「今日も契約が取れなかった……」。商談では話が盛り上がるのに、なぜか受注につながらない。そんな悩みを抱える営業パーソンは少なくありません。損害保険ジャパンに勤務する松本義史さんも、かつてはその一人でした。入社10年目にして「15連敗」を喫し、全国5,000人の営業マンの中でなんと「最下位」に転落。
しかし、絶望の淵にいた彼を救ったのは、上司が放った驚くべき一言でした。
そこからわずか2年で2万人のトップ(社長賞受賞)へ登り詰めた、精神論ではない「売らない営業」の秘密に迫ります。(本稿は、松本義史著『売らない営業』より一部抜粋し、再編集したものです)
営業成績が5,000人中最下位の15連敗から、上司からのある助言を機にトップセールスに転換した損保ジャパンの営業マン・松本義史氏は、こう言います。
当時、私は15人連続でお客様に断られていました。毎回全力で提案しても、あと一歩のところで断られる……。それでも「次こそは」と気合だけで動いていました。そんなとき、先輩からこう言われたのです。「どうせなら、20人連続で断られることに挑戦してみたら? そのほうが面白い」
その言葉を聞いて、一瞬、「えっ!?」と素直に言葉を受け入れることはできませんでした。ただ、その一言に、なぜか心が軽くなったのです。「断られてもいい」と思えた瞬間、気持ちがふっと楽になったのを覚えています。
そこからです。それまでは売ることに必死で、相手の話を聞く余裕もなかったのですが、それから私は、売ることよりも、聞くことを意識するようになりました。具体的に「どうすれば契約してもらえるか」ではなく、「どうすれば相手の話をしっかり聞けるか」を考えるようになったのです。
すると、商談の空気が変わり始めました。まず自分の焦りが消え、そのため相手の表情がやわらぎ、言葉が届くようになっていったのです。この「売らない営業」にシフトした結果、2年後には全国でトップの成績を上げるまでに変化したのです。また、副業で始めた営業代行では、2年間で1.5億円を超える売上を記録することができました。
これは、私に営業のセンスがあったからではありません。むしろ、売れなかった時期が長かったからこそトップセールスと平凡なセールスの「ちょっとした違い」に気づくことができたのです。ではそのちょっとした違いとは何なのでしょうか?
たとえば、商談前の雑談。多くの人は、天気や時事ネタで場をつなぐことに終始します。一方で、売れている営業は、雑談の短い時間の中で「相手の価値観」をつかんでいます。
「何を大切にしているのか」「どんな判断軸を持っているのか」
雑談の中で、相手の本音をやわらかく引き出しているのです。私はこれを「戦略的雑談」と呼んでいます。雑談はただの会話ではなく、信頼を生むための“隠し扉”です。ほんの小さな話し方や聞き方の違いが、その後の商談を左右します。
もし今、あなたが営業に行き詰まりを感じているなら、それは才能の問題ではありません。仕組みを教わっていないだけです。やり方を少し変えれば、誰でも成果を出せるようになります。ここでお客様の価値基準をつかむために重要な「戦略的雑談」の方法を具体的に紹介しますので、参考にしてみてください。
ある商談で、たまたまお子さんの話題が出ました。私は何気なく「習い事って、どんなことされているんですか?」と質問。するとその社長は、少し笑ってこう答えました。
「うちはね、子どもが“やりたい”って言ったことしかやらせないんです。親が押しつけても続かないし、自分で選んだことじゃないと意味がないと思っています」
私はその瞬間、はっきりと感じました。「この方の価値基準は、自分で選ぶことだ」
それ以降、私は提案のトーンを変えて、「今日はご提案というより、判断材料を持ってきました」「どちらを選ばれるかは、もちろん社長のご判断にお任せします」と、社長ご自身に選んでいただく形にしました。
すると社長は、笑いながら「押し売り感がないって、やっぱ気持ちがラクやね」と言うようになりました。結果的に成約につながったことは言うまでもないでしょう。
このように、価値観をつかんでいればクロージングは説得にならず、納得の確認で済むようになります。
雑談は、ただの和ませる技術ではなく、信頼関係を築くための準備でもありません。「この人はどうやって決断する人か?」を見抜く時間であり、成約の設計図を描く時間なのです。
営業のゴールは、言うまでもなく「成約」です。でも、その成約に向かうまでのプロセスには、たくさんの仕込みがあります。その中でも、最初のステップであり、最も軽視されがちなもの――それは「雑談」です。
多くの営業は、雑談を仲良くなるための手段だと思っています。もちろん、それも間違いではありません。でも、私の中ではもっと明確に位置づけがあります。
雑談とは、相手の価値観(価値基準)を見抜くためのプロセスで、それをもとに「クロージングの設計図」を描く。この逆算思考こそが、私の考える「戦略的雑談」です。
営業で一番怖いのは、「ズレた提案」をすることです。こちらはベストだと思って出した案が、相手にはまったく響かないなんてことはよくあります。その理由は1つ、価値基準を見誤っているからです。
「その人が、何を大切にしているのか」「どういう判断軸で物事を決めるのか」知らずにクロージングをしても、的外れになるのは当然です。
そこで私は、雑談の段階で必ず相手の価値観を拾いにいきます。これは感覚ではなく、設計された会話の中で見つけに行くものです。
雑談の中で見えてくるお客様の価値観は、大きく5つのタイプに分けられます。もちろん人によって混合していることもありますが、会話を丁寧に観察していくと、その人が何を重視しているか、どこかで「核」がにじんでくるものです。雑談で見つけた「価値観」を見誤らずに拾えたなら、クロージングの一言は自然と決まってきます。
