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2026.07.30
【KADOKAWA ダ・ヴィンチWeb レビューコーナー】

File No.34 「成長市場に投資すれば安心」ではない理由。投資先を選ぶときに本当に大切なこととは? 資産形成にも仕事にも効く投資入門書【書評】

 物価高が続くなか、将来への備えとして投資に関心をもつ人は多いだろう。NISAやiDeCoを活用できていないことに焦りを感じたり、始めてはみたものの、よく分からないまま商品を選んでいることに不安を覚えたりする人も少なくないはずだ。

 

 投資について基礎から学びたい。けれど、何から始めればよいのか分からない――そんな人にまず手に取ってほしいのが、『サクッとわかる ビジネス教養 投資の基本』(奥野一成:監修/新星出版社)。シリーズ累計100万部を突破した「サクッとわかる ビジネス教養」シリーズの1冊であるこの本では、日本における長期厳選投資のパイオニアである奥野一成氏のノウハウを、投資の基礎から企業の見極め方まで、分かりやすく解説してくれる。NISAとiDeCoの違いや、全世界株式、S&P500が支持される理由、四季報の見方など、初心者が知りたい情報が充実している。

 全ページフルカラーで、イラストや図解も豊富だから、投資に苦手意識がある人でも無理なく読み進められるだろう。

イーロン・マスクに働いてもらう!? 「オーナー型投資」とは?

 数ある投資商品のなかでも、奥野氏がすすめるのは株式投資。ただし、値上がりしそうな銘柄を当てて、短期売買を繰り返す投資ではない。株式を買うとは、その企業の一部を所有し、経営者や従業員に自分のために働いてもらう「オーナー」になるということだと言う。たとえばテスラの株主になれば、イーロン・マスク氏のような世界的な経営者に、自分の資産を育ててもらうことにもなる。なぜなら、企業が利益を生み、成長すれば、その成果は株式の価値にも反映されるからだ。

 

 物価が上がれば購買力が目減りする現金や、誰かが高く買ってくれることを期待するだけの金や暗号資産とは異なり、株式の価値は企業の事業活動に支えられている。優れた企業は、得た利益を人材や設備、新たな事業へ再投資し、さらに成長していく。そうした企業の株式を長く保有し、企業の成長を自分の資産形成につなげる。それが、本書の説く長期投資なのだ。

成長市場に投資すれば安心… ではない理由

 では、長期投資したい企業をどのように見つければよいのだろう。本書を読み進めると、ハッとさせられることばかりだ。たとえば、投資初心者の私は「AIのような成長市場に属する企業を選べばよいのでは」と安直に考えていたが、そう単純ではない。市場が急拡大すれば参入企業が増え、競争も激しくなる。当然、すべての企業が勝ち残れるわけではないはずだ。

 

 投資先を選ぶときに大切なのは、流行している産業に飛びつくのではなく、継続的に利益を生み出せる企業を選ぶこと。本書で語られる「株価は犬が振るしっぽ」というたとえも分かりやすい。しっぽの動きだけを見ても、犬が健康に育っているかは分からない。同様に、株価の上下だけでは、その企業が投資に値するかは判断できない。見るべきなのは、利益が着実に伸びているか、そして、なぜ利益を生み続けられるのかという事業の本質なのだ。

トヨタ、テスラ、フェラーリ… 投資するならどこ?

 投資先を判断する軸として示されているのが、「顧客にとって『なくてはならない存在』か(高い付加価値)」「他社が簡単にまねできない強みがあるか(参入障壁)」「不可逆的な時代の流れに乗っているか(長期的な潮流)」という3つの視点だ。

 本書では企業にまつわる数字の読み解き方についても解説されているが、数字だけを見るのではなく、なぜその企業は利益を生み出せるのか、その背景まで分析することが重要なのだといい、必要な視点を丁寧に教えてくれる。

 ここで本書から1問、クイズを出したい。トヨタ、テスラ、フェラーリのうち、この3つの視点を兼ね備えているのはどの企業だろうか。

 答えは、フェラーリ。フェラーリが売っているのは単なる移動手段ではなく、所有するステータスや特別な体験だという。供給量を抑えることで希少性とブランド価値を守っている。さらに、主な顧客となる富裕層の拡大という長期的な潮流にも乗っているのだそう。

 こうした具体例について考えるうちに、企業の強さを分析する視点が身についていく。そして気づかされる。企業分析は、資産形成だけでなく、仕事にも生きるのだということに。参入障壁や付加価値を考えることは、「顧客が本当に困っていることは何か」「なぜこの商品が選ばれるのか」「自社にしか提供できない価値は何か」を考えることでもある。株価の向こう側にある「企業の本質」に目を向けることで、投資とビジネスの両方を考える力が育まれていく。

 投資初心者にとって、これほど頼もしい入門書はないだろう。この1冊では資産形成の知識だけでなく、企業やビジネスを見極める力も養うことができる。資産を育て、仕事に生かせる分析力を磨くために、今こそ長期投資と企業分析の基本を学んでみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

投資の基本(サクッとわかる ビジネス教養)
奥野一成 監修(プロフィールは下記参照)
モノの価格が上がるインフレ時代が到来し、お金を持っているだけではその価値は減っていきます。
そうすると、今まで以上にお金を稼ぐ、増やすが必要です。
稼ぐ力に必要なのは自己投資であり、増やすために大きく役立つのは金融商品への投資です。
本書で主に扱うのは金融資産への投資。「何に投資すればいいのか?」と迷っている方に向け「長期投資」をベースとした資産を増やす方法を勧めています。

○長期投資こそ、利回りの極意
投資の神様ウオーレン・バフェットは長期投資で世界のナンバーワン投資家になりました。長期投資こそ、脅威の利回りを実現する術なのです。
本書のノウハウは、日本のバフェットと言われている監修者のノウハウが詰まっています。
長期投資する投資先の企業の選び方も具体的に書かれています。

○大きなフルカラーイラストだから、ひと目で理解
本書は、4ページ(2見開き)単位が基本デザイン。
最初の見開きに入っている、大きな1枚のフルカラーイラストとそのキャプションを見るだけで、その項目の概要がわかり、次の見開きで詳細がわかる作りになっています。
そのため見開きを見るだけで、その項目の内容を理解できます。
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奥野一成(オクノカズシゲ)
投資信託「おおぶね」ファンドマネ-ジャー。農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開。
著書に『ビジネスエリートになるための教養としての投資』『15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ともにダイヤモンド社)、『武器としての投資 AI時代を生き抜く資産とキャリアの築き方』(KADOKAWA)などがある。
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