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2022.08.30

【知っておきたいビジネスの知識】
①取引先が倒産⁉ 「破綻」「倒産」「破産」これらの違い、あなたはわかりますか?

 テレビやインターネットで日々報道されている「〇〇社は経営破綻に追い込まれました」「〇〇社は今年最大の倒産となりました「〇〇社は破産手続の開始が決定しました」といったニュース。実はそれぞれ報道しようとしている内容が異なります。今回は、『図解わかる倒産のすべて』から、それぞれの言葉の違いを解説します。

破綻とは?

 「破綻」とは物事がうまくいかなくなることを意味しており、企業の経営が行き詰まった状態を経営破綻と呼ぶので、これは法的な定義があるわけではありません。「企業」とは営利を目的として生産や販売などの経済活動を継続して行う組織を指し、会社法という法律に基づいて設立された企業を「会社」と呼びます。

倒産とは?

 次に 「倒産」とは 、一般的に企業が経済活動を継続できなくなった状態を指し 、これも法令用語ではなく、一般的には経営破綻と同じ意味で使われます。

 法令用語ではない「倒産」という言葉が社会に普及したのは、東京商エリサーチが1952年に「全国倒産動向」の集計を開始したためだといわれています。

破産とは?

「破産」は 、支払不能に陥った( 破綻した)または陥りそうな法人や個人が 、負債と資産を清算する法的な手続きです。

(図をタップすると拡大します)「廃業」経営者が自身の判断で会社や事業を終わらせること(やむを得なく判断した場合も含む)。「解散」会社を消滅させる手続きの第一段階(破産手続開始の決定があると強制的に解散となる)。「倒産」業績不振で事業を続けられなくなった状態。
倒産状態になった時の手続き

 会社が倒産状態になってとられる手続きには、清算型と再建型があります。

 

 清算型とは、会社を消滅させることを前提として進められる手続きで、もっとも代表的な手続きである破産以外に、解散手続を行って清算を進めている株式会社だけが利用できる特別清算と、会社の形態などは問わない私的整理があります。清算とは、現預金と車や機械などを売却して得た現金をすべて併せた資産から、取引先や銀行などに返済を済ませることです。

 

  一方の再建型は 、会社を継続しながら債務を弁済する手続きで、会社の形態を問わず個人でも利用可能な民事再生と、株式会社だけに限定されて実際には大企業しか適用されない会社更生、会社の形態などは問わず企業が存続可能な私的整理があります。

 

 どちらのタイプでも私的整理は裁判所が関与しないために、債権者に対する法的拘束力がないことが特徴です。

 一方、裁判所が関与する手続きは法的整理と呼ばれており、支払いは裁判所の決定に従うか、裁判所の監督下で行われます。

 

📝倒産する企業のタイプ【老舗限界型、業界構造・市況変化型】

 倒産する企業には、さまざまなタイプがあります。ここでは、老舗限界型、業界構造・市況変化型の2つの事例を取り上げます。

 

 老舗企業が生き残っていくためには、伝統を磨いて守り抜くだけでなく、時代の流れに応じて経営戦略を変えていかなければいけません。それができないと、かえって歴史や伝統が経営を追い込むこことになってしまいます。

 184年の歴史を誇りながら2018年5月に自己破産を申し立てた「 花園万頭 」は「 日本一高い日本一うまい 」という高級路線を貫いたことが裏目に出て若者層の支持が得られず、コンビニスイーツに対抗できる新商品の開発もできなかったことが倒産の原因でした。

 95年の歴史を持ち 、業界随一の知名度もあったスポーツ用品卸業「 ヤバネスポーツ 」は、少子化や大型販売店の台頭で1990年代後半から売り上げが減少、経営改善策を講じるも2017年7月期の年売上高は、ピーク時の4分の1となる32億円弱まで落ち込みます。この財務状況への対処として、主力仕入れ先が取引額の縮小や支払いサイクルの短縮を要請、新規融資も断られて破綻し、2018年7月に民事再生を申し立てました。全事業譲渡によってブランドは残っています。

 ベルトを製造する下町の工場からカタログギフト用の服飾雑貨卸に進出して成長した「吉田 」は、2018年1月に2回目の不渡りを出して自己破産を申請しました。結婚式や葬儀で返礼品として利用されるようになったカタログギフトにいち早く注目して業績を伸ばしましたが、冠婚葬祭、中元、歳暮が減少、また、モノから宿泊券や食事券といった体験型へと変化したギフト市場に対応できなかったことが敗因でした。

 

👉次回は、【知っておきたいビジネスの知識】② 倒産状態にある会社がとる手続きの特徴とは? を解説します。

出典『図解わかる 倒産のすべて』

本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

 

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倒産のすべて
増田智彦 監修(プロフィールは下記参照)
本書を読むと……

 ・倒産、会社更生、民事再生、破産、清算、解散、廃業の違いがわかります!
 ・あの有名企業がなぜ倒産したか、その理由がわかります!
 ・取引先の倒産の前兆がわかり、その対処法がわかります!


コロナ渦により急増する倒産。
アパレル大手のレナウンの民事再生→破産をはじめ、格安航空会社エアアジア・ジャパンの倒産など、大手の倒産がニュースになっています。
コロナ渦による、中小零細企業の倒産は、数え切れないほどの数に上っており、今後もさらに増え続けることは間違いないでしょう。

そのため、これまではニュースで知るだけであり、まったくの他人事であった倒産が、身近なものに。
いつ、取引先が倒産になってもおかしくない世の中です。

お客さんが倒産して、どのように回収するのかは、これまで以上に頻繁に起こります。

しかし、倒産のことはよくわかりません。
倒産、会社更生法、民事再生法、破産など、倒産にもさまざまな種類がありますが、
これらの違いを知っている人は皆無です。

本書は、倒産、破産、会社更生、民事再生、特別清算、廃業などの違いが大まかにわかる本。
これらの法律的な違い、しくみ、手続きなどが図解でわかります。

また、百貨店のそごう、アイフルといった有名企業が、なぜ倒産したか、その理由がわかります。

さらに、倒産の前兆がわかり、その対処法も解説しています。

本書は、「ある日、取引先の○○社が倒産した!(倒産しそうだ!)」にスムーズに対応するために、全体的な知識を得られる一冊です。
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増田智彦(マスダトモヒコ)
弁護士。東京丸の内法律事務所パートナー。
慶應義塾大学法学部卒。一橋大学法科大学院了。
麒麟麦酒株式会社法務部での勤務を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。
事業再生実務家協会会員、第二東京弁護士会倒産法研究会会員。
私的整理手続(事業再生ADR、中小企業再生支援協議会、特定調停、地域経済活性化支援機構(REVIC)等)
から法的手続(会社更生、民事再生、特別清算、破産)まで、これまで多数の案件を、債務者代理人、
債権者代理人、第三者専門家又は裁判所から選任された破産管財人等の公的立場として取り扱ってきた。
企業法務に精通しているほか、事業再生・倒産の分野で特に強みをもつ弁護士。
共著書に『破産手続書式集 新版』(慈学社)などがある。
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