【タイプ1 安心・安全重視】
■特徴…過去の失敗談を話す/リスクを気にする/他社の事例を聞きたがる
「失敗したくない」「続けられるか不安」「周りがどうしているか気になる」
■クロージングの一言…「まずは小さく始めていただけます」「ほかの同業の方もこの形でスタートされています」「ご契約前に、じつくり検討いただいて大丈夫です」
【タイプ2 スピード・効率重視】
■特徴…話が端的/早口/結論を聞きたがる
「時間がもったいない」「サクッと決めたい」「今すぐ進めたい」
■クロージングの一言…「今すぐ始められます」「今のタイミングが、一番効率がいいです」「手続きは最短でここまで進められます」
【タイプ3 人・感情・ストーリー重視】
■特徴…家族や社員の話が多い/感情のこもる話に熱が入る/エピソードをよく話す
「誰とやるかが大事」「想いに共感した」「一緒にやるならこの人」
■クロージングの一言…「〇〇さんの想いに共感したからこそ、ぜひ一緒にやらせていただきたいです」
「このプランは、社員さんを大事にされる社長だからこそ意味があると思いました」
「提案というより“ぜひご一緒させていただけたら”という気持ちです」
【タイプ4 結果・数字・合理性重視】
■特徴…数値で物事を考える/比較検討が好き/論理的な話し方をする
「効果は?」「費用対効果は?」「ほかと比べてどう?」
■クロージングの一言…「数字で見ると、これだけの差が出ます」「損益分岐は〇か月でクリアできます」「他社と比較して、年間でこのくらい変わります」
【タイプ5 挑戦・成長・変化重視】
■特徴…新しい話題に食いつく/変化に前向き/未知の領域にワクワクする
「面白そう」「今のままじゃダメ」「新しいことを試したい」
■クロージングの一言…「これ、今まだやっている人少ないです。だからこそ面白い」「社長の“次の一手”として、めちゃくちゃハマると思いました」「これを形にできるのって、今しかないんじゃないかと思っています」
雑談は営業における重要な武器です。しかし、それは「戦略的に行うからこそ」効果があるのです。よくあるのが、相手が話しやすい雰囲気をつくろうとするあまり、雑談が長くなりすぎてしまうケース。気づけば本題に入る時間が足りなくなり、「じゃあまた次回」という形で終わり……。これではせっかくの訪問も、ただのお茶会になってしまいます。
雑談の目的は、「心の距離を縮めること」と「お客様の価値基準を含め、相手の情報を引き出すこと」です。だとすれば、話題の選び方にも、質問の投げ方にも意図が必要です。
また、大切なのは、約束した時間で終わること。たとえ、話が盛り上がっていても、「そろそろお約束のお時間ですので」と締めることで、誠実さが伝わります。時間を守る営業は、信頼も守れる営業。だからこそ、時間の設計と管理は、成果に直結するのです。
お客様は、ご自分の価値観に合わせて決断します。だから私は、お客様に合わせた言葉を選び、提案の角度を変えます。営業は「売り込み」ではなくて、「寄り添い」になるのです。そうして寄り添っていった結果、最後に、「この人、わかってくれてるな」と思ってもらえた瞬間、成約はもう目の前にあるのです。

「トップセールスと平凡なセールスの違い」はどこにあるでしょうか?
話し方のうまさ?
商品知識の豊富さ?
人脈や経験の多さ?
実は、そのどれでもありません。
トップセールスとほかのセールスの差は、「ほんのちょっとした気づき」であり、そのベースは「丁寧さ」です。
彼らは、特別な才能を持っているわけではありません。むしろ、どこにでもいる普通の営業です。
けれど、お客様との会話の中で「小さな違い」を積み重ねている。その積み重ねが、やがて大きな信頼の差を生むのです。
丁寧さをベースに「小さな違い」を積み重ねていけば、
「ノルマ・目標に届かず達成できない……」
「なかなか面談まで辿り着けない……」
「“これはいける”と思った案件がとれない」
「話は盛り上がったのに受注できない……」
といった悩みから解放されます!
本書では、5000人いる損害保険ジャパンの営業で最下位だった著者がトップ営業になった方法を解説しています。
今も現役の営業として売り続けています。
最下位ときは、売ろうとがんばっても売れませんでした。
「“売らない”と決めたら“売れた”」のです。
その自然と売れる営業になるためのノウハウをあまなく詰め込んででいます。
目先の売上だけを求めて奔走するのではなく、お客様に必要とされる「売らない営業」になることにより、売上を上げ続けられる営業に生まれ変わりましょう。
営業歴20年。入社10年目、商談不成立15連敗を喫し、全国約5,000人の営業の中で最下位に沈む。成果を出そうとするほど空回りし、売り込みや根性論に限界を感じていた。転機となったのは、上司の「こうなったら20連敗を目指してみよう」という一言。肩の力が抜け、「売るのをやめてみるか」と“楽転思考”で臨んだ初打席の商談で、いきなり連敗を脱出する。雑談、質問、沈黙、選択肢の提示など、商談を一つひとつ見直した結果、上昇気流に乗り、2年後には2万人を超える同社で上位0.1%が表彰される「社長賞」を受賞。
2022年からは副業でオンラインビジネスに挑戦し、2年間で累計1.5億円を売り上げた。これまでに社外研修は累計3,000回超、1,500名以上を直接指導。精神論ではなく、明日から現場で使える再現性の高い指導に定評がある。受講生から「営業未経験でも初月に100万円を達成できた」「自動車販売台数が月平均1.5台から5台に伸びた」などの声が寄せられる。







