
File No.29 労働時間を貯めて、休日に変える貯蓄制度? 世界の働き方を知って、これからの働き方を考えよう!【書評】
「どうすれば、もっと社員がいきいきと働くことができるだろうか」。そう悩む経営者や人事・労務担当は少なくないだろう。はたまた、それ以外のビジネスパーソンだって、「もっと自分らしく働きたい」と感じつつも、自分が何を求めているのか分からずにいる人は多いに違いない。リモートワークできればそれでいいのか、副業をしたいのか、 ワーク・ライフ・バランスを考えたいのか、それとも何か別の制度があればいいのか。
それを考えるためには、海外の働き方を知り、日本の働き方や今の自分の働き方を見直してみるといいかもしれない。そんな時にオススメしたい本が『労働時間を貯めて、休日に変える!? すごい 世界の働き方』(世界の働き方研究所:監修/新星出版社)。
アメリカやヨーロッパ、中国、インドといった国々の意外な働き方を教えてくれるこの本を読めば、日本の“普通の働き方”は、海外とこんなにも違うのかと驚かされる。たとえば、日本人にとって当たり前の退職金や交通費全額の支給、仕事の異なる他部署への異動辞令、新卒一括採用などは、世界では珍しいらしい。労働環境や労働観、休日の決まり、人気の職業、起業の意識、教育システムとの連携。国が異なれば、働くことの意味や優先することが異なり、制度の形も変わる。「こんな制度があるのか」「この働き方は参考になる」という発見がたくさんあるこの本の中から、各国の労働をめぐる制度について、いくつかご紹介するとしよう。
自由の国・アメリカは働き方も自由だ。日本では労働基準法によって、企業が労働者を働かせることのできる上限が決まっているが、アメリカでは、国の法律・連邦法上、それがない。休暇についても統一された決まりはなく、各企業の裁量に委ねられている。
解雇の決まりもなく、雇用主と従業員のどちらも、理由を示すことなく、いつでも雇用関係を解消できる。退職者がデータ消去などの報復をするのを防ぐため、金曜日の午後に解雇対象者を突然会議室に呼び出して解雇を告げ、「私物はあとで送るので、IDカードを置いて退出してください」とそのまま帰宅させるのが一般的なお作法だというから衝撃的だ。日本ではとても真似できそうにはないが、「報復を防ぐ」という観点は考えたこともなかったという経営者は多いのではないだろうか。
ワーク・ライフ・バランスについて考えるなら、参考になるのは、ヨーロッパだ。ヨーロッパでは、労働を人生の中心にするのではなく、休息や私生活を重視する価値観があり、バカンスと呼ばれる3〜4週間の長期休暇をとる文化が根付いている。逆に休暇をとらない労働者は、業務効率が悪いとみなされる傾向まであるようだ。
年次有給休暇以外に、同一企業で6年以上勤務した労働者を対象に6〜11カ月の休暇が取得できるといった「サバティカル休暇」がある他、ドイツやフランス、オランダ、ベルギーなどでは「労働時間貯蓄口座制度」もある。制度の内容は国や企業によって異なるが、基本的には、残業や休日出勤といった超過労働時間を、「労働時間貯蓄口座」に積み立て、あとで有給休暇として活用するというもの。これにより繁忙期には集中して働き、閑散期には長期休暇を取得するといった柔軟な労働時間配分ができる。「そんな仕組みが私の会社にもほしい!」と思う人は少なくないだろう。
海外に一定数存在するパートタイムの管理職の存在を知れば、「確かにマネジメントは特別なスキルなのだから、必ずしもフルタイムの社員でなくてもいいのかもしれない」と考えさせられたし、実力主義の海外に比べて、年功序列をベースとした日本には「学ばない人」が多いという指摘には、ハッとさせられ、少し反省させられもした。また、この本では欧米以外にも、30歳未満が半数以上というインドや、年間の実労働時間が世界一とも言われる中国の働き方についても触れられている。国それぞれの特徴を知ると、他国の人と協働する時に気をつけるべきポイントも見えてくる。
国によって、人によって、よりよい働き方は異なるはずだ。この本はその違いを紹介することで、私たちに、自らの働き方について考えるヒントを与えてくれる。生産性が高く、同時に、イノベーションを生み出しやすい組織風土はどうすれば育めるか。自分ならどんな制度がほしいか、働き方に悩むあなたの迷いをほどく糸口をくれる1冊だ。

本書では、アメリカやヨーロッパ、中国、インドといった国々の労働環境や労働観、休日の決まり、人気の職業、起業の意識、教育システムとの連携など、“働き方”に関わるポイントを解説します。世界各国の“働き方”を知ることで、生産性が高く、同時に、イノベーションを生み出しやすい組織風土を考えるヒントになるはずです。
Sectuin1 自らで選び、つくる 欧米の働き方
Sectuin2 国内に2つの時代が流れる 中国の働き方
Sectuin3 高いポテンシャルを十分に発揮できない インドの働き方
Sectuin4 多くの面で世界とは“ギャップ”がある 日本の働き方








