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2024.11.19

ワイン史上に残る! 
高額で取引された伝説のボトル3本&希少性が高い人気のワイン6選

 人はなかなか手に入らないものに価値を感じるものです。ワインも例外ではなく、ボトル数が少なく、市場にほとんど出回らないものは価格が高騰しやすくなります。また、思いがけない事件により出荷量が減ったことで、希少価値が出て、かえって人気が高まったケースもあります。

 

 高いぶどうを使ったワインや、機械ではなく手作業で造ったワインは、当然価格が高くなります。こうした原価だけに目がいきがちですが、輸送や宣伝などにかかるコストも、価格を左右する重要な要素です。また、ワインは卸売り価格と市場価格が乖離しやすく、希少価値のあるものは高値で取り引きされます。

 

 そのなかでも、高額で取引された伝説級のボトルと希少性の高いワインにはどのようなものがあるのでしょうか?

 

 初のアジア人ワインスペシャリストとして2009年までオークションハウス「クリスティーズ」のワイン部門に在籍していた渡辺順子さん監修の『サクッとわかるビジネス教養 ワインの経済学』(新星出版社)から、伝説のボトル3本と希少性が高い人気のワイン6選を紹介します。

高級ワインと安ワインの違いとは?

・酒税…日本酒と同じ「醸造酒類」に分類されるワインの税額は750ml当たり75円

・関税…EU、チリ、オーストラリアなどは関税がゼロ。国別に取り決められている

・仲買いのもうけ

・広告費

・移送費…ワイナリーから市場に届くまでに陸路、海路、航路での輸送にかかるコスト

・原価…原料であるぶどうの栽培・購入や醸造にかかる費用。人件費なども含まれる

 

 なお、高級ワインとリーズナブルなワインには、次のような差があります。

 

広告費が異なる

 原料費、醸造費だけでなく、広告費も価格に反映されます。大々的に宣伝を行っているものはその分高くなりがち。プロモーション費用を抑えられるプライベートブランド商品はリーズナブルになります。

 

転売に次ぐ転売で価格が上がる

 1本数百万円で取り引きされる超高額のワインも、実は卸価格はそれほど高くありません。人気の高いワイン、希少なワインはオークションなどで転売されるにつれ価格が跳ね上がっていくのです。

 

熟成にかかるお金が違う

 早飲みワインを除き、通常の赤ワインや白ワインは熟成が必要で、ぶどうの収穫から販売までに時間がかかります。熟成期間が長いワインほど、コストがかかるので価格は高くなり、逆に早飲みワインは安価となります。

 

移送にお金がかかる

 輸入ワインの大半は貨物船で運ばれてきます。距離や船社、シーズンによって輸送費は変動します。中にはボジョレーワインのように航空便で運ばれるものもあり、輸送コストが高くつく分、販売価格も上昇するのです。

一般のワインの価格内訳(比率はワインにより異なる)
希少性が高い人気のワイン6選

(1)白ワインの最高峰 モンラッシェ・ドメーヌ・ルフレーヴ

 ブルゴーニュのドメーヌ・ルフレーヴの特級畑「モンラッシェ」で造られるワイン。畑は0.08ヘクタールと非常に小さく、1年に1樽しか生産できないため、ほとんど市場に出回らないまさに幻の1本。収穫量不足に陥った2016年には、モンラッシェを所有する7つのドメーヌが共同で「L’EXCEPTIONNELLEVENDANGE DES 7 DOMAINES」を造った。史上初の共同生産かつ約600本限定で注目を集めた。

 

(2)21世紀に入ってわずか5回しか造られていない「サロン・ブラン・ド・ブラン」

 単一の村で収穫されたシャルドネだけを使い、出来のよいぶどうがとれた年のみ造るため、最も希少価値の高いシャンパンといわれる。21世紀に入ってからは、わずか5回しか造られていない。

 

(3)年間1300本しか造られない! 「クリスリングランドシラーズ」

 年間1300本という生産量の少なさから「オーストラリアのカルトワイン」と称される。1998年、2001年、02年、04年にパーカーポイント100点を獲得しており、「老舗ドメーヌに匹敵する出来」と評論家からの評価も高い。

 

(4)メーリングリストでの直販のみ。まず出回らない「シュレーダーセラーズ」

 独自の畑を持たずに契約業者から買い付けたぶどうで生産を行うシュレーダーセラーズ。メーリングリストの顧客に直接販売するため、市場に出回ることはほぼない。

 

(5)あのマダム・ルロワが個人所有する畑のぶどうで造る 年間600本しか造られない「マジシャンベルダン・ドメーヌ・ドーヴネ」

 ダム・ルロワが個人所有する畑のぶどうだけで造られる「ドメーヌ・ドーヴネ」の中でも、年間550~600本しか生産されない超レアな1本。ヴィンテージによっては1本50万円以上の高額で取引される。

 

