みなさま、こんにちは。今回のFun-Life!講座では、堀口英俊先生の『THE STUDY OF COFFEE』より、コーヒーの基本の抽出方法を紹介します。
堀口珈琲研究所の基本抽出は、コク(Body)を表現する抽出方法です。ぜひご家庭でも試してみてくださいね。
①粉を平らにし、香りを嗅ぎます。
【Point】粉の香を嗅ぐ習慣をつけると違いが分かるようになります。
②93℃±2℃の熱水を粉の中心に10ml程度注ぎます。
【Point】熱水は少しずつ注いでいきます。
③さらに10ml注ぎ、20~30秒後に1滴が落ちるまでそれを繰り返します。
【Point】初めの1滴(ファーストドリップ:FD)が落ちるまでの数秒は、風味に大きく影響します。濃厚な風味を求める場合はFDまで40秒かけます。
④FD以降は、熱水量を多めにし、粉の中心から外側に(500円玉くらいの範囲)に円を描くように熱水を注ぎ、平らになったらさらに熱水を注ぎます。
【Point】粉に近い位置から熱水を注ぎます。熱水は垂直及び横に浸透します。端に湯をかけるとドリッパーの横から湯が抜けます。
⑤1分30秒で約100ml程度を抽出します。
【Point】はかりとタイマーで抽出量と時間を見ながら抽出します。
⑥熱水を多めに注ぎ、残りの1分で140mlを抽出します。
【Point】抽出が終了したときに、粉は陥没していない状態になります。
基本抽出の応用として、抽出時間を変えて練習してください。風味が大きく異なることがわかります。品質の良いコーヒーであれば、1分30秒から3分の抽出時間であれば、イレギュラーな風味は生じません。
はじめの1分で濃厚な液体を抽出し、1分半で100~120ml抽出します。
※1滴が落ちる前の間にコーヒーの成分が溶解されます。その秒数で大まかな味の輪郭が決まります。2が標準の淹れ方。濃い風味を求める場合は1を、薄目を求める場合は3または4を選択します。
① ドリップは「コーヒーの純良な成分を溶解し、浸出させ、ろ過すること」です。円錐ドリッパーでは、湯を少量ずつ断続的に注ぐことにより、初めに上部の粉の層の成分を溶解し、それが中央部、下部に熱水とともに行き渡ることにより、濃縮された抽出液を得ることができます。
ハリオは、リブ(溝)がらせん状に刻まれ、コーノは短いリブになっていますので、コーノのほうがやや湯の落ちる時間は遅めになります。ただし、この基本抽出方法で、同じ時間で抽出した場合には両者の風味差をブラインドで区別することは意外に難しいと感じました。
② コーヒーの風味の輪郭を形成するのは、主には酸味とコクです。
酸味は焙煎豆に含まれる総酸量(滴定酸度/Titratable Acidity 6~8ml/100g)に負うところが多く、それらは有機酸として微量が抽出できます。総脂質量及びメイラード反応によるショ糖+アミノ酸の影響を多く受けるコク(Body)の抽出は、抽出技法による面が大きいと考えます。
③ 私は、深い焙煎であっても酸味とコクのバランスが取れた風味を最良と考えています。堀口珈琲研究所の抽出方法は、コーヒーの成分を十分、かつ過度にならない程度に抽出する方法です。
④ やや粗挽きの粉25gを準備し、93℃±2℃の熱水(初めに粉にかかるときの温度)で2分30秒かけて240ml抽出します。私は、焙煎度に関係なくこのレシピで抽出し、すべての豆をテースティングします。
ただし、風味を楽しむためには粉の量や抽出時間を修正します。
⑤ 湯の注ぎ方の基本は2つです。
(1)太く注がず、粉に湯が浸透するように細く注ぎます。
(2)ドリッパーの中心に注ぎ、横から抜けてしまう端には注ぎません。
2回にわたり掲載した、堀口先生のコーナー講座。ぜひ参考にして、好みにあうコーヒーを味わってみてくださいね。
※本記事は、下記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
1948年生まれ。1990年、東京・世田谷区に「珈琲工房ホリグチ」を開業(2004年に株式会社化し、2014年に社名を「株式会社堀口珈琲」に変更)。喫茶・小売り・卸売りの3業態を担う。
2019年3月東京農業大学大学院・環境共生学博士課程卒業。現在、抽出、テースティングのセミナーの開催、コンサルティング、コーヒーの官能評価について研究などを行っている。
(株)堀口珈琲会長。SCAL(日本スペシャルティコーヒー協会)理事。日本コーヒー文化学会常任理事。著作は『コーヒーの教科書』など多数。2020年11月に10年ぶりの執筆となる『THE STUDY OF COFFEE』を刊行。