712年に編纂された、日本最古の歴史書『古事記』。このなかで、特に活躍する場面が多い神様は6柱いるのですが、前回までのおはなしで紹介した、イザナギ・イザナミ夫妻とイザナギから生まれたとされるアマテラスとスサノオがそのうちの4柱です。
今回は、まだご紹介していない2柱のうちの1柱である、オオクニヌシを紹介します(『日本の神様図鑑』より)。
オオクニヌシは、とても人気のある神様で、「麗しき壮夫(うるわしきおとこ)」と表現されていることから、現代的にいうと、イケメンの神様という感じでしょうか。
今回は、そんなオオクニヌシが行った国づくりの様子をご紹介します。
『古事記』はいきなり時代が飛んでしまうシーンがあります。前回の記事で、神話「天の岩戸」について触れましたが、この物語から「オオクニヌシの国づくり」がその代表格です。
高天原を追放され、生まれ変わったかのような働きを始めたスサノオは、須加(現在の島根県)の地に鎮座します。
その後、スサノオの6代後のオオクニヌシが突如、『古事記』に登場し、兄・八十神(やそがみ)の嫉妬によって殺されかけたり、パートナーであるスクナヒコナが国づくりの途中で去ってしまったりと、数多くの試練に直面します。ときには嘆きながらも周囲のサポートを得て、試練を乗り越えていくオオクニヌシの力強い姿が描かれます。
また、数々の女性と関係を持つ姿や、嫉妬した女神様とのやりとりが赤裸々に描かれてもいて、どこか人間らしさが表現されています。
オオクニヌシは数々の困難を乗り越え、国づくりを成し遂げます。一方で、高天原の主宰神・アマテラスは、「葦原中国」(=オオクニヌシが国づくりをした国)は私の子ども(第一子・オシホミミ)が統治する国である」の意図から、オオクニヌシに使者を遣わし、国ゆずりを迫ります。
最初の使者は3年、次の使者は8年かかりましたが、交渉は不成立。そこで、3度目の使者としてタケミカヅチをオオクニヌシに派遣し、強硬に迫ります。タケミカヅチは、まずはオオクニヌシの子・コトシロヌシを承諾させ、最後まで異を唱えたタケミナカタもついには屈服させ、国ゆずりを成功させます。
本来であれば、ここでオシホミミが葦原中国へ降臨する予定でしたが、交渉であまりにも長い時間が経っていたため、アマテラスの孫、ニニギを高天原から降臨させました。
その後、「国を手放す代わりに、自分を祀る立派な社を創建してほしい」と頼んだオオクニヌシ。それが現在の出雲大社といわれており、オオクニヌシは幽界をつかさどる神様として現在でも活躍されています。
以上が、オオクニヌシの「国づくり」です。ドラマチックな展開は、神様の世界も人間の世界も一緒なのかもしれません。オオクニヌシは、母であるサシクニワカヒメ、スサノオの娘・スセリビメ、一寸法師のモデルになったともいわれるスクナヒコナなど、多くの神様がサポートをしてくれます。
仕事ができるし、とにかく人たらし、それでいてどこか弱さも感じる……。一世を風靡したベンチャー企業の社長みたいなイメージ、というところでしょうか。
オオクニヌシは、数々の困難を乗り越える、人気神。兄にいじめられたり、スサノオに試練を与えられたりと、数々の困難に直面しますが、周囲の協力を得ながら切り開いていく神様です。難しいことに直面したときにお参りするとよいでしょう。
💛関係深い神様
母:サシクニワカヒメ
兄:八十神
妻:スセリビメ
国づくりのパートナー:スクナヒコナ
お祀りした神様:オオモノヌシ
子:コトシロヌシ、タケミナカタ
祖先:スサノオ(6代前)、イザナギ(7代前)
⛩お祀りされている神社
出雲大社(島根県)
大国主神社(和歌山県、大阪府、長野県、秋田県)など
さらに詳細を知りたい方はこちら
※本記事は、下記出典をもとに一部加筆・再編集したものです。(新星出版社/向山)
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