普段の生活でなにか物を買う時に必ず払っている税金。私たちのくらしを維持するために必要な税金は、どんなものにどの位かかっているのかご存じですか? 生活や収入、財産に大きく関わる税金。払わなければならないのは当然ですが、何も知らないと損をしてしまうことがあるかもしれません。正しい「税金」の知識を身に着ければ節税だってできてしまうんです。
今回は『図解わかる税金2020-2021年版』より、「年末調整とは何か」、を解説します。
年末になるとよく聞く「年末調整」という言葉。アルバイトや扶養に入っている方は気にされている方も多いのではないでしょうか。何のためにやるの? 必要なことなの? その疑問にお答えします!
そもそも毎月の給料から天引きされた源泉所得税の1年間の合計と、年収に対する税金は、必ずしも一致するとは限りません。そこで、その過不足を何らかの方法で精算する必要が出てきます。それが年末調整です。
簡単に言ってしまえば、会社が1年間の最後の給与を支払う時に行う手続きが“年末調整”です。
★(源泉所得税額の合計額)>(実際の所得税額)=税金が返ってくる
★(源泉所得税額の合計)<(実際の所得税額)=さらに税金を支払う必要がある
ということになります。
1年間の源泉所得税の合計額と、その人の年間の所得税額は一致しないことがほとんどです。それには次のような理由があります。
まず源泉所得税額表は、年間を通して毎月の給与の額に変動がないものとして簡略化されて作られています。しかし、実際には年の途中でも昇給したり月により残業時間が異なるなど、給与の額に変動があります。
また、年老いた両親を引き取るなど扶養親族等の異動があったりして、所得控除が生じたりすることもあります。その際、会社ではその月からの事務処理を行っても、1月までさかのぼっての処理がなされないこともあるのです。さらに、配偶者特別控除や生命保険料、地震保険料の控除などは、もともと年末調整の際に控除することになっているのです。つまり、月々の源泉徴収の段階では処理されていません。
※令和2(2020)年10月より、書面で会社に提出している生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅ローン控除に係る年末調整関係書類について、電子提出が可能となります。
会社に“給与所得者の扶養控除等(異動)申告書”を提出している人で、以下のいずれかに該当する人が、年末調整の対象になります。
① 1年を通じて勤務している人
② 年の途中で就職し、年末まで勤務している人
③ 年の途中で退職した人のうち、次の人
●死亡により退職した人
●著しい心身の障害のために退職した人で、その退職時期から判断して、年末までに再就職ができないと見込まれる人
●いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、1年間に支払いを受ける給与の合計が103万円以下である人(退職後、年末までに他の会社から給与の支払いを受けられると見込まれる人を除く)
●年の途中で、海外の支店に転勤したなどの理由により、非居住者となった人(非居住者とは、日本国内に住所や1年以上居所を有しない人をいう)
以下のいずれかに該当する人は、年末調整の対象になりません。これらの人は確定申告が必要になります。
① 1年間の給与の収入金額が2,000万円を超える人
② 災害により被害を受けて、“災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律”の規定により、1年分の給与に対する源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人
③ 2か所以上から給与の支払いを受けている人で、他の給与の会社に“給与所得者の扶養控除等(異動)申告書”を提出している人や、年末調整を行う時までに“給与所得者の扶養控除等(異動)申告書”を提出していない人
④ 年の途中で退職した人で、年末調整の対象となる人以外の人
⑤ 非居住者
⑥ 継続して同一の雇用主に雇用されない、いわゆる日雇い労働者など
以上の項目に当てはまるかで年末調整の対象になるかならないかが分けられています。自分や自分の家族がどれに当てはまるかを知っているだけで少し気持ちが楽になるかもしれませんね!
サラリーマンが毎月の給与より天引きされた源泉所得税の1年間の合計と、その人の給与総額に対して計算される年税額は一致しないのがふつうです。この両者で源泉所得税の合計の方が多ければ、年末調整で税金が戻ってきます。
◆給与所得の源泉徴収票を原因とする場合
税額表は、年間を通して毎月の給料の額に変動がないものとして簡略化されて作られています。残業が多かった、昇給したなどの理由で、いつも同じ額の給与を受け取っているとは限りません。
◆年の途中で結婚した場合
年の途中で、結婚して配偶者控除が受けられるようになったとしても、会社はわざわざさかのぼってすでに天引きされた源泉所得税額の修正はしてくれません。また、配偶者特別控除はもともと年末調整のときに控除することになっています。
◆一定の障害者の場合
本人、配偶者、扶養親族に障害者がいる場合は、控除額が税額表に織り込まれていないので、年末調整時に精算しなければなりません。
◆年の途中で親を養うことになった場合
年の途中で、親を引き取って扶養すれば、扶養親族等の数に異動があったことになり、年末調整での還付が生じます。また、老人扶養親族の場合の控除額などは、税額表に織り込まれていないので、年末調整時に精算しなければなりません。
◆ボーナスの支給額による場合
ボーナスの支払いのときに天引きする源泉所得税額は前月分の給料を基にしているため、前月分の給料がたまたま多いと税額も多くなります。
また、ボーナスのときの源泉所得税額は、多めに(年に5カ月分の賞与が支払われる場合を目安)していますので、実際の支給が5カ月分に満たないときは、年末調整で還付されます。
◆年末調整で一括控除する場合
配偶者特別控除、生命保険料控除、地震保険料控除などは毎月の給与の支払いからは控除しないで、年末調整のときに一括して控除することになっています。
扶養控除の対象となっていた子どもが就職して、扶養親族の数が少なかったときや、配偶者に年間に48万円(令和2<2020>年より)を超える合計所得金額があって、配偶者控除の適用がなくなった場合などは、年末調整で追徴課税となります。(配偶者特別控除を受けられる場合あり)
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次回は『扶養内で働きたい! パートタイムで働く際の税金』についてです。
出典:『図解わかる 税金 2020-2021年版』
この記事の内容は、原則として令和2(2020)年4月1日現在の法律に準拠し、作成されたものです。
※写真/shutterstock
※本記事は、下記出典を再編集したものです。(新星出版社/室谷)
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