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2020.10.22
【腸を治す食事術 前編】

日常的におなかの調子がすぐれない人はチェックしてみよう。
おなかが弱い原因は、「ある〇〇」にあった!!

著者:江田 証(あかし)
医学博士。江田クリニック院長。
1971年栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科修了。
日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。
米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。
消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。
毎日、全国から来院する患者さんを胃内視鏡・大腸内視鏡で観察し、改善させることを生きがいにしているカリスマ消化器専門医。テレビやラジオ、雑誌などに頻繁に取り上げられ、分かりやすい解説に人気がある。

 酷暑のあとの急激な気温の変化。胃腸への負担が身体に出てきている方も多いことでしょう。あなたのお腹の不調は一時的なものですか? それとも、季節を問わず日常的に下痢、おなかのガスや張り、腹痛などに悩まされていますか? 慢性的におなかの調子がすぐれない方、それはもしかしたら「過敏性腸症候群」かもしれません。

 

 日本人でこの「過敏性腸症候群」に悩む人は、病院に受診していない人を含めると1700万人を超え、なんと日本の中高生の実に18.6%の若者がこの病気に悩んでいるのです。この過敏性腸症候群という病気はこれまで「単なる精神的な病気」と考えられてきました。しかし、ストレスは症状を悪化させることは確かですが、根本の原因ではありません。

 

 最近の欧米での研究で、つらいおなかの症状が「ある糖質」に原因があることがわかってきました。この糖質を食べると、症状が悪化するのです。

 

 もともとこれらの糖質は腸で吸収されづらい糖質のため、腸の中に大量に水分を引き込んで下痢を引き起こします。そして急激に過剰な発酵を起こして、ガスやおなかの張り・鳴り、腹痛の原因になります。

 

 「食物繊維をたくさん食べて、納豆などの発酵食品やりんご、ヨーグルトを食べましょう」、という「腸活」は、本当はおなかの不調な人には逆効果なことがわかってきました。おなかの調子を崩す糖質の種類は個人個人違います。あの人に良かった健康法が、あなたに合うとは限らないのです。

それ、腸が発信する不調のサインかも!? 腸からのSOSに耳を傾ける

 なによりもまず、腸が発信する不調のサインを見逃さないようにしてください。下痢や便秘などが不調のサインで、腸内細菌のバランスの乱れや感染症にかかったあとの腸の動きの低下、小腸での細菌の増えすぎなどが原因で引き起こされているのです。ほかにもおなかの張りやゴロゴロと鳴る、げっぷや胸焼け、肌ツヤの低下なども、体に不調が生じていることを教えてくれる腸からのSOSサインです。

過敏性腸症候群かも? チェックしてみましょう

【大前提】おなかの痛みや張り、不快感、おならが増えたなどの症状が、過去3か月間で、月に3日以上繰り返し起こった

 

□おなかが痛いときや不快なとき、排便すると不快な症状が和らぐ

□おなかが痛いときや不快なとき、便秘や下痢の回数が増減する

□おなかが痛いときや不快なとき、便が硬くなったり水のようになったりと変化する

□水っぽい便が出る

□うさぎのフンのような硬くてコロコロした便がでる

□下痢と便秘を繰り返す

□おなかがいつも張ったような感じがする

□おならがたくさん出る

□排便しても残便感がある

 

大前提に加え、それ以外に2つ以上当てはまったら、過敏性腸症候群の疑いあり!

腸を整える食事とは? 腸内環境を整えるための食生活をおさらいしよう

 腸内環境に大きな影響を与えるのが、食生活です。食べたものは、胃で胃液によってドロドロに溶かされ、小腸でほとんどの栄養素が吸収されたあと、大腸でわずかに残った食物の残りカスから、水分と少量のビタミンが吸収され、体外に排出する便がつくられます。

 バランスのとれた食事は善玉菌の大好物。野菜や果物が腸に入ってくると酢酸や酪酸、ビタミンB群といった体にいい物質をつくり出します。

 

 反対に、悪玉菌の大好物は高脂質や高カロリーの偏った食事。これらを食べると悪玉菌は、アンモニアやアミン、発がん性物質につながる二次胆汁酸などの有害な物質をつくり出してしまいます。

 

 理想の腸内フローラとは、善玉菌、悪玉菌のバランスがよく、しかも腸内細菌の種類が多様であること。腸内細菌の種類が多いほど腸粘膜のバリア機能が高まり、免疫力も高まります。

 

 そのためには、一日にとる食品の種類を増やすことです。善玉菌が育ちやすく、腸にいい影響を与える食品を、数多く取るようにしましょう。

 

 

◆腸の味方になるのは次の4つです。

 

①発酵食品

ヨーグルトや味噌、納豆などが代表食品で、悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を刺激して腸のぜん動運動を活性化します。

 

②水溶性食物繊維

海藻やごぼうに多く含まれ、善玉菌のエサとなり、腸内フローラを整える作用があります。

 

③オリゴ糖

バナナ、玉ねぎ、はちみつなどに含まれ、乳酸菌のエサとなって善玉菌を増やす効果があります。ヨーグルトに多いビフィズス菌などの善玉と一緒にとると、相乗効果で善玉菌を増やすことができます。

 

④EPA・DHA

青魚に多く含まれているオメガ3脂肪酸で、抗酸化作用で腸の炎症を抑え、善玉菌が増えやすい環境を整えてくれます。

アマニ油に含まれるα-リノレン酸は、体内でEPA・DHAに変わって同じ働きをします。

 以上の4つは、とくに腸にいい影響を与えてくれると前述しました。これらを積極的にとると、確かにおなかの調子がよくなります。ところが、これらの食品は腸に問題のない人」限定で効果があるのです。

 

 整腸食でおなかの調子がよくなるどころか、おなかが張る、ガスが出るようになった、便秘や下痢になったというなら、その食品が合わなかったということです。もし「発酵食品を食べたら便秘が解消した」場合、それは「効果」ではなく、下痢気味になったという「副作用」と言えるかもしれません。「効果」と感じられるか、「副作用」として感じられるかは、症状の程度によって“紙一重”なのです。

 一般的な整腸食が合わない原因のひとつとして考えられるのが、過敏性腸症候群と呼ばれる腸の病気。そしてもうひとつの原因として考えられるのが、小腸内細菌増殖症(SIBOシーボ)です。SIBOの症状は、過敏性腸症候群とほぼ同じ。近年になって、カプセル内視鏡や小腸内視鏡が開発され、小腸の病気が正しく認識できるようになってわかってきた病気です。

 過敏性腸症候群やSIBOの人に限らず、普段から腸が健康ではないと感じているひとのおなかの不調を引き起こしている原因である、「吸収されにくい糖質」。この正体は何なのか、そしてどのような食事をとればよいのか? 次回、さらに詳しく解説していきます。

 

→後編へつづく(2020/10/29 配信予定)

 

※本記事は、下記出典をもとに再編集したものです。(新星出版社/室谷・向山)

腸を治す食事術
江田証 著(プロフィールは下記参照)
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医学博士。江田クリニック院長。
1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科修了。
日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。
毎日、全国から来院する患者さんを胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしているカリスマ消化器専門医。テレビやラジオ、雑誌などに頻繁に取り上げられ、わかりやすい解説に人気がある。著書に『医者が患者に教えない病気の真実(幻冬舎)』『パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません(さくら舎)』『なんだかよくわからない「お腹の不調」はこの食事で治せる!(PHP研究所)』『小腸を強くすれば病気にならない(インプレス)』『新しい腸の教科書(池田書店)』『腸のトリセツ(学研プラス)』などがある。(書籍刊行当時)
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