連載第4回 「残された側が受け取れるお金は? 」
大切な人が亡くなったとき。失った悲しみでいっぱいの時でも、しなければならないことが次々に押し寄せてきます。
さまざまな届け出や手続きは、故人の喪もあけないうちに済ませなければならないものも多く、スムーズに済ませたいもの。そこで今回は、『改訂3版 大切な家族が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』から、最低限知っておきたい手続きについて、5回に分けて説明していきます。
今回は「健康保険と年金で必要な手続き」をテーマに、いくつかの例を取り上げながら説明します。
健康保険は大きく3つに分けられます。退職した人や自営業の人が加入する「国民健康保険」、会社員の人と公務員が加入する「職域保険、それに75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」です。
このうち職域保険には、大企業の会社員が入る「健保組合」、中小企業の会社員が入る「協会けんぽ」、公務員が入る「共済組合」の3つがあるので、健康保険は全部で5種類あることになります。亡くなられた方が、どの健康保険だったのかを確認してください。
国民健康保険は市区町村が、後期高齢者医療制度は市区町村が加入して都道府県ごとに設けられた「後期高齢者医療広域連合」というところが運営しています。ですので、必要な手続きの窓口は各市町村町役場です。
健保組合と共済組合を運営しているのは各組合です。協会けんぽは「全国健康保険協会」というところが運営していて、都道府県ごとに支部があります。
人が亡くなられた場合の給付(葬祭費など)や高額な医療費(高額療養費など)の支給については、どの健康保険でもほぼ同じ内容です。ただし、葬祭費の額などは市区町村によって異なります。
年金の種類や、受給していたか・いなかったかで、手続きの書類や提出先が変わります。そこで、年金の種類について確認しておきましょう。20歳以上60歳未満のすべての人は、まず「国民年金(基礎年金)」に加入しています。
これに加えて、会社員や公務員が加入しているのが「2階部分」といわれている、「厚生年金」と「共済年金」です(共済年金は平成27年10月から厚生年金に一元化されました)。
「年金をもらう」というと、支給が開始される年齢になって「老齢年金を受給することを指すことが多いですが、障害を負った場合には「障害年金」、そして、亡くなられた時には「遺族年金」の支給もあります。
この時、厚生年金など2階部分のある人は、それぞれの年金にその分も加えて受給できるわけです。厚生年金などに加入している人は「第2号被保険者」と呼びます。国民年金(基礎年金)だけの人は「第1号被保険者」です。
このほか、第2号被保険者の扶養に入っている妻や夫は「第3号被保険者」とされます。第3号被保険者は年金保険料を払っていないように見えますが、配偶者が加入している年金から拠出金として納付されています。
亡くなられた方が受け取れなかった年金は、同居していた家族などが請求できます。年金は、偶数月の15日に、前2か月分が振り込まれるしくみです。亡くなられた月の分まで、受け取ることができます。
銀行は、遺族による相続手続きなど、何らかの理由で口座名義人の死亡を知ると、その口座を凍結します。そのとき発生するのが、受給していた方の年金の未支給です。この未受給分は、亡くなられた方と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。受け取れる人の順位と範囲は、配偶者と子ども、それ以外の別に細かく定められています。よくわからないときは、提出する窓口に問い合わせてみましょう。
今回説明したように、請求すれば貰えるお金を知らないと、請求できる権利があるのに請求できず、損をしてしまう事があります。上手に制度を使って損をしないように今のうちから備えることも大切です。
次回、最終回は、「遺言と遺産分割の手続き」についてです。
出典『改訂3版 大切な人が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/室谷)
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でも、その後の手続きや届け出は自分でしなければなりません。
じつは、これらの手続きには、結構いろいろなものがあり、手間がかかります。
相続の手続きはもちろんのこと、亡くなられた方の確定申告も、代わりにしなければなりません。
また、健康保険や年金の手続きもあります。
亡くなられた方が持ち家をお持ちなら、世帯主の変更手続きが必要なケースもありますし、光熱費の支払先の変更やNHKの受信料の手続きなども必要です。
これらの中には、手続きや届け出をしなければ、損をしてしまうものが少なくありません。反対に、手続きや届け出をすることで、得するケースもあります。
本書はこれらの手続きや届け出の仕方を、記入例とともに、ていねいに解説しています。
また、これらの手続きをするために必要な書類を、役所などから入手しなければなりません。本書では、これらの入手方法にも触れています。
これらは一般に、税理士、司法書士、社会保険労務士など、何名かのプロに相談しなければなりません。
本書は監修者に、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士の資格を持つ方をむかえています。
懇意にしている税理士や司法書などの専門家がいらっしゃるのでしたら、これらの手続きは彼らにお任せできます。
でも、そのような方々が周囲にいらっしゃらないのでしたら、本書はとても役立つ一冊になります。
※本書は2019年刊行の『新版 大切な家族がなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』を最新の法律や手続きに沿って新しくしたものです。
中央大学法学部法律学科卒。平成17年司法書士登録、平成26年行政書士登録。司法書士・行政書士大曽根佑一事務所代表。街の法律家として、相続発生以前の遺言書等による紛争予防アドバイスから、相続発生後の登記手続・相続財産管理業務に至るまで、相続にまつわる多岐の分野に積極的に取り組む。
中央大学法学部法律学科卒。平成19年税理士登録、税理士法人ゼニックス・コンサルティング社員税理士。近年の高齢化に伴い「亡くなる前」の贈与や相続税の事前対策から、「亡くなった後」の遺産分割、二次相続に至るまで、財産の収益化・コンパクト化を重視した、遺族の暮らしの総合コンサルティングを提供している。