【連載第2回】
食べ過ぎは免疫力を下げる。
「空腹の時間」をつくり、免疫力を上げよう!
医学博士。イシハラクリニック院長。ジョージア共和国科学アカデミー長寿医学会名誉会員。
1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業して血液内科を専攻。同大学院博士課程で「白血球の働きと食事・運動の関係」の論文で医学博士の学位を取得。スイスの自然療法病院、B・ベンナークリニックやモスクワの断食療法病院でガンをはじめとする数々の病気、自然療法を学び、コーカサス地方の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。テレビ、ラジオなどの出演や全国講演でも活躍中。
「食」は人間の健康の根幹を成すものです。しかし、食が確かに人間を健康にするためには、たったひとつだけ条件があります。それは「少食であること」です。現代人にとって「過食・飽食」は、世界の文明国における共通した事象でしょう。
食べ過ぎと免疫力の低下の関係を示す数々の事例を集めた、アメリカのミネソタ大学医学部の教授だったマレイ博士は、世界的に権威のあるイギリスの医学誌『Lanset』に論文を発表し、「食べ過ぎが免疫力を下げる」ことを実証されています。
免疫力が低下する過食・飽食が蔓延している日本において、毎年インフルエンザが流行すること、そして新型コロナウイルスの席巻は、決して不思議なことではないといえます。もしも、「新型コロナウイルス対策に精をつけよう」と、たくさん食べている方がいらしたら、即刻、おやめください。「過食・飽食をやめる」ことこそが、免疫力を上げるのですから。
ちなみに、新型コロナウイルス感染症の現場の医師の話によると、重篤になった患者のうち、高齢者と持病がある方を除くと、残りの人は7割が肥満の方だそうです。過食・飽食をしている方は、免疫力が弱っていることの証左ではないでしょうか。
過食・飽食で体内に栄養素がダブついてしまうと、血管の内壁にはコレステロールが付着し、血液中には糖が増え、内臓には脂肪がたまります。
2016年、大隅良典博士が「オートファジー」の研究功績が認められ、ノーベル生理学・医学賞を受賞なさいました。オートファジーとはギリシャ語の「オート(自分)」と「ファジー(食べる)」を組み合わせたことばで、細胞の「自食作用」を意味しています。つまり、細胞のなかの余計なもの(ウイルス、老廃物、古いタンパク質)を細胞自体が取り除き、さらに集めたゴミを必要なタンパク質につくりかえるという、いわば細胞のリサイクルシステムといえばわかりやすいでしょう。
このオートファジーは、どのような状態で稼働すると思いますか? じつは、過食・飽食によってゴミがたまったときに働き始めるのではなく、空腹の時間に稼働がスタートするシステムになっているのです。人間の体は食事から栄養を摂り入れて活動をしていますが、仮に外からの栄養が断たれたからといってすぐに動けなくなるわけではありません。血液や肝臓に蓄えた糖を消費して、不足したエネルギーを体のなかのもので調達するからです。
オートファジーもそうした危機対応策のひとつなのでしょう。満腹状態では働かず、空腹になったときに俄然活発化するのです。それも空腹の時間が長いほど、オートファジーは活躍します。
このオートファジーの作用によって、ウイルス性の疾患、糖尿病、動脈硬化、ガンなどの予防につながることもわかってきました。
加齢によってオートファジーの効率は低下します。その結果、異常なタンパク質や不要物を取り除くことができず、細胞内でダメージが蓄積し免疫力の低下につながることは容易に想像できるでしょう。
よって、オートファジーが機能しなくなるような過食・飽食を続けるということは、自ら加齢を加速させるということにほかならないのです。絶えずなにかしら食べて常に満腹の人は病気になりやすいといえます。
一日のうちに空腹の時間をしっかり持っていると、白血球も空腹になり外敵をバンバン捕食し免疫力をどんどん上げ、あなたを病気から守ってくれますよ。
★次回は、「食事の摂り方を工夫して免疫力を上げる」を解説します。
※本記事は、下記出典をもとに再編集したものです。(新星出版社/向山)
次回の記事更新は、6月11日の予定です。
1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業して血液内科を専攻。同大学院博士課程で「白血球の働きと食事・運動の関係」の論文で医学博士の学位を取得。スイスの自然療法病院、B・ベンナークリニックやモスクワの断食療法病院でガンをはじめとする数々の病気、自然療法を学び、コーカサス地方の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。テレビ、ラジオなどの出演や全国講演でも活躍中。クリニック院長のほか、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。ベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『食べない健康法』(PHP研究所)、『体を温めると病気は必ず治る』(三笠書房)』を含め著書は300冊以上にのぼり、米国、ロシア、ドイツ、フランス、中国、韓国、台湾、タイなどで100冊以上が翻訳されている。(書籍刊行時)