2022.11.01
🥎小林至先生の【野球の経済学ミニ講座】

③キャンプやファーム球場が地域にもたらす影響とは?

 日本の各地にあるセ・パ12球団のファーム施設は、基本的に1軍本拠地の近郊に置かれるケースが多くなっています。また、各球団の春季キャンプ開催地は宮崎県と沖縄県に集中し、ファーム戦と同様、地元住民を中心に多くの人が見学に集まります。

 人が動くということはお金も動くということですが、キャンプやファーム球場があることによって、地域はどんな恩恵を受けているのでしょうか。

 

 2013年に福岡ソフトバンクホークスが新しいファーム球場の用地を公募した際には、20ほどの自治体が手を上げ、最終的には福岡県筑後市が誘致に成功しています。このとき筑後市は、ホークスに対して球場建設用地を無償で供与、固定資産税を3年間免除する、といった好条件を提示しています。

 誘致によって、筑後市には「地元経済の活性化」「市の知名度アップ」「寮に住む選手の住民税を得ることができる」「寮の選手イコール筑後市の市民だとアピールできる」というメリットがあります。

 

 いっぽう球団側にも「3年間の固定資産税相当の奨励金」「土地の無償供与」という経済的に大きなメリットがありました。また、筑後市がホークスと地域包括連携協定を結ぶことにより、選手による学校訪問や野球教室の開催、市の広報活動への協力をしています。

 

 地元のファンを増やすということでもメリットがあり、ファーム球場を誘致した筑後市側とホークス側はお互いにウィンウィンの関係を構築できたといえるでしょう。いっぽう、各球団のキャンプ地にはどんな経済効果があるのでしょうか。

 

 キャンプがはじまると開催地には、地元住民を中心に多くの人が見学に集まり、県内外から多くのファン・報道陣が詰め寄せ、観客数は最高で約40万人ともいわれています。これは沖縄の例ですが、ファン・報道陣の宿泊料、飲食費、グッズの購入代や、球団による施設の使用料、地元アルバイトの雇用、クリーニング代。またそれぞれの交通費や娯楽・レジャー費も含めると、経済効果は最高約140億円にものぼります。

 

 しかし、2021年にはコロナ禍によって無観客化を余儀なくされ、地元経済は大打撃を被りました。毎年、中心的なキャンプ地となる沖縄県のシンクタンクが調査したところによれば、コロナ禍前後で沖縄キャンプの経済効果は100億円ほど落ち込んだとされています。

 新規ファンの獲得・定着という観点からも、キャンプを通じて選手たちと交流する機会が奪われたことは痛手になっています。

 このように、キャンプやファーム球場が地域にもたらす経済的な影響は、じつに大きなものなのです。

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野球の経済学
小林至 監修(プロフィールは下記参照)
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小林至(コバヤシイタル)
1968年生まれ。神奈川県出身。桜美林大学健康福祉学群教授。博士(スポーツ科学)。
92年、千葉ロッテマリーンズにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌94年から7年間、アメリカに在住。その間、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)を取得。2002年より江戸川大学助教授(06年から教授)。05年から14年まで福岡ソフトバンクホークス取締役を兼任。パ・リーグの共同事業会社「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げや、球界初となる三軍制の創設、FA・外国人選手の獲得に尽力した。学校法人桜美林学園常務理事、一般社団法人大学スポーツ協会理事。
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