ビジネス&マネー&スタディビジネス&マネー&スタディ

2023.08.23
フリーランス・個人経営者など、免税事業者の方必読!

ちゃんと理解・準備できていますか? いよいよ始まる「インボイス制度」【インボイス制度とは?】

 2023年10月から始まる「インボイス制度」。この制度は、経費に関わる消費税の税負担が変わり、個人事業主やフリーランス、小さな会社の経営者の方への大きな影響が想定されます。

 そこで、今回は『改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本』から、インボイス制度とは実際どのような制度なのか、今までの制度とどう変わるのかを解説します。(とくに明記がない限り、2022年9月の情報をもとに解説・紹介しています)

インボイス制度とは?

 2023年10月から、2019年10月に始まった区分記載請求書等保存方式に代わって「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が導入されます。名前は「区分記載」が「適格」に変わるだけですが、最も大きな変更は「適格請求書発行事業者の登録番号」の記載が必須になることです。

 

 インボイス、すなわち適格請求書(領収書)というものは、適格請求書発行事業者しか発行できないものです。 

 売上(正確にいえば土地の売買のような非課税の取引を除いた「課税売上」)が1000万円以上の課税事業者は、税務署に申請書を出して「私は課税事業者です」という証明をもらう必要が生じるのです。その証明が「インボイス(適格請求書)発行事業者の登録番号」です。

 この登録番号をもらうと、インボイスが発行できるようになります。つまり、そこで初めて「私は課税事業者です、消費税をください」といえることになります。

 

 逆にいうと、課税事業者でなく、登録番号をもらえないと、お客様から消費税をもらうこともできない、ということです。

 インボイス制度が始まると、それまで消費税をもらっていたフリーランスや小さな会社、個人経営のラーメン屋さんなどで、消費税をもらえなくなるところが出てくる可能性があります。確実に消費税をもらえるようにするには、売上が1000万円以下であっても、課税事業者になる手続きをすることが必要です。

消費税額をインボイスの分しか差し引けない

 インボイス等の保存が仕入税額控除の要件になります。

 つまり、預かった消費税額から差し引ける、支払った消費税額は、インボイスを保存している分だけになります。

インボイスの記載事項は?

 インボイスの記載事項としては、登録番号のほかにもう1つ、税率ごとの消費税額が加わります。 *国税庁HPより抜粋、ひな型作成

インボイスの記載事項一覧

①インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)

④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

⑤消費税額等(端数処理は1インボイス当たり、税率ごとに1回ずつ)

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

受取人の名がないレシートは将来も有効か?

 インボイス制度では、インボイスとともに「適格簡易請求書」というものが定められています。適格簡易請求書の記載事項は、上記の記載事項一覧でいうと①から⑤です。つまり、⑥の宛名は記載不要ということになります。

 インボイスに変わって適格簡易請求書を発行できるのは、不特定多数に対して販売などを行う小売業、飲食店業、タクシー業などとされています。

交付義務がない場合も定められた

 インボイスには、そもそも交付する義務がない、領収書などの発行を免除される取引も決められています。

 以下のケースが、インボイスがもらえなくてもいいケースです。

インボイスの交付義務免除

①公共交通機関の船舶、バス、鉄道による旅客の運送(3万円未満)

②卸売市場で出荷者が行う生鮮食料品などの譲渡(一定の卸売に限る)

③農協、漁協、森林組合などに委託した農林水産物の譲渡(一定の方式によるものに限る)

④自動販売機で行う譲渡(3万円未満)

⑤郵便切手によるサービス(ポスト投函に限る)

 もちろん、このようなケースでは出勤伝票などによる記録は必要です。

適格請求書のひな型

 インボイス発行事業者でない事業者が発行した請求書に、消費税額が書かれていて、それを保存していても、その分は支払った消費税額として認められないのです。(経過措置あり)

 すると、請求書を受け取った側は、納める消費税が増えてしまうので、きちんと消費税を差し引くことができるインボイスを発行できるインボイス発行事業者が優先されることになるでしょう。

 反対に、インボイス発行事業者でない事業者が、切り捨てられるといった事態が起こるかもしれません。

 

 消費税の免税事業者は、そのままでは登録番号がもらえないので、請求書への記載は不可能です。これまで消費税を納めなくてよかったために得をしていた免税事業者がいなくなるということです。なお、免税事業者でも課税事業者になることで、インボイスの登録を受けることができます。

 次から、その具体的な方法を解説していきます。

出典 『改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本』

※本記事は、上記出典を再編集したものです。

※アイキャッチ画像 /shutterstock.com

改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本
関根俊輔(セキネシュンスケ)著
個人事業主、フリーランサー、一人会社の社長、社員数名の会社の社長、必見!
あなたは、税金を払いすぎています!
本書を読めば、経費にできるモノ、できないモノがわかります!

【経費にできるモノがわかります!】
経費にできるモノの基本は「事業に必要かどうか」ですが、本当に認められるためには、そのことを「証明する」必要があります。
事業に必要なことをきちんと証明することができれば、それはすべて経費になります。
このことを知らずに、経費として処理できないモノが増え、結果、税金を多く払っている人は少なくありません。
本書では、どうすれば事業に必要なことを証明でき、経費として認められるかがわかります。

【インボイス制度にも対応!】
2023年10月からインボイス制度が正式にスタートします。

インボイス制度が始まると、消費税の納税をしなくていい、免税事業者でいることがむずかしくなります。
本書は、このインボイス制度が開始された後での節税方法もわかります。インボイス制度への対応の仕方も解説しています。

【迷いそうな事例が満載!】
本書では、経費にできるのか、できないのか、按分するならどこまでなら許されるか? など、迷いそうな事例を多数挙げています。
たとえば、
 ・SuicaやPASMOなどを使ったときの注意点
 ・自宅を事業で使ったときに突っ込まれない按分
 ・クレジットカードを使ったときの落とし穴
 ・ボツになった企画の経費
 ・海外出張と海外旅行が交じっているとき
 ・キャバクラ、風俗店などに行ったとき
 ・領収書のない経費
 ・インボイス制度への効果的な対応
  などの対応の仕方がわかります。
購入はこちら
関根俊輔(セキネシュンスケ)
税理士。
中央大学法学部法律学科卒。平成19年税理士登録、税理士法人ゼニックス・コンサルティング社員税理士。近年の高齢化に伴い「亡くなる前」の贈与や相続税の事前対策から、「亡くなった後」の遺産分割、二次相続に至るまで、財産の収益化・コンパクト化を重視した、遺族の暮らしの総合コンサルティングを提供している。
新着記事