が相手に間違って伝わってしまった…という経験は誰しも日常的にあると思う。選んだ語彙が適切ではなかったり、言葉が足りなかったりして誤解を招き、困った事態になることも多い。でもよく考えたら、ひとつの文章に2つの異なる意味があるというのは、とても興味深いことではないだろうか。
そんな言葉の面白さに着目し、2つの意味を持つ“二義文”を用いて書き上げられたのが、作家・ささきかつおさんによる「2つの意味の物語」シリーズ。大人はもちろん小学生からも注目され、すでにシリーズが3冊も出ているという。楽しそうなので、わが家の小4男子と一緒に第3弾となる『2つの意味の物語Ⅲ 先輩は彼女を狙っていた』(ささきかつお/新星出版社)を読んでみた。

1作品につき4ページのオムニバス形式で展開する本シリーズ。第3弾には「ニーナとレオ先輩」いう連続ストーリーも入っており、まずはこれに息子がはまった。
とある高校で繰り広げられる物語で、全8話。第1話のあらすじは、こうだ。
〈ストーリーの要約〉
ルックスが良く頭脳明晰なレオ先輩は女子たちの注目の的。けれど、フッと現れてフッと消えるので「ミステリアスな先輩」とウワサされている。今年入学した1年生、ニーナも先輩のことが気になっていた。そんなある朝、彼女の机の中にメッセージカードが入れられていた。「放課後、体育館の裏に来てほしい」というメッセージの下には「レオ」の名前が。そう、「先輩は彼女を狙っていた」のだ。
このようなお話をそのまま読むだけでも楽しいのだが、物語の背景を理解した上で、「先輩は彼女を狙っていた」という1文の後に展開する2つのパラレルストーリーを推測していくと、楽しみがさらに広がった。

ページをめくると、次のようなパラレルストーリーが綴られていた。ここで推測の答え合わせができるわけだ。
先輩はニーナと「つきあいたいと思っていた」
先輩はニーナの「命を狙っていた」
ちなみに、息子が推測したのは「命を狙っていた」のほう。男女の駆け引きがまだよくわからない9歳の彼は、よく知る少年漫画の流れでそのように考えたのかも。もう一方の「つきあいたい」のほうのストーリーも、「そういうのもあるんだ〜」なんて言いながら楽しんでいた。大人の筆者はそっちのほうがスタンダードだと思っていたんだけど…。
「ニーナとレオ先輩」はその後も、学校という舞台はそのままに、恋愛とアクション、2つの世界線で物語が続いていく。2人のキャラクターはイラストを含めて魅力的で、どちらの世界線でもハラハラさせられるのがいい。息子は「次は? 次は?」と夢中になって読み進め、その展開に大満足。最終話では2人の関係がさらに大胆な方向へ!

他にも、日常のお話からミステリーやホラーまで、幅広いジャンルのお話が収録されていて読みごたえがある。1つの文章に2つの意味があるというドキドキ感と、どんなパラレルストーリーが展開するかわからないスリル感がたまらない。

ページをめくれば2つの意味の物語が展開していて、「やった! 正解」となっても、「そうきたか。思いつかなかった!」となっても、回答がしっかりと提示されていてスカッとする。たとえ予想できなかったストーリーでも、説明がわかりやすいので置き去りにされることもない。短い文章でここまで楽しませてくれる二義文の面白さに感服してしまった。
なにより、ここまで引き込まれるのは、作者が描く物語そのものに魅力があるからだと思う。人気が出るのも当然である。

本書は教育関係者からも注目を集めているという。読み進めると、なるほど、これは国語の練習にもなるな、ということがわかってきた。
たとえば「二人の勇者」というお話では、2人の勇者がそれぞれの国を守るために魔物に立ち向かうのだが、各国の王様がこう告げる。「勇者によって守られている国は安心感が違う」と。
「二人の勇者」のパラレルストーリーは、下記の通り。

「勇者に守られていて安心」
「勇者によっては、安心感が違って…」
勇者が2人いるのがミソで、1人目の勇者は見事に魔物を倒し、王様に「勇者に守られていて安心」と言わしめる。ところが、2人目の勇者は魔物に敗れ、王様から「勇者によっては、安心感が違って…」と言われてしまうのだった。
この二義文は文章がひとつなぎになっているのがポイントで、下記のように「、(読点)」を入れてみると、2つの意味の違いが明らかに!
「勇者によって守られている国は、安心感が違う」(勝った勇者)
「勇者によって、守られている国は安心感が違う」(負けた勇者)
このように、なぜ1つの文章に2つの意味が生まれるのかを分析しながら読むのも勉強になる。著者のささきさんは、日本語教師として外国人留学生に会話や小論文を指導しているという。
大人も子どもも楽しめるストーリーで、「小4にこれは早いかな?」と思うような内容でも、息子が2つの異なる展開を見事に言い当てることがあって驚いた。恋愛関係にはまだ疎いとしても、YouTubeで鍛えられている今の子どもたちは、こちらが思っている以上に大人が交わすような日常会話の意味を理解しているのかも? 一緒に読むことで「こんなことまでわかってるんだ」という我が子の言葉の習熟度が伝わってきて面白かった。1話4ページで時間があるときにサクッと読めるのもいい。
そういえば、本書を読み終えたあと、この秋公開される映画の予告を見ていた息子が、「この言葉には2つの意味がありそうだ」と、宣伝文句から読み取れる映画のストーリーを推測していた。文章に込められた意味がひとつじゃないことをすでに理解して楽しんでいる! 子どもってなんて柔軟なんだろう。それに対し、2つの言葉の意味がなかなか思い浮かばなかった頭カチカチの筆者…。本書で二義文を楽しみながら脳トレをしたほうがいいのは大人のほうかもしれない。

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・連続ストーリー収録・
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青春ストーリーと、ビックリなストーリー。二つの世界線もお楽しみください。






