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2024.09.10

台風の平均寿命は5日!? 発生の仕組みや強さを判断する基準とは? これからを生き抜くための気象の知識

 日本は世界のなかで台風の上陸が多い国。8月から9月は上陸する回数が1年のうちで最も多く、天気予報のチェックが欠かせませんね。そもそも台風はどうやってできるのでしょう? また、台風の平均寿命はどのくらいなのでしょうか。台風の構造やその一生を『こども気象学』(新星出版社刊)から解説します。

台風の寿命は5.2日!?

 熱帯・亜熱帯地方の海上で発生した台風は、発達しながら移動し、もっとも勢力の強い最盛期を迎え、その後、衰弱期に入り、大陸に上陸して弱まったり、北上して温帯低気圧へと姿を変えたりして一生を終えます。

 台風の平均的な寿命は、およそ5.2日ですが、中には20日近く台風であった長寿台風もあります。

画像 気象庁
【発生期】

 熱帯地方の海上では、暖かい海から蒸発する豊富な水蒸気があり、積乱雲をたくさんつくって、そこに集まってくる空気の流れが地球の自転の影響で渦巻き状になります。この渦巻きができると、ますますまわりから空気が集まってきて、水蒸気も多くそして上昇気流もできやすくなります。それがまた渦巻きの流れを強めて、最大風速が秒速17.2mの条件を超えると台風になります。

【発達期】

 暖かい海の上を進んでいくと、豊富な水蒸気をエサとして台風は発達していきます。そのうちに台風の目ができるようになり、目のまわりには壁雲と呼ばれる背の高い積乱雲と強い上昇気流ができるようになります。

【最盛期】

 最盛期は、中心の気圧がもっとも下がり、台風の風速が一番強い時期。勢力の強い台風ほど、目がぱっちりとしています。この時期に、台風の進行速度が遅くなり、進路が西向きから次第に北、北東向きに変わることがあり、これを転向と呼びます。

【衰弱期】

 台風が北に進み、海水の温度が下がったり、陸上に達したりすると水蒸気量が減って、台風は弱くなっていきます。偏西風に乗ってから温帯低気圧に変わることもあり、その場合、温帯低気圧として逆に発達する場合もあるので、安心はできません。

北半球では反時計回りに、南半球では時計回りに渦ができる

「台風」とは、熱帯の暖かい海の上で発生し、最大風速が毎秒17.2m以上に発達した熱帯低気圧のことです。

 

 熱帯地方は1年を通じて日射が強いので海の温度が高く、水がたくさん蒸発します。この水蒸気によりたくさんの積乱雲が発生・発達しますが、積乱雲の中で水蒸気が水に変わるときに大きなエネルギーを出します。そのエネルギーをもとに、地球の自転の影響を受けて大きな渦巻きとして発達するのが台風です。私たちの住む日本がある北半球では反時計回りに、南半球では時計回りに渦ができます。

台風は、最大風速が毎秒17.2m以上に発達した熱帯低気圧のこと

 台風の中心部には丸い雲のすき間があり、それを台風の目と呼びます。台風の目を取り囲む雲の壁の向こうには積乱雲があります。積乱雲の上昇気流により水蒸気が水に変わり大きなエネルギーが生まれます。この付近でもっとも風が強く吹きます。

 対して台風の目には、積乱雲はなく、風が弱く晴れていることも多いです。そのため、台風の目が頭上を通過すると、雨や風がおさまることがありますが、吹き返しがあるため油断は禁物です。

台風の勢力の表し方

 台風の勢力は、大きさと強さで表現します。普通の勢力のときは強さや大きさの表現はありません。それよりも強い勢力、大きな勢力のときにそれを示す言葉をつけます。強さは、台風の中心付近の最大風速と対応させています。中心気圧という言葉も使われますが、中心気圧が低いほど、最大風速も強くなる傾向にあります。大きさについては、強風の吹く半径で階級を決めています。

台風の強さは、台風の中心付近の最大風速と対応させています。中心の気圧が低いほど、最大風速も強くなる傾向に。

【強い】

中心付近の最大風速:33m/s (64ノット)以上~44m/s (85ノット)未満

【非常に強い】

中心付近の最大風速:44m/s (85ノット)以上~54m/s (105ノット)未満

【猛烈な】

中心付近の最大風速:54m/s (105ノット)以上

 台風の大きさについては、強風の吹く半径で階級を決めています。

【大型(大きい)】

風速15m/s以上の半径:500㎞以上~800㎞未満

【超大型(非常に大きい)】

風速15m/s以上の半径:800㎞以上

「大型で強い台風」はよく聞くけど、「小型の台風」とか「弱い台風」ってあるの?

 テレビの台風情報などで、「大型で強い台風」などと言っているのを聞きますね。それは、上記に示したような台風の強さや大きさを組み合わせたもの。単に「強い台風が接近しています」という場合は、強風域の半径が500㎞未満のときで、大きさは示されません。

 逆に、最大風速が33m/s未満の場合は強さには何も触れずに、「大型の台風が接近しています」となるのです。

 実は、昔は小型の台風とか弱い台風といった表現がありました。弱い台風でも、大雨を降らせて大きな災害になることがあるため、弱い、という言葉で油断することがないように、このような用語は使わないことになったのです。これから天気予報などで台風の情報を見る時は、どのくらいの規模のものなのか、大きさや強さを表す言葉にも注目してみましょう。

出典『こども気象学』

本記事は、上記出典を再編集したものです。

 

アイキャッチ画像 Shutterstock

イラスト イケウチリリー

気象画像 気象庁

こども気象学
隈健一 監修
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隈健一(クマケンイチ)
東京大学先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー
気象庁で数値予報開発に携わり台風予報の精度向上に貢献。東京管区気象台長、観測部長を経て2019年3月に気象研究所長にて定年退職。東京大学先端科学技術研究センターにおいて、JSTのCOI-NEXT(共創の場形成支援プログラム)のClimCORE(地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点)の立ち上げに関わり現在このプロジェクトの推進中。
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