(6)ラベルからぶどうの比率まで毎年造るワインを一新! 同じワインを二度と造らない「シンクアノン」

 自社の畑に加えて、さまざまなぶどうをブレンドして造るため、毎年味わいが変わるのが特徴。ワインの名称やラベルデザインも年ごとに一新する。購入権を得るためのメーリングリストは現在約9年待ちとなっている。

希少性の高いワイン6選
不慮の事故で価値が上がったワイン

(1)6年分のワインの樽が一晩で失われる! 却って人気になった「ソルデラ・カーゼ・バッセ」

 自然栽培・醸造にこだわった高品質のブルネッロで知られるカーゼ・バッセ。2007年から2012年のワイン約8万4千本分が、元従業員によって故意に樽から流出させられるという事件が起こった。大きな痛手となったが、希少性が高まったことでかえって注目を集め、価格も人気も高まるという結果となった。

 

(2)沈没事件により約2割が海底に消えたことで価格が2倍に! 「ドミノ・デ・ピングス」

 パーカーポイント満点を獲得したデビューヴィンテージだったが、スペインからアメリカに向けて輸送中に船が沈没し、約2割にあたる75ケースが海に沈んでしまった。これにより、価格は200ドルから495ドルにまで高騰した。

 

(3)沈没船から引き揚げられたワインが高値で売買される

 1991年に見つかった沈没船マリーテレーゼ号には、ボルドーからサイゴンへと運ばれていたグリューオラローズが積まれていた。100年以上の時を経て引き上げられたグリューオラローズは、オークションで1本約80万円という高額で落札された。

ワイン史上に残る! 高額で取引された伝説のボトル3本

 希少価値のあるワインは、オークションで予想を大きく超えた価格を叩き出します。ここでは、ワイン史上に残る3本を紹介します。

ロマネコンティ1945は、当時約6000万円もの値がついた

【ロマネコンティ1945】

 2018年にNYで行われたオークションに、「存在すら幻」と言われるほど希少な1945年産のロマネコンティが出品され、ワイン史上最高落札額(55万8000ドル=当時約6000万円)を記録。グラス1杯約1000万円という超高額だった。偽物も多く出回るが、生産当時に扱っていた業者由来の品で信頼できるものだった。

 

【ドンペリ1921 ファーストヴィンテージ】

 3歳でタバコ王である父から巨額の遺産を相続したドリス・デュークのコレクションから出品。予想をはるかに上回る高額(8000ドル=当時約84万円)で落札された。醸造から83年が経過していたが、コルクを開けると微量の泡立ちがあった。

 

【スクリーミング・イーグル1992】

 超少量生産で、メーリングリストの顧客のみに販売する入手困難なカルトワイン。ファーストヴィンテージの1992年産の6リットルボトルは、2008年のチャリティーオークションで50万ドル(当時約5500万円)の高額をつけた。

ワインの経済学(サクッとわかる ビジネス教養)
渡辺 順子 監修(プロフィールは下記参照)
ワインは最強のビジネスツールだ!

欧米では必須の教養であり、

ビジネスツールとして度々用いられる「ワイン」

本書では、
古今東西!ワインがもたらす経済効果を多角的に解明。

古代エジプトのツタンカーメン王とワインのかかわりから、
フランス革命にワインが与えた影響、
そして投資商品としてのカルトワインまで、
幅広い視点で解説。

監修は「ワインは最強のビジネスツール」と言う、アジア人初のワインスペシャリスト渡辺順子氏。

豊富なイラストで、見るだけで楽しい、まったく新しいワインにまつわるビジネス書。
・ワインツーリズムが生み出す莫大な経済効果
・コンビニワインが500円で販売できる理由
・伝説の権威付け、パーカーポイント
・キャッチコピーがワインを売る
・格付けという名のビジネスモデル
・ボルドーVSブルゴーニュ 対局にある販売戦略
・ハイブランドがワインの世界を変える
・温暖化がワインのグローバル化を推し進める
・ワインは立派な外交ツール
・偽造ワインの隠し味は醤油
・ボルドーもブルゴーニュもベルサイユ宮殿が大口顧客だった
・腐ったぶどうが極上の甘口ワインになった偶然

本書は、文字中心のテキストを読むのは億劫。もっと手軽にワインとワインにまつわるエピソードを知りたい。それも上辺だけの理解ではなく、きちんとビジネスツールとして会話・説明ができるようになりたい!という、ちょっとズルしたい方にぴったりの楽しくもためになる一冊です。
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渡辺 順子(ワタナベジュンコ)
ワインスペシャリスト。1990年代に渡米。フランスへのワイン留学を経て、2001年大手オークションハウス「クリスティーズ」のワイン部門に入社。同社初のアジア人ワインスペシャリストとして活躍する。09年に退社し、プレミアムワイン株式会社を設立。ワイン普及の活動を続けている。現在はメキシコ在住。著書に、『世界のビジネスエリートが身につける教養としてのワイン』『高いワイン』『日本のロマネ・コンティはなぜ「まずい」のか』『語れるワイン』等
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